美大受験生へのアドバイスをお答えする恒例の「#美大受験」シリーズ。
#美大受験 では、ムサビまたは関東美大の一般選抜を具体例で使ってますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
■東京五美大2025入試日程から言えるたった1つのアドバイス
■美大入試で家を出る前に絶対確認したい3つのこと(試験日時編)
■美大入試で家を出る前に絶対確認したい3つのこと(場所・会場編)
■美大入試で家を出る前に絶対確認したいことは3つ(持ち物と携行用具編)
■ムサビ実技試験で絶対に忘れちゃいけないものを1つ断言します
■美大実技試験当日でも確実に点数を上げられるたった1つのアドバイス
■雪や電車遅延で遅刻しそうな場合はどうすればいいのか? #1分でも遅刻するとダメなの? #遅延証明書や事前連絡は必要?
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
東京4美大の2025年度一般選抜志願者数が出そろいました。
■女子美術大学|2025年度 芸術学部一般選抜(A日程・共通テスト利用Ⅰ方式・Ⅱ方式第Ⅰ期)/短期大学部一般選抜(A日程)志願者数
■東京造形大学|2025年度 一般選抜入学試験 志願者数(確定)
■武蔵野美術大学|2025年度 一般入学試験志願状況
■多摩美術大学|2025年度 美術学部一般選抜 志願状況
ただ、大学公表データにはムサビ以外昨年度の数が入ってないんで、誰もが気になる「で、去年と比べてどうなのよ?減ったの?増えたの?」がわからないんです。
なので心優しい手羽が勝手に作ってみました。え?余計なお世話?
手羽が趣味で1時間ぐらいで作ったデータなので、数字が間違ってたら指摘してください>関係者
受験生は正確な数字を上記公式大学サイトで必ず確認してね。
まず、女子美術大学。
次に、東京造形大学。
続いて武蔵野美術大学 造形学部。
そこからの武蔵野美術大学 造形構想学部。
最後に多摩美術大学。
全体的な傾向としては、昨年度より
・どの大学も全体的に増えている。
・ファインアート系はどこも好調。
・建築系、環境デザイン系、芸術学系がどこも人数を減らしている。
てなところでしょうか。
で、この志願者数一覧から言えることは
これだけじゃ何にもわからない
です。
あ、ちゃんと最後まで聞いて(涙)
理由は4つあって、1つ目は「志願者比較は数年分の推移を見ないとわからない」。
昨年度がすんごい減ったから今年がすごく増えたように見える、またはその逆の「より戻し」が発生しただけ・・ってことがよくあります。
例えば、東京造形大の彫刻は昨年度比195%!女子美の立体アートは176%!、タマビの彫刻は139%と爆上がりしてるのに、ムサビ彫刻は107%だから「ムサビの彫刻だけ人気ないんじゃね?」と思ってしまうかもしれませんが、実はムサビ彫刻は昨年ほぼ倍増してるんです。
「さすがに今年は増えないだろう」と予想してたので、むしろ少し増えててびっくりしてるくらい。
「より戻し」の典型例がムサビの映像学科。
今年の映像学科は119%増で、「お、調子いいんじゃね?」とこの数字だけ見ると思ってしまうんですが、過去6年の(一番オーソドックスな)一般方式志願者数を調べてみると、
綺麗に「前年増えると翌年は減り、その翌年はまた増える」をずっと繰り返しているんですね。この法則を発見したの手羽だけじゃないかと思ってるのだけど(笑)
これが「より戻し」。
つまり作っといてなんですが、昨年度比較だけで「●●学科は人気が落ちた!」「上がった!」と語るのは意味がないってことなのです。
2つ目は、「割合比較って微妙」。
美大志願者数は一般大学に比べ母数が少ないので、数人減っただけで「30%減」等となることがあります。例えば女子美さんなんかは7人増えたら「275%!」てな数字になったりするんですね。「◎◎大学●●学科は125%増じゃん・・・あ、3人増えただけなのか。こりゃ誤差の範囲だよな・・」と気が付いたり。
1学科が250%とかになれば他が80%でも全体では100%を超えたりもするので、「A大学は全体10%減で、B大学は20%増えた!A大学は落ち目やね」というのも意味がない行為。そもそも定員が各大学違うし。
3つ目は、「あくまでもこれは『見た目志願者数』」ということ。
多くの受験生は他学科や他大学も併願してたり、一般方式・共通テスト方式を併用してるので、私たちはこの数字を「延べ志願者数」「見た目志願者数」と呼んでます。併願率が増えたから見た目志願者が増えたように見えるだけ、なんてことはよくあること。
すぐ手に入るデータだから見た目志願者数は「参考」にはするけど、これを真に受ける大学入試関係者はまずいません。
この「見た目志願者数」をうまく使ってるのが某近畿大学さんや某東洋大学さんで・・・と細かくは時間のある時に書きますが、大学入試関係者が大事にしてるのは「実志願者数」「実数」や「どういう人が受験したか?」だったりします。
例えば、ムサビのクリエイティブイノベーション学科(CI学科)はこの数年増加傾向に入りましたが、いわゆる「一般大学志願者」をメインターゲットにしてるCI学科からすると、造形学部併願者(美大志願者)が増えるよりも、むしろ多少「見た目志願者」が減ったとしてもCI学科だけの志願者や想定する偏差値帯の受験生が増えてた方が私たちは嬉しかったりするんですね。いや、見た目志願者が増えるのもすごく嬉しいけど。
また一般選抜は外国人留学生も受験できる大学が多いので、「増えた分は留学生受験者が増えた数だった」のかもしれません。
あ、2月3日にこういう記事も出てましたな。
■美大に殺到する中国人 「夢」は日本永住 ニッポン華僑100万人時代 - 日本経済新聞
で最後4つ目が、「倍率は全くあてにならない」。
他方式・他学科・他大学を併願・併用してる人がほとんどだから、最終的には必ずみんな「どれか1つ」を選ぶわけだし、各大学が現在出しているのは「定員」であって「合格発表数」ではありません。辞退者を見込んで定員よりも多く合格者を発表することが多いんです。
また、共通テスト方式をほとんどの人が一般方式を併用してるけど、共通テスト方式は定員自体が少ないから、毎年すんごい倍率に見えちゃうんですよね。
「え。●●学科の倍率が20倍?!・・そんなの無理やん・・」と心配する必要はなく、実質倍率はグっと下がります。
なので手羽の表には倍率を載せてないんです。ここだけ一人歩きしちゃう可能性があるんで。
てなわけで、これらから言えるアドバイスが、「志願者数・志願倍率なんて全然あてにならないから、気にせず、体調を万全にして全力でやるだけ」というわけなのです。
最後に。
以前はほとんどの大学が一般選抜の志願者数を速報の形で入試前に公表してました。
でも今はかなり限られた大学だけになってしまってます。
理由はこちらのグラフをご覧ください。
選別方式別の入学者数推移です。
全国でみると一般選抜の割合は約4割ですが、関西の大学は推薦入試(総合型選抜・学校推薦型選抜等)で既に7割、8割取っており、「一般選抜はオマケ。ほんとは全部推薦入試(年内入試)で取りたいけど一般選抜やってないと文科省に怒られるから」な状態に完全になってるんで、速報を出さなくなってきたんですね。
今も速報版を出してる地方の美大は、公立の美大ぐらいじゃないかしら。
なので、いまだに試験前にちゃんと一般選抜志願者数を公開してるこの東京4美大を褒めてほしいのです。
もう意地で出してるようなもんで(笑)、評価されないと来年から公表しなくなるかもしれません。
さっきは「参考レベルの数字」と言いましたが、美大全体の動向をすばやく手っ取り早く分析できるデータはこれしかないんですよね。
当たり前のものをずっと残すためにどうぞよろしくお願いいたします。
以上、某所に
たべっ子どうぶつ55袋入りを差し入れした手羽がお送りいたしました。
「もっと目立つ場所に『手羽さんから差し入れもらいました!』と置いてくれない?win-winになりたいよね?」と指示。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。