【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 準備編2

2018年11月15日(木)

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卒展出品経験と教務課時代の卒展担当経験、あちこちの美大卒展を見る趣味から、教育研究効果・美術的評価ではない視点の
「卒展ではこういう部分を気を付けるといいよ」
「卒業制作で陥りやすい点」

等テクニカルなアドバイスを30ヶ条にしてまとめました。多分一番欲しているのは精神論ではなくこういう話なのかな、と。
ムサビ生向きな内容になってますが、他美大の方、また卒展以外でこれから展示を考えてる人にも参考になると思います。

これまでの話はこちら。
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 準備編1


昨日からムサビ生有志によるムサビアートサイト2018 -感受-という展覧会が都立武蔵国分寺公園で始まりましたが(28日まで)、

こういう企画に参加すると「搬入出にはどういう道具が必要か」「現場ではどんなことに注意しないといけないか」等を経験値として知ることができます。「学校が用意した展示」ではなく「学外での有志展」は一度はやっておいて損はないと思います。大変だけど。

手羽はムサビアートサイトの前身である「小平野外彫刻展(小平アートサイト)」のリーダーをやったことがあって(初学外展示でありリーダー役)、それで一番学んだことは「普通の人との交渉」ですね(笑)
どうしても美大生は狭い美大ルール・基準で物事を考えてしまうんで、「あ。世の中はそんなに美術を気にしてないのか」と知ったのがその時の大きな気づきだったかな。

 

では準備編の続きを。

4.DMやチラシはよーく校正しよう


  • 平成29年度ムサビ卒展 各学科のリーフレット

よく「記事のここが間違ってますよ」と指摘される手羽がいうのもなんなんですが。

最近は自分で卒展のDMを作る学生さんが増えてて、自分で宣伝する意識があって素晴らしいんだけど、最後に自分以外の誰かに必ず校正してもらいましょう。

というのも、結構な確率で学生さんのDMは日時や曜日が間違てるんです。何を隠そう、手羽も曜日間違えの天才。
ややこしいのは「年度」表記で、ムサビだと「今年度卒業予定者の展覧会」だから、2019(平成31)年1月に開催しても「2018(平成30)年度 卒業・修了制作展」という表記を使うんです。つまり、「2018年度卒展は2019年1月に開催」という表記になる、と。

また、これも1年に2回は必ず見かけるのが「exhibition」の綴り間違い。iが続いたり、hが余計だったり、間違えろってばかりの単語なんだけどね。つい最近も間違ってるのを見かけました(ぼそっ)
今まで見た綴り間違いで多いのは、Informationのrが抜けてInfomationになってたり、UniversityがUnivercityの2つかな(デ情は要注意)
そしてこれは間違えだとは言い切れないんだけど、卒展の英語表記です。
ムサビ公式では「Graduation Exhibition」ではなく「degree show」を使っています。というのも海外の大学ではほぼdegree showなんですよ。ネイティブな人に聞くと「Graduation Exhibition」は「卒業記念の展示」ぐらいのニュアンスらしいです。なのでムサビ生ならできるなら「degree show」を使ってほしいな、と。
というか、来てほしい相手が日本人メインなら、中途半端にかっこつけないで日本語でいいんじゃないかとは思ってますが。


あとは自分のグルーピング・所属を間違えることも、とってもとっても恥ずかしいこと。
その時だけの綴り間違いぐらいはみんな寛容になれますが、所属を間違えるって「4年間もいて、気が付かなかったの?!」なわけだし。
DMに書いた所属学科が「映像科」「油絵科」になってたりしてませんか?
ムサビにあるのは「映像学科」「油絵学科」です。この2学科の人は、ほんとによく間違ってるし、「油画科」と書いてる学生さんもよく見かけます・・そんな科はムサビにないっ!
また、各学科の卒展WEBを見ると生徒たちの卒業制作をご覧ください」と書いてあることがしばしばありますが、くどいですが大学は「学生」であって「生徒」ではありません。時々先生たちも間違ってるけど(ぼそっ)
あ、それと「卒業・終了制作展」と書いてた学生さんも過去何人かいました。終了しちゃダメ絶対。


5.先生や友達の意見は大事


  • 平成29年度ムサビ卒展での彫刻学科講評風景

卒制中・・・特に講評直前はテンパってて頭の中が混乱し、平常時とは違う精神状態になってるはずです。

手羽の卒制の失敗は「友達や先生の意見を無視した」ことでした。
卒展直前にマジックで作品に文字をいっぱい書いちゃったんですよ。なんでそんなことをしたのか・・・答えられないんです(笑)
みんなから「それはやめたほうがいい」と言われたけど「何言ってるんだ、こいつら。オレのセンスがわからないのか」ぐらいにその時は思ったんですよね。でも卒制終わってあらためて作品を見つめ直すと、「あああ。言う通りにすればよかった(涙)」と気が付きました。普段だと絶対にやらないのに、あの時の自分はその判断ができなかったんです。そういう精神状態。

自分よりも客観的にみてる友達や先生の意見に耳を傾けましょう。
恐らくその意見は正しいはずです。


6.先生や友達の意見を聞かないのも大事


  • 平成29年度ムサビ卒展風景

さっきと逆のことを書きます。
講評で先生に「こんな作品作ってちゃダメだ!」と言われるかもしれませんが、そこで「教授みたいな年寄りに、自分の新しいセンスの作品の良さがわかるはずがない!」という気持ちも、美大生にはある程度必要だとは思ってます。

多分、教授の指摘は正しいはず。普遍的な「美」「造形」に対しての意見を発言されてるはずで、年寄りかどうかは関係ありません。あなたが気が付いてないだけ、見えてない可能性の方が高いです。

でも、卒業して数年後に「ああ。卒制講評で教授が言ってたのはこういう意味だったんだな。なんであんな作品作ったんだろ(恥)」と気が付く時がきっときます。なぜなら、手羽がそうでしたから。
でもそれでもいいんじゃないかと。「人生の学び」ってそういうもんで、学生時代に全部わかる必要なんかないんだもん。結果的にそれが恥ずかしいぐらいの失敗だろうが、その時表現したいものを表現するのが美大の学びなはずで。

また、「人によって意見が違うから」という意味合いもあります。
いろんな人の意見に耳を傾け過ぎるのも問題で、それでパニックった学生さんを何人も見てきました。ファインアート系よりも普段いろんな人に意見を聞いてるデザイン系の学生さんが多い傾向にあります。
「今の自分が一番大事にしたいものは何か?」というコンセプト・・よりも奥にある「核」となる部分は結局自分しかわからないので、最後は「他人の意見」としてスルーする勇気も必要。

ちょっと脱線すると。
先日行われたDESIGN TOUCH CONFERENCE でリーダーシップの話になったんです。日立の丸山さんもリクルートの萩原さんも先端・実験・出島的なプロジェクトを任されることが多く、「そういう時に組織をまとめるリーダーはどうするべきか?」という流れで。
で、お二人とも、
・多くの意見を聞くのは当然で言うまでもない。
・でもみんなの意見を反映させようとすると時間だけがかかり、結局標準化されたつまらないアイデアになりがち。現状維持ではなく「前に進む」ことを目的としてるプロジェクトでは、意見は聞きつつも、ある段階で自分が責任を持ち、一歩先を歩いて見せるのが大事。
とおっしゃってたのが印象的でした。確かにこれが今時のリーダーシップ像。

つまり、「その卒業制作の作品のリーダーは、誰でもない自分だよ」ってことです。


7.なんとなく年代によって作品の傾向はある。


  • 平成29年度ムサビ卒展風景

この10年ぐらいでよく見かけるのは「マンガやアニメのセリフを分析する」という作品です。ムサビだけでも全学科の展示を見ると毎年10作品ぐらいはあるかな?
その研究がいけないのではなく、他にも似た傾向のものがあるってことは、「どれだけ新しい切り口を提示できたか」「どれだけの数調べたか」を比較されやすいってことなんですね。その覚悟が必要。
特に手羽はリサーチ数を見ちゃいますね。自分の好きな10作品ぐらいだけ調べてまとめてるケースもチラホラあり、通常課題ならともかく、卒業制作でそのリサーチ数でいいの?と思うことはしばしば。でスペースが余ったからどこからかもってきたアニメ年表を後ろの壁に貼り付けてみたり。
多分同じことを先生もアドバイスしてると思うけど(笑)


傾向といえば、ここ3,4年で一気に増えてたのは「切り絵」「文字を浮かす作品」かな。

太宰治、夏目漱石、谷崎潤一郎といった文豪たちの直筆文字を針金で再現した視デ卒の荒井美波さん以降、針金やそれ以外の素材で文字を立体化する作品が増えてきました。
私はそれ自体は悪くないと思ってますが、荒井さんを超える研究量や作業量で取り組まないと、どうしても「ああ。荒井さんの真似ね」と言われてしまうんですよ。

他大学ならともかく、ムサビ生は荒井さんがOGなだけに作品認知度が高く、そう言われないようなレベルでやるしかない。

プロジェクションマッピング系もこの10年の流行りといえば流行りですね。
最近は「プロジェクションやで!どや!」とインパクトアピールするものではなく、作品に溶け込んだ形で要素の一つとして使うことが増えてきてて、使い方が進化・浸透してきた例かもしれません。



次回は「場所決め編」をお送りします。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。