【ビダモン】美大実技入試に関するたった2つのアドバイス

昨日が爆誕日だった手羽です。いろいろコメントありがとうございました。そして慌ててケーキを買ってきてくれた木黄田さんもありがとうございました。まさか自分がこんな年齢になるとは思ってなく、「永遠の27歳」と言い張るにはボチボチ厳しい年齢になってきたので、来年からは「永遠の28歳」に更新したいと思います。

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今日からムサビとタマビの入試が始まるので、実技試験のアドバイスを2つ。
「実は美大の実技試験って奥が深いのよ」って話になるんですが。

以降、去年のムサビ入試問題を例にとるので、
2015年度入学試験問題
を見ながら読んでくださいな。


まずは、なんといってもこれ。
(1)問題文をちゃんと読もう。
「え?実技で『問題文をちゃんと読もう』?!もっとさ、『自分の得意な色は事前に作ってフィルムケースでもってけ』とか実用的なアドバイスはないの?」と感じるかもしれませんが、これほど実用的で、簡単に得点を稼げる方法はないわけで。(てか、フィルムケースがもう手に入らない)

これには2つの意味があります。

一つ目は、「よく読んで条件をちゃんと踏まえないとダメ」という意味。
例えば例年、視覚伝達デザイン学科やデザイン情報学科等の試験は問題文に「条件」が多く書かれてます。この条件が一つでも欠けてる(課題違反)と0点・・・ってことはないけど減点対象になるんです。
視デの「出題意図と評価のポイント」を読むと、去年は条件を踏まえなかった作品が多かったのか、
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「入試ですから問題文や条件を良く読み理解する事を心がけてください。」
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と書かれてるぐらい。こういうコメントも珍しく、去年は課題違反が多かったのかな・・。
実技試験ではただきれいに描くだけでなく、読解力、理解力も問われてるってことですね。デザイナー希望者なんだから当然といえば当然なんですけど。
白い部分は白色を塗るべきなのか紙の白のままなのか、これも試験によって違うので要注意。


ふたつめの説明の前に、この単語を解説しないといけないかな。
モチーフ」という言葉がありますが、美術用語としての「モチーフ」は主に2つの意味があって、1つは「絵や彫刻で再現される対象」。
机の上にリンゴやら布やらフランスパンやらガラス瓶などが置かれているの見ながら描いてるシーンを見たことがあると思いますが、それです。厳密にはイコールではありませんが、他の日本語だと「対象」「静物」が一番近いかな。
だいたいの場合は、石膏像か布・ガラス・鉄・植物・プラスチックなど異なる質感・形態のものをモチーフにし、石膏像は白い石膏像らしく、布は布らしく、ガラス瓶はガラス瓶らしく「描き分けできるか?」「画面にちゃんと納めているか」、「形がちゃんと取れているか」等を見る試験。多くはデッサン試験の場合の「モチーフ」。

例えば工芸工業デザイン学科の鉛筆デッサンががそうですね。問題文には
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「机上のモチーフをデッサンしなさい」
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とだけ書かれてて、「いかに対象の特徴を捉えているか?忠実に形や質感や量感等を再現し、構図が優れているか?」等の「基礎的デッサン力」「描写力」が問われています。多くの方になじみのある、すぐに想像できる「モチーフ」はこっちの意味じゃないかと。
モノヅクリ系は形をしっかりとれる人の方がいいのは昔も今も変わらず、手っ取り早く判断できるのがなんだかんだデッサンですからね。

そして2つ目は、「題材や動機」という意味。
違う単語だと「テーマ」「きっかけ」「イメージ」「想定」が近いかな?
去年の日本画学科「着色写生」がすごくいい例で、モチーフ台の上に兵士のフィギュア、綿、果物などが置いてある試験。普通ならこれをそのまま描くだけなんだけど、出題意図と評価のポイントには、
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「今日、絵画の題材として様々なモチーフが取り上げられているが、個人の興味を引き出し社会的な問題までこめられる多様を表現を期待してモチーフを選んだ」
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と書いてあります。
あくまでもそこに存在するのは「きっかけ」であり、そこからどう発想を展開させるか、「社会的な問題」まで掘り下げる能力があるか、を見たってことですね。

油絵学科油絵専攻「デッサン」試験もやはりそう。問題文には
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「机上のモチーフを自由に描きなさい」
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としか書かれていません。
でも、この「自由に」がクセモノで、出題意図を読むとやはりこの「自由に」がポイントになってるのがわかります。以下引用します。
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「モチーフを自由に描きなさい」という出題なので、自分の得意なイメージを加え、自分らしさを表現することも絵を描く楽しさの一つですが、要するに自分がそれまで絵を描く時にとても大切にしてきたこと、またはモチーフを見た時の感動を素直に表現して、自分らしい「作品」を描いてほしいと思っています。
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「見たままを描け」というより「現象や印象を自分なりの解釈をし、それを書きなさい」ってことですね。
昔はデッサンで「基礎能力」を見て、デザイン等で「発想力」を見るのが一般的でしたが、今はその境目がなく、ただうまくきれいに絵が描ければいい時代ではなくなっています。

そうなんです。
15年前以上前の美大入試では、「いかに石膏像をうまく描けるか」「手をそっくりに描けるか」等が求められていて、「他では使えない美大受験用のテクニック」として批判されてました。もちろん短い時間で描いたり、基礎的なデッサン力・デザイン力のトレーニングは今も必要なんだけど、ムサビやタマビの入試では、その能力だけを求めていないってことなのです。
昔の鉛筆デッサン試験のモチーフといえば、石膏像だったんだけど最近は出題されなくなってきました。藝大デザイン科の鉛筆写生も今度の入試から「石膏像デッサン」と「構成デッサン」の選択制になり、おそらくこれは移行期間対応、数年以内には構成デッサンだけになるんじゃないかと推測してます。石膏ボーイズさんの出番が減って可哀そうだけど。
藝大デザイン科が1次試験で構成デッサンを取り入れるのも、そういう意図があるからだと思うんだけど、ここを未だに勘違い・・・というか、「15年前の自分の知識で藝大・美大を批判する」人が多く。
詳しくはこちらをご覧ください。
【ビダモン】子供が美大・芸大に行きたいと言い出したら(導入編)

というわけで、「問題文をちゃんと読もう」の2つめの意味は「問題文に隠されたヒントを探し、そこから自分なりに発想を広げよう。」です。
ちなみにどうにでも取れる問題文はどう解釈してもいい、むしろ出題者の想定を超える作品を作ってほしい、という意図があるはずなので、そういう時はおもいっきりやっちゃってください。責任は取りませんが(笑)



相談会で受験生に「●●学科と▲▲学科の違いを教えてください」と聞かれた時に、手羽は 「簡単に見分ける方法が二つある」と答えてます。
詳しくはこちらを。
【美大受験のギモン】美術予備校へ行くべきか
【美大受験のギモン】タマグラと視デの違い

実技試験は教員からの初めての課題なんです。その証拠に入試は大学会計上、教育経費に計上されます。
「この出題をあなたはどう解釈し、表現しますか?→私たちはそれを理解できてる人材が欲しいんです→そういう人のためのカリキュラムを用意してますよ」なメッセージでもあるわけで、実技試験から大学・学科の違いを見つけることができるし、実技試験がそのままアドミッションポリシーになってるんです。
だからムサビやタマビは学科ごとに試験が違うし、共通デッサン試験をやりにくい・・ってわけ。基礎的なデッサン力だけを見る試験・・・たとえば「紙コップを描きなさい」とかだったら共通試験はできると思うのだけど。

しかし、すごいと思いません?
問題文を理解し、更にそこから発想を広げ、独自性を入れ、アイデアスケッチをし、下書きをし、色を塗り、場合によっては文章もつける。ムサビのデザイン系だとこれを「3時間」です。美大、特にムサビやタマビの実技試験では、読解力、発想力、描写力、表現力、瞬発力、持続力、ストレス耐性、体力、そして実技力が問われてるわけですね。
このことは後日書こうと思ってる話につながるので覚えておいてくださいな。


本日二つ目のアドバイス。
(2)描く場所はくじ引きで決まる
アトリエ会場でイーゼル使って行われる実技試験での場所決めは「くじ引き」です。タマビも藝大もくじ引きなはず。予備校だと場所取りは早い者勝ちかもしれないけど入試では違うので、急いで会場に行く必要はないからね。

昨日、SNSで独立時計師の浅岡肇さんからこんな入試体験談を教えてもらいました。
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今はどうか知らないけど、僕の時は、藝大は願書の受付が郵送のみで、受験番号は、その受理順だった。で、一次試験の受験会場は、番号順に光の良い絵画棟の一番上からで、終りの方は光が最悪の彫刻棟。だから、できるだけ早く願書を出すのがポイントだった。僕は必ず、丸の内の中央郵便局に、願書受付の日付になる直前に行って、日付が変わった瞬間に出すようにしていた。これが、おそらく最速のはずだったから。
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こんな藝大受験裏テクニックがあったとは・・・。
ムサビのデッサン試験も昔は自然光だけでやってたけど、現在は蛍光灯を点灯してやるようになってます。この話の続きは入試が落ち着いた時に・・。


いろいろ書いてきましたが、昨日も書いたとおり、一番伝えたいアドバイスは「前に進め」です。
試験当日はいろんなことが起きると思うけど、特に実技試験ではポジティブに、前向きに考えた方が勝ちです。

この駐車場のようにね。(違う違う)

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹と西原理恵子とみうらじゅんと羽海野チカと銀魂と合体ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し日夜奮闘中