【 #美大受験 2022 】倍率は全然信用できないって話2 #併願のトリック

2022年2月14日(月)

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美大受験生の疑問にお答えする恒例の「#美大受験」シリーズをお送りしてます。
#美大受験では、ムサビまたは関東美大の一般入試(AOや推薦入試じゃない入試)を具体例で使うことになりますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
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2022年度東京4美大一般選抜志願者数が言えるたった1つのアドバイス
倍率は全然信用できないって話 1 #募集定員と合格者数のトリック
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
 
今年は入試業務をやってたんで、念のために1月末から展覧会とか人が多いところに行くのは避けてました。昨日残ってた入試も終わり、これでようやく動ける・・。
 

昨日の「去年と今年の受験者数・倍率比較ほど信用できないものはない」という話の続きです。


理由3つ目が「併願」
まず「延べ志願者数」と「実志願者数」の違いについて説明します。
例えば、美子さんが●●学科と▲▲学科を併願し、なおかつ▲▲学科は一般方式と共通テスト方式を併用したとします。

併願などの全部の志願者数を足した数字を「総志願者数」「延べ志願者数」「見た目志願者数」と言い、通常、大学が公表するのはこの数字で、ここでは「3人」とカウントされます。

でも、美子さんは一人しかいないから「実志願者数」「実数」は、もちろん「1人」。
私立大学は延べ人数と実数の関係があるんで、「全部合格しても合格した時の選択肢は1学科だけ(美子さんは1人だけ)→他2学科(2人分)は『蹴る』」が発生する、と。
学内併願・併用がある以上、総志願者数だけでは何とも言えないし、詳しくは後で書くけど総志願者数はテクニックで比較的簡単に増やそうと思えば増やせます。
なので、大学入試関係者は総志願者数を参考にはするけど信用していないのです。

つまり、倍率とかデータとか去年の補欠繰り上げ数とか周りのこととか気にしても意味がなく、精神論ではなくほんとに自分はベストを尽くしてやるしかない。そのためにできる一番簡単で合理的な方法が「体調管理」であり、結局一番最初のアドバイスになっちゃうんですね。
 

ちなみにこの「延べ人数」「見た目志願者数」をうまくブランディング広報に使っているのが、ご存知近畿大学さん。

この表は去年2021年度一般選抜の志願者数ランキングです。
2022年度速報でも近畿大が9年連続で首位になりそうだと伝えられてます。
私大志願者数ランク速報 近畿大がV9へ 2位明治大・3位早稲田大 不景気で理工系が人気 法学部増加は公務員人気の高まり

最近の近大さんの大躍進はご存じのとおりだし、近畿大の広報戦略は目を見張るものがあり、先生や理事長から「近畿大の広報を見習え!」と言われた大学広報関係者も多いのではないでしょうか。
こういう状況だと、何書いても妬みにしかならないのだけど(笑)、「こういう見方もある」程度にこの「志願者数」について分析します。

ここで使われてる「志願者数」とはもちろん「延べ志願者数」のことで、メディアや一般社会で言われる志願者数はほぼこれです。
先ほど書いた通り学内併願・併用があるので、この数字では本当は何人受験希望してるのか全くわからず、これで何か分析しろっていうのは本当は無理。
 
でも、ようやく4年前あたりから学内併願・併用をカウントしない「実志願者数」に注目するメディアが現れました。
実志願者数ってかなり生々しい赤裸々なデータなので、公表してる大学はほとんどなかったんですが、週刊朝日さんが調べるようになったのです。

では、「実志願者ランキング」はどうなるかというと、こうなります。

実は近大の実志願者は2万5千人ぐらいしかなくて、実志願者数で見ると10位なんですよ(10位でもすごいけど)。
千葉工大さんなんて実志願者は2万人いません。

1度の試験で他学科や他学部を複数併願できたり、同じ学科を何度も受験出来たり、自動的に併願になっていたり、併願割引作ったり、と受験方法の仕組みで学内併願率を高めて「見た目志願者数」を高めてるんですね。

これがうっすら皆さんが感じてる「違和感」の原因です。
いろんな大学でやってる手法ですが、にしても近畿大の併願率537%、千葉工大553%ってすごすぎ。。

急激に総志願者が増えた時は、「人気が上がったから」よりも「共通テスト方式導入などで学内併願率を上げたから」等がほとんどで、「総志願者数は比較的簡単に増やすことができる」とはこういうことです。
この仕組み(仕掛け?)を先生でも知らない人が多く、先生から「近大を見習って志願者増やせ!」と言われても入試スタッフが「そうですね・・・で?」という反応を返しちゃうから、先生に「うちの広報課はやる気がない!」と怒られる流れは、最近の大学あるあるかもしれません(笑)
 

あ、戦略的に延べ志願者数を増やすことを否定してるわけじゃありません。
やっぱり総志願者数は気になるし、すぐにわかる数字だし、増えたら嬉しいし、「行列が行列を呼ぶ」「勝てば官軍」ブランディング広報で近畿大は実志願者ランキングも徐々に上がってるし、法人運営的には受験料収入と関係する延べ受験者数もすごく大事だし、併願率が高いのは「複数学科受験してでも入りたい大学(ブランド力がある大学)」とも言えるわけで。
また、一般的に公表されてる延べ志願者数、実志願者数は一般選抜の志願者の数なので、多くの大学で主流になってきてる総合型選抜の数字が反映されていません。人によっては「実志願者数も現状を表していない」とおっしゃるかもしれません。
大学広報って奥深いでしょ?


以上、大学広報に興味をお持ちになった方はぜひこちらをご購入ください、の手羽がお送りいたしました。

元NHKで追手門学院広報課長の谷ノ内識さんが書いた「大学広報を知りたくなったら読む本」です。
月刊広報会議に連載されてたのをまとめたもので、ありがたいことに手羽の名前も出てきます。やっと紹介できた(笑)
ちなみに手羽美★でも何度か紹介した、大学広報職員が主人公の「今ここにある危機とぼくの好感度について」はギャラクシー賞月間賞、文化庁芸術祭賞大賞も受賞し、最近再放送してましたね。


ムサビ入試も終わったし #美大受験2022はひと段落。次はムサビタマビ合格発表後ぐらいかな。
更新も1週間休みます。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。