美大受験生の疑問にお答えする恒例の「#美大受験」シリーズをお送りしてます。
#美大受験では、ムサビまたは関東美大の一般入試(AOや推薦入試じゃない入試)を具体例で使うことになりますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
■東京五美大2022入試カレンダーからわかるたった1つのアドバイス
■コロナ対応の入試変更点は重要な情報だから、マメにチェックしよう
■ムサビの実技試験で絶対に忘れちゃいけないものを1つ断言します
■美大実技試験でのたった1つのアドバイス
■美大入試で家を出る前に確認すべき情報と持ち物は?
■学科試験当日に聞いても役に立つアドバイスを1つだけ
■入試の朝、中央線が止まった。さてどうする?
■手羽のブルーピリオド-入試でこんなことが起きた-
■タマビ入試の雪対策を勝手に考えてみる
■2022年度東京4美大一般選抜志願者数が言えるたった1つのアドバイス
■倍率は全然信用できないって話 1 #募集定員と合格者数のトリック
■倍率は全然信用できないって話2 #併願のトリック
■タマビとムサビの合格発表日にやるべきこと【受験番号がわからない時は】
■美大に合格した人へ6つのアドバイス その1【動いてる人は動いてる】
■美大に合格した人へ6つのアドバイス その2【リア充で何が悪い】
■補欠だった方へ【何番まで繰り上がるのか?】
■国公立芸術系大学の志願者数を調べてみた【東京藝大は?長岡造形は?】
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
合格された方の悩みで多いのはこの4つじゃないでしょうか。
1.現役で受かったけど、ついていけるだろうか?
2.両方合格したけど、どっちに行こうか?
3.学科試験のみ入試で合格したけど、入学して実技についていけるか?
4.東京と地方、どっちの大学に行くべきか?
それぞれにあくまでも手羽の個人的な考えとして答えていきます。
1.現役で受かったけど、ついていけるだろうか?
手羽も現役でムサビ彫刻学科に入学しましたが、当時は浪人が当たり前、同級生に2浪・3浪がゴロゴロいる時代で、現役生は30人中5人ぐらいしかいませんでした。
多浪生は大人な感じがして実技もめっちゃうまく、最初は確かにかなり苦労したけどなんとかやれるもんで、3ヶ月もすれば現役も浪人も関係なくなります。
・・・というか、そもそも「現役で入ってもやっていけるか?」って悩みは、美大マンガの見すぎですね(笑)
こちらのデータをご覧ください。
東京藝大、タマビ、東京造形大・ムサビの志願者・合格者の男女・現役比率です。
タマビ・東京造形・ムサビともに合格者全体の約6割が現役生なんです。
なおかつこれは一般選抜のデータであって、総合型選抜はほぼ100%現役生だから、全体でみるともっと現役生の割合が高くなるはずです。
さすがに東京藝大は現役率25.7%と3私立美大に比べて低いです。
ただ、よく「4浪、5浪当たり前」と言われてますが、今度はこちらのデータをご覧ください。
東京藝大美術学部の志願者/入学者の卒業年度です。
現役と1浪を足すと実は6割を超えるんです。あの東京藝大でも。
もちろん学科で倍率は全然違いますが、数字上では東京藝大入るのに(藝大のブランドを得るのに)「4浪5浪は当たり前」はもうとっくに過去の話なんですね。
ちなみに以前某テレビ局から美大ネタの監修をお願いされて、「どうせ『東京藝大は4浪、5浪しないと入れない』『変態が多い』と面白おかしくやりたいんでしょうが、そうじゃないですよ」とこのデータをお見せしたんですが、やっぱり「4浪、5浪が当たり前」「こんな変人がいる」と紹介されてました・・。
これは芸術系大学独特の判断基準とも言えますが、採点者は「実技力はまだ低いけど、この人の絵は”何か”持ってる(伸びしろがある)」と高評価にすることがよくあるんです。一般大学の入試では絶対にありえません(笑)
基礎点部分はどの大学もそんなに変わらないと思うけど、その違いが各大学・各学科の違いでもあるわけで、「何故実技がこなれた浪人生じゃなく、現役のあなたの実技力や学科力が高評価だったか」を考えてほしいな、と。
浪人生はデッサン第1主義になりがちで、もちろんアウトプット力は大事なんだけど、今のデザイナーや作家に求められてる「フラットに物事を考える力」は実は現役生の方が高いかもしれません。入学してから現役生の強みを生かせばいいだけです。
2.両方合格したけど、どっちに行こうか?
なんともうらやましい悩みですが、「貴方の価値観次第」としか言いようがなく。
いろいろ調べた上で受けた大学なら、最後の最後は親や友達や講師やネットの意見じゃなく、「家から近いから」とか「あっちの大学の雰囲気がなんとなく合いそうだから」とか、自分とのフィーリングで決めていいと思ってます。
「自分の中のモチベーション」に相談した方がよく、最後は自分の運や縁を信じるしかありません。
「ちゃんと情報を調べろや!」と普段は言ってますが、最後の最後はそんなもん。
その答えを知ってる人はいないし、そもそも答えがないし、「あっちの大学にしろ」と言う人の情報もどこかから聞いた「噂」がベースだったり、随分前の情報やイメージだったりするわけで。
手羽の情報だってもちろんそうです。時々指摘を受けてこっそり修正してたりするし。
あ、そうだ。
美大について解説するユーチューバーが増えたからか、
■手羽美術大学★|五美術大学と五芸術大学
これがPARTNER_WEBでずっと一番見られてる記事になってるし、これを参考にしてると思われる動画もちょいちょい見かけます。
それは全然いいんですが、2015年に書いたものなので、その後京都嵯峨芸術大学は「嵯峨美術大学」、京都造形芸術大学は「京都芸術大学」に名前が変わってたり、「京都五芸大」なんて括りを使ってる人は今はほとんどいません。。
最近公開された動画で「日本には美術大学が5校しかありません」「京都には京都五芸大があり」と語っていらして「あああ。聞いてくれたら教えたのに・・」と思うことがちょいちょい。
話を戻します。
ひとつだけ忠告するなら。
大学選択理由が「親友の●●さんが行くから私も」「大嫌いな▲▲さんが行くから嫌」はかなり危険です。
なぜなら大学に入るといろんなヒトとデキゴトに出会うので、興味をもつ対象や考え方自体お互いに変わるし、というか大学に入って変わらない方が変なんです。
例をお二人。
■No.58 坂口佳奈 [画家・木祖村地域おこし協力隊隊員]|msb! 武蔵野美術大学校友会
坂口さんは油絵学科を卒業し、今は木祖村地域おこし協力隊をやってます。
■No.50 加藤 優子[祭り専門家/(株)オマツリジャパン 代表取締役]|msb! 武蔵野美術大学校友会
同じく油絵学科OGの加藤さんにいたっては、油絵を描きたくて油絵学科を選択したはずですが、就職した漬物メーカーを退職して起業し、今や売上1億の会社社長。
坂口さんと加藤さんが入学前に今の仕事をほんの少しでもイメージしてたか、っていうとありえなくて、状況変化で興味も仲間も全然変わるし、人生わからないもんなんです。
3ヶ月もたてば大親友だった友達が違う友達と行動するかもしれないし、画塾時代は嫌いだったけど毎日付き合っていくうちに「ああ。こういうやつだったんだ」と理解するかもしれないし(そういうケースの方が親友になる可能性あり)
これは「彼氏が●●大学に行くから私も」も同じ。大学行けばきっともっと素敵な恋愛に出会いますよ(責任は一切取りませんが)
続くっ!
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。