【 #美大受験2023 】2023年度東京4美大一般選抜志願者数から言えるたった1つのアドバイス

2023年2月6日(月)

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美大受験生の疑問にお答えする恒例の「#美大受験」シリーズをお送りしてます。

#美大受験では、ムサビまたは関東美大の一般選抜を具体例で使ってますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
東京五美大2023入試カレンダーからわかるたった1つのアドバイス
ムサビの実技試験で絶対に忘れちゃいけないものを1つ断言します
美大実技試験直前での効果的なたった1つのアドバイス
美大入試で家を出る前に確認すべき情報と持ち物は?
学科試験前日に聞いても役に立つアドバイスを1つだけ
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
 

河合塾が2月3日現在の私立大志願状況を発表しています。
主要私立大志願状況(集計データ)| 河合塾 Kei-Net
主要私立大学99校の志願者数は前年度比99%で、芸術系は107%。

そして、女子美術大学、東京造形大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学の東京4美大の一般選抜志願者数もそろいました。
女子美術大学|2023 年度一般選抜(A 日程/共通テスト利用Ⅰ方式・Ⅱ方式)志願者数
東京造形大学|2023年度一般選抜入学試験 志願者数
武蔵野美術大学|2023年度 一般入学試験志願状況
多摩美術大学|2023年度 美術学部一般選抜 志願状況

ただ、大学公表データにはムサビ以外昨年度の数が入ってないんで、誰もが気になる「で、去年と比べてどうなのよ?減ったの?増えたの?」がわからないんです。

なので心優しい手羽が勝手に作ってみました。え?余計なお世話?
1時間ぐらいで作った完全手羽オリジナルなので、数字が間違ってたら指摘してください>関係者
受験生は正確な数字を上記公式大学サイトで必ず確認してね。


では各大学のデータを軽く触れて、最後に全体的な傾向とそこから言えること、という流れで。


まず、女子美術大学


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共創デザイン学科の全体入学定員は60名なので、恐らく推薦入試の方で定員は十分カバーしてるんじゃないかしら。
あ、タイトルで「確定しました」と書いてるけど、女子美さんはB日程があるんで厳密には確定ではありません。


次に、東京造形大学


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去年が過去10年で最多の志願者数だったけど、それを超えてます。絶好調。
  
 
続いて武蔵野美術大学 造形学部


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版画専攻から名前を変えたグラフィックアーツ専攻は、ご祝儀もあってか50%増という結果に。ほっ。
 
  
武蔵野美術大学 造形構想学部


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映像学科も調子いいですね。 
 

最後に多摩美術大学


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まだ志願者を伸ばすグラフィックデザイン、情報デザイン、統合デザインはすごい・・逆に演劇舞踏は今年はちょっと厳しい数字に・・。
 

今年の傾向は
●全体志願者はどの大学も増えてる
●特に洋画・油絵がどの大学も増えている
●逆に立体デザイン系や彫刻・立体アート系が減ってる

かな。
立体面白いんだけどなあ・・作るのが面倒なのかしら。
 

で、この志願者数一覧から言えることは

これだけじゃ何にもわからない。

です。
あ、ちゃんと最後まで聞いて(涙)

 
理由は3つあって、1つ目は「志願者比較は数年分(推移を)見てみないとわからない」
昨年度がすんごい減ったから今年がすごく増えたように見える、またはその逆の「より戻し」が発生しただけ・・ってことがよくあります。

典型例を出すと、今年は女子美の洋画かな。
昨年度と比較して217%と急増してるんだけど、6年分の志願者数をピックアップしてみました。

もちろん「女子美の洋画の人気が上がった」という解釈もできるし、今年は4美大ともに洋画・油絵志願者が増えてるので「ブルーピリオドによって油絵・洋画全体の認知度・希望者数が上がった」と考えられなくもないです。美術予備校の生徒も増えたそうなので。

ただ、美大業界的な分析は「ムサビ油絵学科の試験日程とこの2年かぶってたけど、今年は解消されたので増えた」が強いかも。黄色が日程がかぶってた年。
去年は東京造形大の絵画実技試験日とタマビ油画の試験日程カブリが解消されて、東京造形絵画も去年はほぼ倍増してたりします。

つまり作っといてなんですが、昨年度比較だけで「●●学科は人気が落ちた!」「上がった!」と語るのはあまり意味がないってことなのです。
ま、言い方を変えると、今年はムサビとタマビの彫刻一般方式志願者数がほぼ同じだったり、「東京4美大で同じ受験生を獲りあってる」といえなくもないのですが・・。
 
 
2つ目は、「割合比較って微妙」
美大志願者数は一般大学に比べ母数が少ないので、数人減っただけで「30%減」となることがあります。
例えば女子美の立体アートA日程志願者数は、去年4人だったのが今年6人になって、誤差の範囲の増加と言えなくない数字なんだけど、割合で見ると「50%増」な数字になる、と。1学科が250%とかになると、他が80%でも全体では100%を超えたりするので、「A大学は10%減で、B大学は20%増えた!A大学は落ち目やね」というのも意味がない行為。そもそも定員が違うしね。
 

3つ目は、「あくまでもこれは『見た目志願者数』」ということ。
多くの受験生は他大学や他学科も併願してたり、一般方式・共通テスト方式併用をしてるので、私たちはこの数字を「延べ志願者数」「見た目志願者数」と呼んでます。すぐ手に入るデータだから見た目志願者数は「参考」にはするけど、これで一喜一憂する大学入試関係者はまずいません。

この「見た目志願者数」をうまく使ってるのが某近畿大学さんで・・・と細かくは後日書きますが、大学入試関係者が大事にしてるのは「実人数」「どういう人が受験したか?」だったりします。
例えば、今年はムサビクリエイティブイノベーション学科(CI学科)の統一・一般方式志願者が減ったけど共通テスト方式が増えています。最初から一般大学志願者をターゲットにしてるCI学科からすると、造形学部併願者が減って、共通テスト方式だけを受けてる受験生が増えた方が嬉しかったりするんですね。
多分今頃入試本部はその分析をやってる最中じゃないかと。
 
これらから言える今年最後の受験生へのアドバイスは、「志願者数・志願倍率なんて全然あてにならないから、気にせず、全力でやるだけ」です。

 
最後に。
以前はほとんどの大学が一般入試(一般選抜)志願者数を速報の形で入試前に公表してました。
でも今はかなり限られた大学だけになってしまってます。
理由はこちらのグラフをご覧ください。


推薦+AO入試での入学者比率の推移です。
日本全体でみると51%ぐらいだけど、関西の美大はAO・推薦入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)の入学者比率は80%ぐらいじゃないかしら。
既に「一般選抜はオマケ。補充試験みたいなもん」な状態に完全になっているので、どんどん速報を出さなくなってきたというわけ。
 
東京4美大の一般選抜比率がいまだに高いのは、単純に絵を描かせるだけでなく、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性」が見れるレベルの実技試験をやってるからだと言えます。(個人的にはもう少しムサタマは総合型選抜比率を上げてもいいのに、とは思ってるけど)

なので、いまだに試験前にちゃんと一般入試志願者数を公開してるこの東京4美大を褒めてほしいのです。
もう意地で出してるようなもんで(笑)、評価されないと来年から公表しなくなるかもしれません。
さっきは「参考レベルの数字」と言いましたが、美大全体の動向をすばやく手っ取り早く分析できるデータはこれしかないんですよね。
当たり前のものをずっと残すためにどうぞよろしくお願いいたします。
 
 
以上、今日はタマビの学科試験日ですね、の手羽がお送りいたしました。
八王子はほんとに都心よりも3,4度気温が低いので、暖かい恰好で。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。