2019年の手羽が気になった美術系大学の出来事ベスト3発表!!

2019年12月29日(日)

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2019年、令和元年の手羽が気になった美術系大学の出来事ベスト3をお送りします。

まず、今年1年間の美大ニュースまとめを一覧にしてみました。
【五美大展DMで思うこと】美大ニュースまとめ20190122
【手羽も参画】美大ニュースまとめ20190210 【したい】
【美大生の就活】美大ニュースまとめ20190306
【産官学連携ネタが多め】美大ニュースまとめ20190327
【代アニがYouTuber科新設等】美大ニュースまとめ20190413
【GW中に授業があるのは】美大ニュースまとめ20190429
【平成のアートシーンを振り返る。そして令和は】美大ニュースまとめ20190520
【ものづくり系アイドル】美大ニュースまとめ20190612
【クリエイティブキャンパス計画】美大ニュースまとめ20190701
【虫と錯視と家紋】美大ニュースまとめ20190722
【片桐仁といえばラーメンズです】美大ニュースまとめ20190816
【京都精華さんは2021年に学部再編】美大ニュースまとめ20190903
【だれかで終わるな。】美大ニュースまとめ20190919
【東京藝大教員有志が文化庁に抗議声明】美大ニュースまとめ20191008
【勝井先生お別れ会の日時発表】美大ニュースまとめ20191028
【パワーワード「おかしでつくる枯山水」】美大ニュースまとめ20191112
【グラフィックデザイナーの平均年収】美大ニュースまとめ20191129
【キラキラした人々】タマビニュースまとめ20191221
【美大の恋するおしり】美大ニュースまとめ20191222

「2週間に一度お送りしてる美大ネタまとめ」と言いつつ、1年で(タマビまとめを入れて)19本。
前期は1か月一回ペースだったのが大きいです。シリーズものが続くとタイミングを逃してしまうんですよね・・。

ベスト3に入る前に「ああ。そんなこともあったねー」な話題を振り返ると、まず五美大展DMかな。

まさに「そんなこともあったね」でしょ?(笑)
1月中旬ぐらいにSNSで話題になりましたね。

東京五美術大学のファインアートが集結して42年もやってる展覧会なのにここまで話題になることは今までありませんでした。よくも悪くも。
ちなみに今年の日程は2020年2月20日(木)〜3月1日(日)で場所は同じ国立新美術館です。
持ち回り幹事校は女子美術大学の番だから、ある意味一番プレッシャーを感じてるのか女子美さんかもしれません。

他だと、羨ましさも込めて個人的にはこちら。
「恩返し」と10億円を芸大移転に寄付 京都市、企業名明かさず | 京都新聞
金額的には
ぐるなび会長、50億円の個人寄付 東工大など3校に | 科学技術・大学 ニュース | 日刊工業新聞 電子版
こういうこともありますが、匿名で10億ってほんとすごい。ぜひムサビにも・・・(ぼそっ)


というわけで、お待たせしました、手羽的ランキングに入ります。

第3位:学校法人多摩美術大学理事長の交代
一般の方には「それがどうした」かもしれませんが、手羽にはとっても大きな話で。
美大関係者に「美大の理事長で有名な方を二人挙げろ」と聞いたら、間違いなくほとんどの方は学校法人瓜生山学園の前理事長・故 徳山詳直さんと、学校法人多摩美術大学の藤谷宣人理事長の名前を出すと思います。大学ランキング2019で見ても、藤谷理事長の年齢88歳は全国全大学中7位、在任期間28年は22位。
現在のタマビの大発展は藤谷理事長のリーダーシップがあってこそ成し遂げたと言っても過言ではありません。藤谷理事長は事務職員から理事長になった方であり、学校法人京都精華大学の石田涼理事長と共に手羽の目標の人でもありました。
本当にお疲れ様でした!


第2位:これからの美大のきざし
どう書けばいいのかわかんなくて、抽象的な言葉になっちゃった(笑)

新学部・新学科設立の動きだと「建築系が一気に増える」というのがあります。

手羽が把握してる限りで、この数年のうちに
■明星大学|「建築学部」
■東北工業大学|「建築学部」
■武庫川女子大学|「建築学部」
■岡山県立大学|「建築学部」
■東京都市大学|「建築都市デザイン学部」
■明星大学|「建築学部」
■昭和女子大学|「環境デザイン学部」
■京都橘大学|「建築デザイン学科」
■千葉大学工学部|墨田区新キャンパス設置、「デザイン・建築スクール」開設
■長野県飯田市|ランドスケープデザイン大学院大学設置構想始動

美大・総合大学関係なく、これだけ新設・改組・名称変更されるんです。
一方で、これからの美大の方向を示す「きざし」が一気に噴出したのが2019年だと手羽は感じてます。

恐らく美大で「これからの美大の在り方」を検討すると、二つのアイデアが出てくるはずで、一つは「デザイン×AI(テクノロジー)」。代表的なのが大阪芸術大学 アートサイエンス学科で、公開されてる情報を見る限り2021年にできる京都精華大のメディア表現学部もこちらに近い印象。

もう一つが「思考×ビジネス(社会)」。例だとやはり

ムサビのクリエイティブイノベーション学科、大学院クリエイティブリーダーシップコース
「クリエイティブ思考×ビジネス(社会)」を「コース」ではなく「新学部」としてムサビがいち早く立ち上げたことは美大業界でそこそこインパクトがあったんじゃないかと勝手に思ってます。
あ、「ムサビが最初に考えた」ではなく、「どの美大もうっすら考えていたけど、『きざし』が重なってきたところにムサビが一気に動いた」という表現が正しいですね。

まず、
来春、九州大学芸術工学部が生まれ変わります(認可申請中)!

2020年に生まれる未来構想デザインコースは「アート・ デザイン」「社会構想」「生命・情報科学」を組み合わせた学び。

日本初、ネットだけで学べる修士課程(MFA)を開設-2020年4月、京都造形芸術大学大学院に「学際デザイン研究領域」誕生

創造的な思考と構想力、そして行動法則(教養・判断・コミュニケーション・意思決定力)を身につけ、企業内や家庭、地域のさまざまな課題を解決し、新しい価値を創造していけるように実践的に研究する。
京都造形の情報デザイン学科 クロステックデザインコースはちょうど中間ぐらいのポジションかな。

「ビジネスに、デザインの持つ創造性と美意識を」がテーマ。
詳しくは手羽が潜入した記者会見レポートをご覧ください。
【ムサタマバトル勃発?】タマビ「クリエイティブリーダーシッププログラム(TCL)」開講発表記者会見に行ってきた


美大ではないけど、2020年に開設する「情報経営イノベーション専門職大学」もきざしの一つだと感じていて、工事現場に潜入したくらいです(笑)
【i専門職大学改め】情報経営イノベーション専門職大学現地見学会に行ってきた【建設現場に潜入】

芸術系大学で一番学生の多い京都造形芸術大学、美術系大学で一番学生の多い武蔵野美術大学、そして多くの超著名デザイナーを輩出してる多摩美術大学が、偶然ほぼ同じタイミングで「美大で習得する本質的な思考力を、働きながら学べるカリキュラム」を打ち出したのが2019年なんです。
「これからの美大のきざし」とはそういう意味で、これで他美大も動くのか、単なるブームで終わってしまうのか。


そして第1位はやっぱりこれしかありません。

第1位:京都芸術大学問題

京都造形芸術大学が2019年8月27日に
京都造形芸術大学|開学30周年「グランドデザイン2030」と「京都芸術大学」への名称変更(2020年4月1日〜)について
を出し、校名を2020年4月から「京都芸術大学」に変更すると発表したのがことの発端。
詳しくはこちらをご覧ください。
美大愛好家的「京都芸術大学問題」まとめ
この記事を書いた8月29日段階では「署名運動が起きた」で終わってます。

記事以降、起きたことを書くと、京都市立芸術大学は
【令和元年8月30日付】京都造形芸術大学の名称変更についての理事長コメント
【令和元年9月2日付】京都造形芸術大学の名称変更についての理事長コメント
とコメントを出し、9月2日に学校法人瓜生山学園に対して「京都芸術大学」の名称の使用を差止める訴状を大阪地方裁判所に提出。
訴訟の提起について
とうとう裁判になってしまい、2019年10月8日に第1回口頭弁論が行われています。
京都造形芸術大学の名称変更に係る第1回口頭弁論期日を終えての理事長コメント

芸術系大学同士の裁判は、恐らく帝国美術学校(現ムサビ)と多摩帝国美術学校(現タマビ)の同盟休校事件以来。といっても、この時は大学ではないし、いわゆる内輪揉めに近い。源流が違う芸術大学同士の裁判は歴史上初めてじゃないかと(ほかにあったら教えてください)。


一方、京都造形芸術大学は、
【2019年8月30日】開学30周年「グランドデザイン2030」についての学長コメント
【2019年9月2日】京都市立芸術大学からの申し入れ事項に対する回答
【2019年9月2日】京都市立芸術大学の訴状の提出に対する本学のコメントについて
とコメントを出し、学生さんとの対話会(検討会)を数回行っています。
2019年9月8日京都造形芸術大学「グランドデザイン2030についての対話および検討会」議事録:
2019年10月25日京都造形芸術大学「臨時拡大代議員総会(尾池学長との対話会)」議事録
2019年10月29日京都造形芸術大学「臨時拡大代議員総会(尾池学長との対話会)」議事録
議事録を読む限り、学生さんは感情的な部分は下がってきている感じですね。


京都市が若手アーティストを支援するクラウドファンド「京都市若手アーティスト応援プロジェクト」を始めたけど、

最初に選ばれたアーティストが偶然二人とも京都市立芸術大学出身。もちろんたまたまだと思いますが、こういうことが起きるといろいろ勘ぐってしまうわけで・・。

ちなみに「大学名称変更で揉めた」ってことだと、ちょっと違うけど京都精華大学さんもそうです。
京都精華大学50年の記録|1984-1992既成のアカデミズムを超える新たな挑戦
によると、法人分離に向けて1988年頃から大学名称の変更が学内で議論され、1992年に第3次名称検討委員会が「洛北大学」、学生からは「京都創芸大学」、教職員有志からは「京都芸術文科大学」、学長は「京都表現大学」を提案するもどれも支持を得られず先送りになり、1994年に「京都精華大学」の名称継続で結論を出しました。

また「大学名変更」で珍しいパターンだと、1971年に開学した嵯峨美術短期大学は4年制の京都嵯峨芸術大学(厳密には短期大学部)に名称変更し、2017年に嵯峨美術短期大学に再び戻ったケースもあります。


以上、2020年4月に京都造形さんが「京都芸術大学」へ大学名変更ってことは残り実質3ヶ月だから、美大愛好家として2020年の数か月は目が離せない手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。