【 #美大受験2023】残念ながら不合格だった人へ。【最後は運と縁】

2023年3月24日(金)

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美大受験生の疑問にお答えする恒例の「#美大受験」シリーズをお送りしてます。

#美大受験では、ムサビまたは関東美大の一般選抜を具体例で使ってますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
東京五美大2023入試カレンダーからわかるたった1つのアドバイス
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補欠は例年何番まで繰り上げるのか?【タマビの過去5年補欠繰上数を調べてみた】
美大に合格した人の4つの悩みに答えます【現役でもついていけるか?】
美大に合格した人の4つの悩みに答えます【両方合格したけど、どっちに行こうか?】
美大に合格した人の4つの悩みに答えます【学科試験のみ入試で合格したけど入学して実技についていけるか?】【入学式の恰好は?】
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。

 
#美大受験2023ラストは、残念ながら不合格だった方への話を。

「自分の実力不足だった」と理解されてる方には「もっと勉強して来年頑張ろう!」と応援するしかないです。でも、東京藝大なりムサビなりタマビなりを目指して一生懸命頑張った自信が自分にあるのなら、確実に将来を動かせる可能性があります。
「受験を死ぬ気で頑張れた」という気持ちが今後の自分に必ず何らかの形で役立つはず。

 
難しいのが「第2志望の学科(大学)は受かったが、浪人して来年第1志望を目指すか、第2志望の大学に行くか」という方でしょう。
以下は「美大卒業生」としての手羽のかなり個人的な意見を書かせてもらいます。

それは2つ。
「選択肢が東京の私立美大であれば、浪人はせずに第2志望の学科(大学)に行くべき」
「最後は自分の運と縁を信じるしかない」

です。 

「自分が求めてるものは第1志望のあの学科しかないんだ!」「●●先生に教わりたいんだ!!」という方は頑張って来年チャレンジしましょう。そして「あの大学に行かないと絶対に後悔しそうだから」という強い意志があるのなら、そうするべきです。

ちなみに中国からの留学生は「原研哉先生に教わりたいからムサビの基礎デに入りたい!だから日本語を一生懸命勉強しました!」と情熱持ってアピールする人が多く、その姿を見てると「自分はムサビにどんな先生がいるか全然知らないで受験しちゃったなあ」と恥ずかしくなります・・・。


でも、第1志望の選択理由が
「周りの人があっちの方がいいって言ってたから」
「仲良しの友達があっちの学科を選んでるから」
「進路や予備校の先生があの学科に行けと言ってた」

ぐらいであれば・・・実は浪人して来年受験するほどの価値はないのかもしれません。

また、
「●●美大だったら●●が学べるって噂だから」
「●●って著名デザイナーを輩出してるって相談会で聞いたから」
「広報の人が『うちの大学は自由です』『少人数教育』と言ってた」
「就職率が高いってWEBに書いてあったから」

という理由だと、「それならムサビでもできるよ」「▲▲のデザインをしたのは誰か知ってる?あれはムサビOBの仕事だよ。君が知らないだけなんだよ」「大学はどこも自由で、それより何ができるか、自分が何をやるか、だよ」「少人数教育って、やれる規模も小さいってことだよ」「あのね、就職率ってね・・・」と手羽は数秒で言い返せるし、他美大広報さんもきっとそうです。そのレベルであればそんなに大きな違いはありませんから。
ちなみに条件に「選択肢が東京の私立美大であれば」とつけてるのは、東京の私立美大はどこもちゃんとしたポリシーと教育カリキュラムでやってるからです。「選択肢が地元の公立大」となると、やはり学費的に国公立大に通う利点があるので、こうは簡単に言えません。
 

 
浪人して合格した人に聞くと、ほとんどの人が「浪人時代が絵の描き方を一番真剣に学び、研究した時間だった」 「一度は浪人した方がいいよ」と答えます。
やっぱり1年以上デッサンなりをみっちり勉強をしてきた人の絵は明らかに違う。
美大希望者なら・・お金が許すのであれば一浪ぐらいは人生経験として悪くないとは手羽も思ってます。
 
でも、「美術予備校」というかなり特殊な世界ではなく、ちょっとでも早く世間(に近い環境)に出れるのなら・・つまり、大学に合格してるのなら、そっちを選ぶのも将来的にはいいことかもしれません。
今の美術予備校は入試用デッサンの訓練だけじゃなく、外とつながる活動もされてますが、キャリア教育・グローバル教育、大型施設やダイナミックな産学連携・地域連携活動等は大学じゃないとできません。
例えば、
滋賀県⻑浜市 空き家再⽣のナラティブデザイン|武蔵野美術大学

地方でナラティブデザインを実践することは、美術予備校・浪人ではちと無理。


「君は一浪すれば東京藝大にいける!タマビなんか行かずに一浪しろ!」と言ってくれる、今あなたがネ申のように慕っている予備校講師がいたとします。多くの場合は真剣にあなたの将来を考えてくれてる人のはずです。
でも、一方で
「浪人生がいないと安定した収入源が減る」
「推薦入試枠増加や美大の倍率が下がってる影響で受講生自体が激減してる」
「次年度広報のために『東京藝大合格者』の数が欲しい」

という考えの画塾・講師も少なからずあるし、 浪人して次の年に希望大学へ行けなくても、その不安だった1年間と予備校費用をその人が清算してくれるわけではありません。
「君は一浪すれば藝大にいけるはず!」と言ってくれる人と「浪人せずに現役で入った方がいい」と言ってくれる人。どちらを信用するかは・・・最後はその人との信頼関係かな。

東京藝大志望者・多浪生は石膏像をうまくデッサンできることがゴールと勘違いし、さらにそれを引きずってしまうことがよくあります。
そりゃうまく描けた方がいいに決まってるし、大手プロダクト企業さんから「『デザイン思考学びました』な口だけのやつや『オペレータ』ははいて捨てるほどいる。むしろ今欲しいのはちゃんと絵が描ける人」と言われたこともあります。
ただ、
プロダクトデザインの3年生が企業40社に近未来の製品やモビリティを提案|多摩美術大学

同じ年齢の人が企業40社の前でプレゼンをして、現場で揉まれてる現実もある。

どの選択が正しいのか、それは誰にもわかりません。

ご家庭の都合で浪人できないために他大学進学を選択するケースもあるかと思います。でも、あなたが気がついていない何かのきっかけを神様が作って待っているのかもしれない。
「私を落とした大学の先生め!私の実力を見るがいいわ!」ぐらいの気持ちの方が人生楽しいはずだし、たまたまあなたの絵にその時にいた先生が興味を持たなかった、ただそれだけのこと。 「あそこの先生は見る目がない」で「とりあえず」はいいはず。
どうしてもその大学に行きたいのなら「編入」「大学院」という手もありますしね。
 
どんな結果でもポジティブに捉えた方がうまくいくし、そうしないと気持ちとしてモチベーションが入らず、どの選択でも不満足な結果になりやすい。
どの選択が正しいかわからないけど、「最後は運と縁」というアドバイスは多分間違いじゃないと思ってます。
 

 
手羽の知り合いで、高校の時に「東京藝大やムサビタマビの油絵に行きたい」と高校の進路の先生に相談したら、「美大の油絵なんて卒業して就職先がないだろ。どうしても美大系に行きたいなら日本大学芸術学部のプロダクトデザインにしろ。日芸も日本大学という総合大学の一つなんだから、そっちの方がいいに決まってる。デザインだし」と言われ、「そんなもんか・・・」とそのまま日芸プロダクトだけ受験し入学した人がいます。
でも結局自分がやりたいことと全然違ってて、ムサビ油絵に1年から入り直しました。

ニチゲイがいけないってわけじゃなく(笑)、言いたいのは「高校の進路の先生・・・普通の大人の美大の知識なんてそんなもん」ということと「他の人の意見は参考にしてもいいけど、『最後は自分の意志で決めた』とはっきり言えないと入学してから後悔するよ」ということです。
今だと「東京の私立美大に入れるより、地元の大学に多くいれた方が高校の評価ポイントが高い」てな嘘みたいな本当の話があるし、地方の美術予備校に説明会で行くと「東京がいいって言わないでほしい。親が反対するので生徒は迷ってしまうし、東京の美大指導もできないし」と「じゃ、なんでうちを呼んだのよ・・」と思ったりすることも。
 
自分の意識次第で正解に近づけることができるだけで、どんな結果でもポジティブに捉えた方がうまくいくはずです。
今は自分の運と縁を信じましょ。


というわけで、#美大受験2023は終了!!

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。