【 #美大受験 2022 】美大実技試験でのたった1つのアドバイス

2022年2月3日(木)

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美大受験生の疑問にお答えする恒例の「#美大受験」シリーズをお送りしてます。

#美大受験では、ムサビまたは関東美大の一般入試(AOや推薦入試じゃない入試)を具体例で使うことになりますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
東京五美大2022入試カレンダーからわかるたった1つのアドバイス
コロナ対応の入試変更点は重要な情報だから、マメにチェックしよう
ムサビの実技試験で絶対に忘れちゃいけないものを1つ断言します
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
 

今日からタマビ入試も始まり、いよいよ東京の美大入試も本格化していきます。
そういえば、タマビさんは今年志願者数発表しないのかな?

今日は美大入試の最大の特徴である「実技試験」についていよいよ書いていきましょ。
手羽からのアドバイスはたったひとつだけです。

問題文をちゃんと読もう。


はい、終了!おつかれさまー。ここにある歌舞伎揚げ食べてもいい?


・・え?「それって学科試験のアドバイスじゃないの?!」ですって?
とんでもない。これほど実技試験で超実用的で、即効力があり、簡単に得点を稼げる方法は他にないんですよ。

これには2つの意味があります。

一つ目はそのまま、「よく読んで条件をちゃんと踏まえないとダメ」という意味。
例えば例年、タマビのグラフィックデザインやムサビ視覚伝達デザイン学科等の試験問題は「条件」「設定」が多く書かれてます。これをよく読まないと出題意図とは全然違うものになってしまうことがあるんですよ。

去年の視覚伝達デザイン学科を例にしましょう。

「配布されたモチーフ(アクリル立方体等)を自由に操作し、そこで得られたイメージと手のシルエットを用いて、あたなの未来の夢、または希望を色彩構成しなさい」「20字以内でどんな夢or希望を描いたか記入」が去年の問題でした。
しかし、これを構想・下書き含め3時間でやらなくちゃいけないってすごいですよね。実技力だけじゃなく出題者の意図を読み取る読解力も必要な、さすが視デというか、美大の実技入試ってすごいなあとつくづく思います。

で条件を見てみましょ。

条件の中に「答案用紙は横長で使用すること」と書いてあり、これを読み飛ばして縦長で使用しちゃったらアウト・・というわけ。
毎年視デのデザインは横位置指定なので、過去問をやってる人なら横位置でそのまま描くはずですが、逆に突然今年「縦長に使用しろ」と書いてあったら・・かなりの人は読み飛ばしちゃうんじゃないかしら。

これが「問題文をよく読もう」のひとつめの意味です。
 

また、ムサビ視デは塗っていない余白は「余白」扱いされますが、タマビグラフィックは余白を白く塗らないと「未完成」とみなされる、と共に試験問題の条件に書いてあります。
同じような試験なのに微妙に「白」の扱いが違く、「ちゃんと試験問題を読まないとダメ」のいい例。(「去年の入試は」です。今年はどうなるかもちろんわかりません)


ちなみにムサビ実技試験でよくあるのが問題文の条件に「画面の裏面に上を示す矢印を描きなさい」と書いてあるケースです。

いわゆる「天地矢印」ってやつですが、備考ではなく「出題条件」にある以上、矢印を書いてなかったら減点対象の「課題違反」になる可能性があります。
あ、課題違反の場合、よほど悪質なものじゃない限りは0点になるわけではなく減点・・と思われます。多分。
机上静物モチーフだと天地矢印はいらないんじゃないかと思ったりもしますが、「条件」に書かれてる以上問題文の一つ。
「問題文の『条件』をよく読む」とはそういうことでもあり、こんなことで減点されるのってもったいないし、悔しいですよね。
 

 
「問題文をちゃんと読もう」の意味の2つ目を説明する前に、まずこの単語を解説しないといけません。
「モチーフ」という言葉です。

美大受験用語としての「モチーフ」は主に2つの意味があります。
1つ目は「絵や彫刻で再現される観察される対象」。皆さんがイメージする「モチーフ」はこれじゃないかしら。これを仮に「モチーフA」とします。
2つ目が「題材や動機」という意味で、違う単語だと「テーマ」「きっかけ」あたり。あくまでもそこに存在するのは「きっかけ」であり、そこからどう発想を展開させたかを見るもの。これを仮に「モチーフB」としましょう。

で、まず去年の工芸工業デザイン学科の「デッサン」をご覧ください。

ガラス・ステンレス・布・木材など異なる質感・色・形態のものをモチーフにし、ガラスはガラスらしく、木材は木材らしく「質感・量感を描き分けできるか?」「画面にバランスよく納めているか」「形がちゃんと取れているか」「調子・陰影を把握してるか」等を見る試験。
「目の前にあるものをじっくり観察して、どれくらい忠実に描けるか」を問うオーソドックスな問題で、多くの方になじみのある、すぐに想像できる美大入試らしい「モチーフ」といえます。
つまりこれは「モチーフA」パターン。


次に油絵学科油絵専攻の油絵試験をご覧ください。


問題文はたった1行「モチーフを自由に描きなさい」。

でも、この「自由に」がクセモノで。
目の前に静物が組まれてるからつい 「見たまま」を描いてしまいそうですが、「自由に」から「目の前のものは『きっかけ』でしかなく、その空間やそこで起きてる現象や印象を自分なりに整理し解釈し発展させ、それを自分なりに再構成して自由に表現しろってことだな」と読み取らないといけないんです。つまり「モチーフB」パターン。
出題意図にも「単にモチーフを描けば絵になるという構成にしなかった」と書いてあり、この「自由に」を読み飛ばしてしまうと、たったそれだけなのに出題意図から離れてしまい、点数が下がる、と。
参考作品を見ればこの意味がわかるはずで、よくもまあ、同じモチーフであれだけのアイデアが思いつくもんで、つくづく「自分にはこの才能はないあなあ」とがっかりしちゃいます・・。

というわけで、「問題文をちゃんと読もう」の2つめの意味は「問題文に隠されたヒントを探し、そこから自分なりに発想を広げよう。」
 


「問題文をちゃんと読もう」を言い換えると、一つ目は「趣旨から離れないため」であり、二つ目は「どこまで離れられるかを探るため」です。
ちなみに逆にどうにでも取れる問題文はどう解釈してもいいと言われてます。
「配布したモチーフを加工するな」と書いてなければ、折ろうが曲げようが自由で、むしろ出題者の想定を超える作品を作ってほしい、という意図があるはずだから、そういう時はふりきっておもいっきりやっちゃってください。
・・責任は取りませんが(ぼそっ)


実技入試はこう考えた方がいいです。

「最初の課題」
「教員からのメッセージ」


「この出題をあなたはどう解釈し、表現しますか? → 私たちはそれを理解できる(超える)人材が欲しいんです → そういう人のためのカリキュラムを用意してますよ」なメッセージが込められ、そのまま3つのポリシー(アドミッション・カリキュラム・ディプロマ)になってて、どういうことを大事にしてる学科なのか一番手っ取りばやくわかるのが実技試験なんですね。

典型例が版画専攻の「イメージ・ドローイング」です。
版画専攻は2023年度(再来年度)からグラフィックアーツ専攻へ名称変更することを発表しましたが、去年の出題意図をご覧ください。

実は結構「グラフィックアーツ」のヒントを出してた、というかそのままのことが書かれてます(笑)
「イメージ・ドローイング」は「こういうタイプを増やしていきたい」という教員からの隠れメッセージだった、というわけですね。

そうだ。
ちょうど「たましん美術館」で教員や助教スタッフによる版画の展覧会やってるので、お時間があれば・・特に版画受験生はぜひ。
The Adventure of Fine Art Prints[たましん美術館×武蔵野美術大学共催展]
午後6時までやってるから、入試終わって向かえばギリギリ間に合うかな?厳しいかな?

 
よく美大受験漫画で「実技試験を楽しもうゼ!」と言ってるシーンがありますが、教員からの最初の(答えのない)クイズに答えるつもりで楽しんだ方がいい、と手羽も思っています。
その(答えのない)クイズをちゃんと答えるためには、問題文をちゃんと読まないとダメだよね?ということ。
 
 
以上、入学センターでは歌舞伎揚げブームが起きているので、

歌舞伎揚の元祖「天乃屋」さんで、スペシャル歌舞伎揚15枚セットを4箱取り寄せた手羽がお送りいたしました。
調べたら天乃屋さんの東京工場は武蔵村山にあるんですよ。ムサビからそんなに近い場所にあったとは。工場で店頭販売もやってるそうで、今度買いに行こう。
しかし歌舞伎揚げってなんでこんなにおいしいんだろうね。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。