美大受験生の疑問にお答えする恒例の「#美大受験」シリーズをお送りしてます。
#美大受験では、ムサビまたは関東美大の一般入試(AOや推薦入試じゃない入試)を具体例で使うことになりますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
■東京五美大2022入試カレンダーからわかるたった1つのアドバイス
■コロナ対応の入試変更点は重要な情報だから、マメにチェックしよう
■ムサビの実技試験で絶対に忘れちゃいけないものを1つ断言します
■美大実技試験でのたった1つのアドバイス
■美大入試で家を出る前に確認すべき情報と持ち物は?
■学科試験当日に聞いても役に立つアドバイスを1つだけ
■入試の朝、中央線が止まった。さてどうする?
■手羽のブルーピリオド-入試でこんなことが起きた-
■タマビ入試の雪対策を勝手に考えてみる
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
ムサビ入試は昨日の空デで無事に終了しました。(土曜にある入試が残ってるけど)
タマビ入試はまだまだ12日まで続きますが、今日はもう東京造形大の合格発表日です。
女子美術大学、東京造形大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学の東京4美大の一般選抜志願者数が発表されました。
■女子美術大学|2022年度 芸術学部一般選抜(A日程・共通テスト利用Ⅰ方式・Ⅱ方式)/短期大学部一般選抜(A日程)志願者数発表
■東京造形大学|2022年度一般選抜入学試験 志願者数(確定)
■武蔵野美術大学|2022年度 一般入学試験志願状況
■多摩美術大学|2022年度 美術学部一般選抜 志願状況
ただ、大学公表データにはムサビ以外昨年度の数が入ってないんで、誰もが気になる「で、去年と比べてどうなのよ?減ったの?増えたの?」がわからないんです。
なので心優しい手羽が勝手に作ってみました。え?余計なお世話?
1時間ぐらいで作った完全手羽オリジナルなので、数字が間違ってたら指摘してください>関係者
受験生は正確な数字を上記公式大学サイトで必ず確認してね。
あ、某美大の入試会議資料にこのデータがそのまま使われたこともあるようで、それは全然いいんだけど一応正確かどうかだけ確認してくださいな。
ちなみに 河合塾が発表したデータ
■主要私立大志願状況(集計データ)| 河合塾 Kei-Net
によると、主要私立大学97校の志願者数は前年度比102%とのことです。
では各大学のデータを軽く触れて、最後に全体的な傾向とそこから言えること、という流れで。
まず、女子美術大学。
全体で約20%増。
工芸はなんと2倍に志願者が伸びてます。
あ、タイトルで「確定しました」と書いてるけど、女子美さんはB日程があるんで厳密には確定ではありません。
次に、東京造形大学。
東京造形は全体で約30%増。
こちらはインダストリアルデザインと絵画が倍になってます。すごい。
続いて武蔵野美術大学 造形学部。
全体は5%増。
武蔵野美術大学 造形構想学部。
クリエイティブイノベーション学科が38%増。
下げ止まったかな?
最後に多摩美術大学。
タマビは全体で12%増。
ここにきて200人増加したグラフィックデザインは脅威ですね。
で、この志願者数一覧から言えることは
これだけじゃ何にもわからない。
です。
あ、ちゃんと最後まで聞いて(涙)
理由は3つあって、1つ目は「志願者比較は数年分(推移を)見てみないとわからない」。
昨年度がすんごい減ったから今年がすごく増えたように見えるだけ・・ってことがよくあります。
典型例を出すと、今年は東京造形大の絵画かな。
5年分の志願者数をピックアップしてみました。
さっきは「絵画が倍になった」と書きましたが、実は去年半減してるんですね。
半減した理由の一つは、2021入試から留学生選抜を別枠にした関係で、日本の高校の卒業生・卒業見込みの人だけになり、減ったように見えること。
もう一つは、去年は東京造形大の絵画実技試験日とタマビ油画の試験日がかぶってたこと。
最近の東京造形大・絵画は調子がいいので、もちろん「純粋に志願者が増えた」と考えられなくもないですが、「タマビとの日程カブリが解消されたので増えた」という解釈もできます。
女子美は去年プロダクトは63%減、工芸が61%減だったから、今年は200%増って数字になってたりするし、ムサビの芸文も今年は23%増になってるから「『13歳からのアート思考』のおかげ?」とつい分析したくなりますが、実は去年26%減ってるんですね。恐らく「より戻し」。
気になる方は数年分調べてみてください。
つまり作っといてなんですが、昨年度比較だけで「●●学科は人気が落ちた!」「上がった!」と語るのは全く意味がないってことなのです(笑)
2つ目は、「割合比較って微妙」
美大志願者数は一般大学に比べ母数が少ないので、数人減っただけで「何十%減」となることがあります。
例えば女子美の立体アートA日程志願者数は、去年6人だったのが今年4人になって、誤差の範囲の減少と言えなくない数字なんだけど、割合で見ると「34%減」とびっくりな数字になる、と。
定員が4人なので厳しい数字であることは間違いないけど、「A大学は10%減で、B大学は20%増えた!」という比較も意味がない行為。そもそも定員が違ったりするしね。
3つ目は、「あくまでもこれは『見た目志願者数』」ということ。
多くの受験生は他大学や他学科も併願してたり、一般方式・共通テスト方式併用をしてるので、私たちはこの数字を「延べ志願者数」「見た目志願者数」と呼んでます。すぐ手に入るデータだから見た目志願者数は「参考」にはするけど、これで一喜一憂する大学入試関係者はまずいません。
この「見た目志願者数」をうまく使ってるのが某近畿大学さんで・・・と細かくは後日書きますが、大学入試関係者が大事にしてるのは「実人数」や「どういう人が受験したか?」だったりします。
例えば、今年はクリエイティブイノベーション学科の志願者が増えましたが、内部的には造形学部併願者が増えてるだけだったらあまり喜べなくて、一般大学・理系併願者や高偏差値高校からの受験者割合が増えていたらようやくホっとできるようなもの。
多分今頃入試本部はその分析をやってる最中じゃないかと。
これらから言える今年最後の受験生へのアドバイスは、「志願者数・志願倍率なんて全然あてにならないから、気にせず、全力でやるだけ」です。
最後に。
以前はほとんどの大学が一般入試(一般選抜)志願者数を速報の形で入試前に公表してました。
これは私立大学の入試方識別入学者数の比率をグラフにしたものですが、今はこういう状況なんです。お父さん、お母さんはびっくりでしょ?
AO・推薦入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)で定員の7、8割を確保してる大学が多くを占めてる現状では、(特に地方大学では)「一般入試はオマケ。補充試験みたいなもん」な状態に完全になっており、どんどん速報を出さなくなってきました。
私立美大はもうほとんど出していません。
東京4美大の一般入試率がいまだに高いのは、単純に絵を描かせるだけでなく、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性」が見れるレベルの実技試験をやってるからだと言えます。(個人的にはもう少しムサビは総合型選抜比率を上げたらいいのにと思ってますが)
なので、いまだに試験前にちゃんと一般入試志願者数を公開してるこの東京4美大を褒めてほしいのです。
もう意地で出してるようなもんで(笑)、評価されないと来年から公表しなくなるかもしれません。
さっきは「参考レベルの数字」と言いましたが、美大全体の動向をすばやく手っ取り早く分析できるデータはこれしかないんですよ。
当たり前のものをずっと残すためにどうぞよろしくお願いいたします。
以上、雪が心配な手羽がお送りいたしました。
タマビ受験生は昨日のブログ、読んでくれたかな・・。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。