ムサビ卒展がいよいよ来週開催されます。
■令和二年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展
●会期:2021年3月11日(木)-14日(日)
●時間:9:00-17:00*入場は16:00まで
●会場:武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス
●入場無料
*事前予約制
*車でのご来場はお控ください。
予想通り土日はすぐに埋まり、平日も今のところ朝9時台だけとなりました。
予約が埋まる様子を見てたけど、どの日程もまず13時から満席になり、次は11時でした。13時は「午後からゆっくりと」という心理だと思うけど、11時なのは「9時ぐらいに家を出たら到着するのが11時ぐらい」ということなのかな?
ムサビ卒展について、シリーズでお届けしています。これまでの話はこちら。
■【事前予約は2月25日10時開始】2020年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展は3月11日から!
あ、ここで触れるのは通学課程の卒業制作展情報なので、通信教育課程の卒展についてはこちらをご覧ください。(学科によって開催日・会場が異なります)
通学と違って「やっつけ作品」が全然ないから、通信卒展を一番見てほしいのはムサビ生だったりします。
毎年、「卒業制作●ヶ条」という卒展アドバイスシリーズをやっています。
というのも、卒業制作は芸術祭と違って基本的に1回しか経験しない(できない)のに、引継ぎが無く、前例が蓄積されないので、自主的に展示をやってきた人・いろんな展示を見てきた人とそうじゃない人の差が激しく出ちゃうんですよ。
なので、教務課時代に卒展担当を5年やり、毎年ムサビ含め他大学の卒展を美術・デザイン関係なく見て回ってる手羽が、教育研究効果・美術的評価・精神論じゃないテクニカルなアドバイスをしてあげよう、と始めました。
多分これを書けるのは手羽しかいないはずなので(笑)
今のところ35か条まであります。
■手羽の卒業制作30ヶ条 準備編1
■手羽の卒業制作30ヶ条 準備編2
■手羽の卒業制作30ヶ条 場所決め編
■手羽の卒業制作30ヶ条 制作編1
■手羽の卒業制作30ヶ条 制作編2
■手羽の卒業制作30ヶ条 制作編3
■手羽の卒業制作30ヶ条 展示編1
■手羽の卒業制作30ヶ条 展示編2
■手羽の卒業制作30ヶ条 会期中編1
■手羽の卒業制作30ヶ条 会期中編2
1.卒業制作展は卒業記念制作展ではない。
2.才能あるやつはある。自分と一緒にしない
3.やっぱりお金って大事
4.DMやチラシはよーく校正しよう
5.先生や友達の意見は大事
6.先生や友達の意見を聞かないのも大事
7.なんとなく年代によって作品の傾向はある。
8.いい場所・やりたい場所がいい展示になるとは限らない
9.屋外作品は学内全体に影響する
10.この時期の風の強さと寒さはハンパない。
11.雪は降るものと思え
12.卒展時間は明るい
13.大きさ・長さ・広さ・高さの「重さ」がある
14.小屋モノは内側と外側をしっかり作れ。いや、そもそもその小屋はいるのか?
15.パッチワーク系は要注意
16.「質より量」作品は想定の2倍作れ
17.便利な道具と基本的な単語を知ろう
18.素材と工具の軌跡を消せ
19.大事な時に機械は壊れるし、材料はなくなるの法則
20.制作場所と人は確保してる?
21.自分で作る必要はない
22.どんな形であれ完成させる
23.電気を使う作品は電源入れて初めて成立する
24.作者に見えなくても、お客さんに見えるものがある
25.吊りものは要注意
26.意外と平面は平面じゃないし、垂直は垂直じゃない
27.ワークショップ系は想像力で広がるし、小さくなる
28.写真はちゃんと撮っておこう
29.お客さんは大事。でも・・
30.ネットは便利で怖いもの
31.いろんな人がくる
32.お客さんはそれが作品かどうかはわからない
33.作品買取や展示依頼が舞い込んでも浮かれるな
34.片付けまでが卒展
35.何はともあれ体調管理が大事
個人的に気に入ってるのは、「18.素材と工具の軌跡を消せ」の「焦げ焦げ問題」かな。
以前は「すげー!こんな精密にカットできるんだ!」だったけど、お客さんもレーザーカッターに慣れちゃったから、もう次のステージにいってないとかなりやばい。もう焦げ焦げの作品はお腹いっぱいで。例えるならこの時代に昔のポリゴンCGを自慢げに見せられて「すごいでしょ」と言われてるようなもので。
大半は「このタイミングで言うなよ!遅ーよ!」なアドバイスです(笑)
ぶっちゃけ入院したりいろいろあったんで書くのを忘れちゃった・・・ま、ムサビ生なら展示編以降はまだ間に合うはずだし、「『あ。これって手羽が書いてたやつだ。やっぱりよくある失敗なんだな』といういやらしい視点で卒展をチェックできる面白さもあるんです。指摘した通りの作品が毎年あって「手羽ブログ見てくれてたら回避できたんだけどなあ・・」と。
もう言いたいことはほぼ書ききってるんだけど、ひとつだけアドバイスを追加します。
それはもちろん「コロナ対応」です。
今年は意識的にいろんなリアル卒展を見に行きました。
■多摩美術大学卒業制作・大学院修了制作展Aに行ってきた【その3】
■多摩美術大学 統合デザイン学科 卒業・修了制作展2021に行ってきた
■令和2年度 東京藝術大学 卒業・修了作品展に行ってきた【その3】
■東京藝術大学千住キャンパスに行ってきた #音環
■第69回東京学芸大学美術科 卒業・修了制作展に行ってきた
■令和2年度 第44回 東京五美術大学連合卒業・修了制作展に行ってきた
■桑沢2021に行ってきた #桑沢2021
「コロナで1年間大変だった美大4年生の展示をできるだけ見てあげたい」という純粋な気持ちもありましたが、「リアル卒展をどうやってるのかチェックして、ムサビ卒展でパク・・参考にさせてもらおう」という気持ちで見に行ってました。
お気づきの方もいたと思うけど、あえてコロナ対応を別記事にしたりまとめてたのはそういうことだったんです。学事日程の変更でムサビ卒展は後半組になったから、いいところはパク・・オマージュさせてもらって、「ムサビはさすがだな」と言われようと。
では、いきます。
36.コロナ対応を制すものは、今年の卒展を制す。
事前予約が必要なかったのはタマビ八王子卒展と五美大展だけで、あとはWEB事前登録が必要でした。会場内の混雑は事前予約しても起こるので、事前予約制は「交通機関利用の分散」「入場時の混雑緩和」のためだと考えた方がいいですね。
建物内の混雑を本気で回避しようと思ったら、
東京藝大油画がやってたこの方式しかなく、部屋内だと
部屋の定員を提示するぐらいかな。
リストバンドやシール等入場者に目印を張ったのは、タマビ八王子、タマビ上野毛、藝大上野、桑沢。
ただ藝大都美館以外は、目印をつける意味があんまりなかった気がします。「目印がないと建物や教室内に入れない」とかだったら意味があるだろうけど、全然チェックされなかったし。
でもムサビは北キャンパス・南キャンパスに分かれてるから、「この人は既にチェック受けてますよ」という目印は必要なはず。
よくあるコロナ対応だと、
などがそうですが、見てて「あ。そうか」と気が付いたのが、
定期的に窓を開けて換気をするので、風で作品が飛ばされないような仕組みが必要なんですね。
配布物がバラバラと飛んでいかないように重しを置くとか。
手羽が「これはうまいなー」と関心したのは、
タマビ版画で見たこちらです。
作品を手に取ってもらう場合、コロナ対応で「ビニール手袋をご利用ください」とやるわけですが、普通だと机の上にポンと置くだけだけど、作品台にうまく設置してあったんです。
ビニール手袋の箱なんて作品台の上に置きたくないじゃないですか。
ガムテで張ってるだけだろうけど、ちょっとしたことから作者の気遣い、作品に対する配慮がすごく伝わってきました。
桑沢で見たこちらもそうです。こういうことをいかにスタイリッシュにやれてるかが今年は大事だし、「美大生ならどう見せるか?」が問われてるはず。
「これはコロナ関係なく、こうなっていくんじゃね?」と思ったのが、
東京藝大卒展で見たデジタル芳名帳というやり方。
もともとは「鉛筆や紙を触らないための方法」として始まったと思うんですが、管理されてない卒展の芳名帳に住所や電話など個人情報書くのは結構勇気がいること。「他に誰が見に来たのかな?」と芳名帳を何枚か遡ってみる人は多いんじゃないかな。手羽も時々します(笑)
でも「ぜひ展示やってほしいので連絡ください」「DMとか送ってほしいです」というケースももちろんあります。
デジタル芳名帳なら作者しかわからないから、個人情報保護の観点からもこれいいな、と。そんな難しい仕組みでもないし、今後はこうなっていくのかもしれません。
ムサビ卒展に出品する学生さんへ業務連絡。
Facebookかtwitterで「名前(ペンネームでも可)」「場所」「(できれば)画像」「売り文句」を手羽宛てに送ってくれたら来週頭に宣伝します。あ、「手羽さんイケメン」も忘れずに。
50人ぐらいは来場者数の差が出るはずです。
以上、いつも以上に配慮が必要だから学生さんを始め、先生、研究室スタッフ、教務スタッフは大変だと思いますがもう少し!な手羽がお送りいたしました。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。