【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 会期中編1

2019年1月12日(土)

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卒展出品経験と教務課時代の卒展担当経験、あちこちの美大卒展を見る趣味から、教育研究効果・美術的評価ではない視点の
「卒展ではこういう部分を気を付けるといいよ」
「卒業制作で陥りやすい点」

等テクニカルなアドバイスを30ヶ条にしてまとめました。
卒制やってる人が一番欲しているのは精神論ではなくこういう話なのかな、と。
ムサビ生向きな内容になってますが、他美大の方、また卒展以外でこれから展示を考えてる人にも参考になると思います。

これまでの話はこちら。
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 準備編1
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 準備編2
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 場所決め編
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 制作編1
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 制作編2
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 制作編3
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 展示編1
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 展示編2


シリーズ最終章は会期中のアドバイスです。

写真はちゃんと撮っておこう


  • 平成29年度ムサビ卒展風景。

写真がうまい人にスマホじゃなく「ちゃんとしたカメラ」で撮っておいてもらった方がいいよ(お金出してでも)

手羽ね。ほんと卒展の時は精神状態がアレで、作品が気に入らなかったのもあるんだけど写真をほとんど撮らなかったんです。卒展後すぐに全部廃棄しちゃったし、「過去は振り返らん!それがかっこいい!」と中2病というか美術系が陥りやすいファインアート病というか、ほんとアレだったの・・。

でも今となっては後悔してます。卒業制作って「自分はなんなのか?」を一番考える時期でもあるから、今は作品が気に入らなくても、自分の人生の記録としてちゃんとした写真を残しておいた方がいいっす。「内定もらってるからもうポートフォリオ用の写真はいらない」って人も数年後必要になるかもしれないしね(ぼそっ) 
なので展示中に撮影をしてて「なによ。鑑賞のジャマでしょ!」とお客さんは感じるかもしれませんが、講評終わったばかりなもんで展示中に作者さんたちは撮影するしかないんです。
すいませんが優しい心でご協力お願いいたします。


お客さんは大事。でも・・
これは3年前のムサビ卒展で工デの部屋の受付に置かれてた学生同士の伝言メモです。

「タマビの卒展では受付や監視やってる学生さんに挨拶されるけど、ムサビの卒展では挨拶されない」と言われたりもします。
そう言われてみればそうかもしれない。
手羽はムサビ卒展に慣れちゃってるからか、「念のために学生さんがスタンバッテいる」ぐらいの認識なので別に挨拶されなくても全然平気だけど、普通に考えればお客さんが会場に来たら「こんにちは」の一言ぐらいは言った方がいいかもしれませんね。
そこにいることが「受付・監視」のためであれば、ずっとノートPCやスマホをさわってる行為はありえないわけで。


ただ。
ここからは意見が分かれるところですが、「作品を説明させてもらっていいですか?」とお客さんにポートフォリオをもって近寄ってくるのは手羽は苦手で・・。

理由は二つあって、一つ目は「自分のペースで展覧会を見たい」
自分なりの「作品を見るペース」があって、手羽はトントコ進み、気になった作品だけ近寄ってみる派です。でも「説明させてもらっていいですか?」と来られちゃうと「いえ、結構です(びしっ)」と言えるわけがなく、「あ、はい・・」と聞くしかない。
それで「そんなコンセプトがこの中にあったのか!!すごいじゃん!!」と確かに知らされることも多いんだけど、「よく考えてはりますね(白目)」と終わらせたいケースもチラホラ。興味をもったらこっちから聞くし、なければ素通りするし、それでよくね?と。

二つ目は「作品で勝負しろよ」と。
「研究」だと確かに見た目はわかりづらいし、「自分の作品をたくさんの人に理解してもらいたい」というその姿勢は否定しないんだけど、その説明パネルはなんなの?口頭で説明が必要な作品って作品としても説明パネルとしても失敗してるってことじゃないの?とどうしても思っちゃうんですよね。

ファイン系は同じように考えてる人が多いかもしれません。キャプションに「無題」と書いたら怒る人がいるんですが、「余計な情報を観客に与えたくない」という気持ちもわかってほしくて。


  • 平成29年度ムサビ卒展風景。

でも最初に書いたように、これは人それぞれ。
「普通の展覧会じゃなく卒業研究・制作発表なんだから、自分の研究内容を説明するべき」という意見ももっとも。なので「やらない方がいい」ではなく、「手羽は苦手です」という表現を使ってて、必要ならガンガンやればいいと思います。

手羽はお店で「何かお探しですか?」と定員さんに声をかけられるのも、美容院で髪を切ってもらってる間に話しかけられるのも苦手な人見知りな性格なもので・・「用があったらこっちから聞くわい!」「小粋な日常会話ができない」てのもあるけど。
ちなみに美容院で髪を洗ってる最中は、怖いので布の下で目をバチっと開いてます。


ネットは便利で怖いもの


  • 平成29年度ムサビ卒展風景。

手羽の学生時代と今の学生さんの一番大きな違いは「ネットがあるかないか」。
いろんな情報を収集でき、自分で情報発信する手段を持ってるのはすごく羨ましい。ここ最近は卒業制作作品がSNSでバズることが多いし、こうやって便利な情報を知ることができるしね(自画自賛)
ムサビ卒展では「1200人のうちの1人」なので、展示を見てほしい人は自分から宣伝するべきです。あ、手羽にFacebookかtwitterで連絡くれたら宣伝しますよ。10人ぐらいは来場者が増えるはずなので。

一方、「昔よりも周りの目を気にしなくちゃいけなくてかわいそうだなあ」とも感じてます。
手羽の頃は友達と教授以外に「君の作品はダメだ」と言われることはなかった(情報が入ってこなかった)んで「オレってまさか天才?!」と勘違いしたまま卒業することができたけど、今はネットでいろいろ言われちゃう。
作品の「好き嫌い」は人それぞれだしそれを語るのは自由なので、ネットでの評価を無視するか参考にするかは自分次第。でも卒展時期はくどいようですが気が付かないうちに精神が不安定になってるんで、エゴサーチして自分を追い詰める必要はないと思ってます。


また、某騒動以降、「文脈を読まれずに叩かれるケースも想定しないといけない」というめんどくささも出てきてます。

これも2年前の卒展で見かけたキャプションです。
作品を見ればオマージュであることは一目瞭然だし、解説文にもそう書いてあるけど、行間や文脈どころか説明文章も読まれずに「パクリだ!」とネットで炎上しちゃう可能性が今はあって。
昔は「わからない方が悪い」だったけど「誰でもすぐにわかるように作ってない方が悪い」の世界になってる。その状況がいいことなのか悪いことなのかは抜きにして。

また、「この作品すごい!」と好意でSNSにUPされた写真が、ある段階で情報が切り取られ逆に悪い意味で炎上してしまうケースも出てきてます。デザインシップ然り、桑沢祭然り。
SNSではその瞬間盛り上がればいいから、どんなにそのあと「違うんです」とフォローしても誰も読まないんですよね。こういうことが続くと近い将来いろんなところで「撮影NG」になっちゃうだろうなあ・・。

手羽も炎上ってほどではありませんが、過去に書いたものが最近になって突っ込まれることが時々あります。

いい例がこれかな。
去年の卒展で便器を使った作品があったんですが、学生さんの
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【美大を受験しようとしている人へ】
美大はキャンパスの真ん中に突如便器が出現しても誰も気に留めないイカれた場所です。
本当に美大で大丈夫なのかもう一度よく考えてみて下さい
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というつぶやきが結構バズってたんですよ。
それを見て

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【美大を受験しようとしている人へ】
美大はキャンパスの真ん中に突如便器が出現しても、教授たちがちゃんと講評する場所です。
美大はステキだよ。
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とパロディで書いたんです。
でも1年後にはなんのことかわからない人の方が多く(笑)、最近になって「便器を使った作品なんて昔からある」とコメントが入ったりも。 といって「これはこうで」と説明するのもヤボだし、「美大生ならさすがにデュシャンぐらいみんな知ってますってば」と反論するのもみっともない。

多くのケースはその時の話題が元ネタになってたり、後日オチを書いてたりするんだけど、そこまで調べる人は皆無ですね。
手羽は毎日読んでる(前後関係を知ってる)人をイメージして書いてるし、1000個の巨大サーガのつもりで書いてるけど(笑)、切り取られても大丈夫のように一話一話完全に完結し、なおかつ短い記事を書かないと今はダメなのかなあ、と。でもそれって面白さ半減しないかなあ、と。


さ、次はいよいよシリーズラストです!

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。