【ビダモン】残念ながら不合格だった人へ。

もうすぐ2月が終わっちゃうんですね・・・の手羽です。

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今日は残念ながら不合格だった方への話。
特にムサタマ落ちた方へのメッセージ。


「自分の実力不足だった」「予備校、サボったもんなあ・・」と理解されてる方には「もっと勉強して来年頑張ろう」というしかないです。でも、ムサビなりタマビなりを目指して一生懸命頑張った自信が自分にあるのなら、確実に将来を動かせる可能性があります。 「受験を死ぬ気で頑張れた」という気持ちが今後の自分に必ず何らかの形で役立つはず。

そして、この時期だと「第2志望の学科(大学)にいくか、浪人して来年第1志望を目指すか」と悩んでる方も多いはず。
もちろんムサビ職員としては「浪人して来年ムサビ受けてね」ですが、以下は「美大卒業生」としての私のかなり個人的な意見ということで。


選択肢が東京の私立美大であれば、浪人はせずに第2志望の学科(大学)に行くべきだと思ってます。

「自分が求めてるものは第1志望のあの学科しかありえない」という方は頑張って来年チャレンジしましょう。そして「あの大学に行かないと絶対に後悔しそうだから」という強い意志があるのなら、そうするべきです。

でも、第1志望の選択理由が
「周りの人があっちの方がいいって言ってたから」
「友達があっちの学科を選んでるから」
「先生があの学科に行けと言ってた」

ぐらいであれば・・・第1志望に選んだ理由はなんでもいいけど「自分の気持ち」として説明できないのなら、実は浪人して来年受験するほどの価値は自分にはないのかもしれない。 正直理由は「家の近所だから」「フィーリング」でよくって。でも「自分がそこに決めたんだ」というものが欲しい。
でなければ「あなたにとってそんなに違いはないかもしれない」。

「●●美大だったら●●が学べるって噂だから」
「●●って著名人を輩出してるって相談会で聞いたから」
「就職率100%ってWEBに書いてあったから」
という理由だと、「それならムサビでもできるよ」「▲▲さんと■■さんって知ってる?知らないの?その人はムサビだよ。その人だけじゃないよ」「あのね、就職率ってね・・・」と手羽は数秒で言い返せる自信があります(笑)
そんなもんで、これはタマビ広報も東京造形大広報も同じです。
「フィギュアだけ作りたい」「アニメしかやりたくない」と言われると「ごめん。ムサタマでは無理。それしか学べない●●大学か専門学校に行った方がいいよ」と答えるしかないけどね。
あ。条件に「選択肢が東京の私立美大であれば」とつけてます。
手羽が知ってる限り、東京の私立美大はどこもちゃんとしたポリシーと教育カリキュラムでやってると思うし、京都の美大さんだと状況は変わるし、やっぱり国公立大や地元の大学に通う利点もありますので。


浪人して合格した人に聞くと、ほとんどの人が「浪人時代が絵の描き方を一番真剣に学び、研究した時間だった」 「一度は浪人した方がいいよ」と答えますね。
やっぱり1年以上みっちりデッサンなりを描いた人の絵は違います。そして、「浪人」って響きも少しかっこいいし、予備校の浪人生を見てるとアウトローぽくてイメージしてた美大生って感じだし、なんか大人みたいだし。
美大希望者なら、お金が許すのであれば一浪ぐらいは人生経験としても悪くないと思ってます。
でも、「美術予備校」というかなり特殊な世界ではなく、ちょっとでも早く世間(に近い環境)に出れるのなら・・つまり、大学に合格してるのなら、そっちを選ぶのも将来的にはいいことじゃないかと。

そして、「君は一浪すれば藝大にいける!ムサビなんか行かずに一浪しろ!」と言ってくれる、あなたがネ申のように慕っている予備校講師がいたとします。
多くの場合は真剣にあなたの将来を考えてくれてる方だと思いますが、一方で
「浪人生がいないと収入源が減る」
「やっぱり次年度広報のために『藝大合格者』の数が欲しい」
という考えの人が、少なからずいる事実もあるわけで。 浪人して希望大学に行けなくても、その不安だった1年間と予備校費用をその人が清算してくれるわけではありません。
「君は一浪すれば藝大にいけるはず!」と言ってくれる人と「浪人せずに現役で入った方がいい」と言ってくれる人。どちらを信用するかは、最後はその人との信頼関係なんですよね。


ただ、第2志望進学を選択した場合は
「あ~あ、本当はタマムサに行ける実力を持ってる自分なのに、こんな大学なんて」
と口に出してたら、それで終わり。
ムサビにも 「本当は藝大に行ける実力を持ってたはずなのに。ムサビなんて」と人前で言ってる人が時々いて。心で思ってこっそり仮面浪人すればいいのに、これは自分の弱さを露呈してるだけに過ぎず、そんな人がいい作品を作れるはずがなく、実際にあんまり良くないことが多いです。
「私を落とした大学の先生め!私の実力を見るがいいわ!!」ぐらいの気持ちの方が人生楽しいんじゃないでしょうか。たまたまムサビやタマビの先生があなたの絵に興味を持たなかっただけで、それだけのこと。 「ムサタマの先生は見る目がない」で「とりあえずは」いいと思います。
また、どうしてもその大学に行きたいのなら「3年次編入」という手もありますよ。



彫刻学科に進学した手羽の話をさせてもらうと。
漫画家か美術教師かイラストレーターになりたかったので、何も知らない状態での第1希望はグラフィック系か油絵系でした。彫刻とか立体とかほとんど興味なかった、というかむしろ苦手の部類。
で、高校2年の春に画塾へ行くんですが、初めて
「東京美大の倍率」
「その学科にそった実技入試訓練が必要」
「高校までの『絵がうまい』と美大合格するための絵はそもそも別次元のもの」
「自分より上手い人がいっぱいいる」
「絵が好きなだけじゃ美大にいけない」
「学科試験も重要」
だと知り衝撃を受けます。当時は視デが25倍、油絵学科が18倍、彫刻でさえ5倍ぐらいの時。藝大なんて受験すること自体がおこがましい倍率。「藝大いくなら4浪・5浪あたりまえ」と言われてた時代。
でも田舎から抜け出して東京の美大で勉強したかった。

で、入塾した当日に先生から言われたのが「東京の美大に行きたいなら彫刻学科に行け!」という衝撃的な言葉でした。
「ち、彫刻?イラストやりたいって人間に彫刻?!むしろ苦手なんですけど・・しかもよくわからないけど彫刻なんて普通に考えて就職先ないんじゃ・・・東京でかっこいいグラフィック系の勉強したいだけなのに」と思ってるところにこう続いたのです。

「油絵やデザインは家でも描ける。でも彫刻は家では作れない。『大学を利用する』ということでは一番意味があるのが彫刻学科。そしてこれからは平面も立体的な解釈がマストになっていくから、立体・空間の勉強をしておくことは将来的に絵画の方向に進んでも役に立つ」

「美術を勉強したいなら、どこでもいいから田舎を抜け出して東京の美大へ一刻も早く行くことが大事。浪人して藝大入るのもいいけど、東京にいることに価値があるんだ。なんだかんだ東京でしか学べないことは多い。そこから田舎に戻ればいいだけ。そこで何を学ぶかはあとは本人次第で学科の括りや大学なんて関係ない。とにかく田舎にずっといちゃダメだ。だから一番倍率の低い彫刻学科を受けて現役で入れ」


と。
地方創生推進派から怒られそうなセリフですが、当時の手羽はこの考えにすごく共感したんですね。ま、今思えば洗脳に近いけど(笑)
んで、第1志望の油絵学科と当時一番倍率の低かった彫刻学科を受けて、油絵は落ちたので彫刻に入った・・というわけ。手羽の「油絵と彫刻の併願」ってレアケースなんですが、実はそれだけのことでして。
第1志望は油絵だったけど、彫刻は第2志望というか「東京へ行くための口実」ぐらいの考えでした。「彫刻を学びたい!」という強い意志で彫刻学科を選んだ人間ではないのです。てへ。
でもこの選択はそんなに間違ってないと今でも思ってるし、そうアドバイスしてくれた先生に今でも感謝しています。人生の選択なんてそんなもんかもしれません。

最後は運と縁。

そっちに落ちて、あっちに合格したのも何かの縁かもしれません。
ご家庭の都合で浪人できないために他大学進学を選択する場合もあるかと思います。でも、それは運命・・と書くと「悲しい運命しかないのか(涙)」と言われそうだけど、あなたが気がついていない何かのきっかけを神様が作って待っているのかもしれない。

なので「どれを選択すべきか」は、最後は自分の責任のもとで決めて欲しいと思ってます。
高校3年生にそれを求めるのは酷かもしれませんが、「お母さんやお父さんがそういったから」「先生が」で決めてしまっては 後で後悔するだろうし、気持ちとしてモチベーションが入らず、どの選択でも不満足な結果になるはず。アドバイスはもらったとしても、最後に決めるのは自分であって欲しいのです。

私の知り合いで、高校の時に「藝大やムサビタマビの油絵に行きたい」と進路の先生に相談したら、「美大の油絵なんて卒業して就職先がないだろ。どうしても美大系に行きたいなら日本大学芸術学部のプロダクトデザインにしろ。日芸も日本大学という総合大学の一つなんだから、そっちの方がいいに決まってる」と言われ、「そんなもんか・・・」とそのまま日芸プロダクトだけ受験し入学した人がいます。
でも結局やりたいことと全然違ってて、1年後中退して、ムサビ油絵に1年から入り直しました。

あ、ニチゲイさんがいけないってわけじゃなく(笑)、言いたいのは「一般高校の進路の先生・・・普通の大人の知識なんてそんなもん」ということと「自分で選択しないと入学してから後悔するよ」ということです。
手羽とその知り合いの共通点は「先生の言葉で進路を決めた」だけど、一番の違いは「アドバイスをポジティブに捉え、自分の気持ちに完全変換したかどうか」です。
どれが正解かなんて今は誰もわからないし、そもそも人生の正解って・・・なんなんですかね。
自分の意識次第で正解に近づけることができるだけで、どんな結果でもポジティブに捉えた方がうまくいくはず。


以上、 「自分にとって何が大事か」で選択肢が変わるわけで、手羽は「東京の人・刺激・情報の多さ」を優先したに過ぎず、もちろん地方で学ぶ価値もあると思ってる手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。