【 #美大受験アドバイス 】美大に合格した人の6つの悩みに答えます【第1志望は不合格、第2志望に合格した場合どうするか?】【国公立と私立、海外、地方と東京の比較】

2024年3月14日(木)

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美大受験生の疑問にお答えする恒例の「#美大受験アドバイス」シリーズをお送りしてます。
#美大受験アドバイスでは、ムサビまたは関東美大の一般選抜を具体例で使ってますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
東京五美大2024入試日程から言えるたった1つのアドバイス
美大入試で家を出る前に絶対確認したいことは3つ(時間と場所編)
美大入試で家を出る前に絶対確認したいことは3つ(持ち物と携行道具編)
ムサビの実技試験で絶対に忘れちゃいけないものを1つ断言します
美大実技試験直前でも確実に点数を上げられるたった1つのアドバイス
学科試験直前に聞いても役に立つアドバイスを1つだけ
雪や電車遅延で遅刻しそうな場合はどうすればいいのか?
雪の日のタマビ入試でやれること
入試では受験生も大学側もいろんなことが起きるんです
2024年度東京4美大一般選抜志願者数から言えるたった1つのアドバイス
国公立芸術系大学の美術学部志願者数を調べてみた【東京藝大は?京都芸大は?】
補欠は例年何番まで繰り上げるのか?【タマビの過去6年補欠繰上数を調べてみた】
美大に合格した人の6つの悩みに答えます【現役・学科試験のみ合格でもついていけるか?】【両方合格したらどっちに行くか?】
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。 

東京藝大の合格発表もいよいよですね。
  
合格された方の悩みで多い6つ
1.現役で受かったけど(学科試験のみで合格したけど)、ついていけるか?
2.両方合格したけど、どっちに行こうか?
3.第1志望は不合格、第2志望に合格した場合どうするか?
4.国公立と私立、海外、東京と地方、どこがいいか?
5.人とのコミュニケーションが苦手だけどやっていけるか?
6.入学式は何を着ていけばいいか?

をシリーズで答えています。
 


3.第1志望は不合格、第2志望に合格した場合どうするか?


  • 東京造形大学

以下は「美大卒業生」としての手羽のかなり個人的な意見を書かせてもらいます。

それは2つ。
「選択肢が東京の私立美大であれば、浪人はせずに第2志望の学科(大学)に行くべき」
「最後は自分の運と縁を信じるしかない」

です。 

「自分が求めてるものは第1志望のあの学科しかないんだ!」「●●先生に教わりたいんだ!!」という方は頑張って来年チャレンジしましょう。そして「あの大学に行かないと絶対に後悔しそうだから」という強い意志があるのなら、そうするべきです。
でも、第1志望の選択理由が
「周りの人があっちの方がいいって言ってたから」
「仲良しの友達があっちの学科を選んでるから」
「進路や予備校の先生があの学科に行けと言ってた」

ぐらいであれば・・・実は浪人して来年受験するほどの価値はないのかもしれません。

また、
「●●美大だったら●●が学べるって噂だから」
「●●って著名デザイナーを輩出してるって相談会で聞いたから」
「広報の人が『うちの大学は自由です』『少人数教育』と言ってた」
「就職率が高いってWEBに書いてあったから」

という理由だと、「それならムサビでもできるよ」「▲▲のデザインをしたのは誰か知ってる?あれはムサビOBの仕事だよ。君が知らないだけなんだよ」「大学はどこも自由で、それより何ができるか、自分が何をやるか、だよ」「少人数教育って、やれる規模も小さいってことだよ」「あのね、就職率ってね・・・」と手羽は数秒で言い返せるし、他美大広報さんもきっとそうです。
そのレベルであればそんなに大きな違いはありませんから。
ちなみに条件に「選択肢が東京の私立美大であれば」とつけてるのは、東京の私立美大はどこもちゃんとしたポリシーと教育カリキュラムでやってるからです。「選択肢が地元の公立大」となると、やはり学費的に国公立大に通う利点があるので、こうは簡単に言えません。
 
浪人して合格した人に聞くと、ほとんどの人が「浪人時代が絵の描き方を一番真剣に学び、研究した時間だった」「一度は浪人した方がいいよ」と答えます。
やっぱり1年以上デッサンなりをみっちり勉強をしてきた人の絵は明らかに違うし、美大希望者なら・・お金が許すのであれば一浪ぐらいは人生経験として悪くないとは手羽も思ってます。
でも、「美術予備校」というかなり特殊な世界ではなく、ちょっとでも早く世間(に近い環境)に出れるのなら・・つまり、大学に合格してるのなら、そっちを選ぶのも将来的にはいいことかもしれません。

「君は一浪すれば東京藝大にいける!タマビなんか行かずに一浪しろ!」と言ってくれる、今あなたがネ申のように慕っている予備校講師がいたとします。多くの場合は真剣にあなたの将来を考えてくれてる人のはずです。
でも、一方で
「浪人生がいないと安定した収入源が減る」
「推薦入試枠増加や美大の倍率が下がってる影響で受講生自体が激減してる」
「次年度広報のために『東京藝大合格者』の数が欲しい」
という考えの画塾・講師も少なからずあるし、浪人して次の年に希望大学へ行けなくても、その不安だった1年間と予備校費用をその人が清算してくれるわけではありません。
「君は一浪すれば藝大にいけるはず!」と言ってくれる人と「浪人せずに現役で入った方がいい」と言ってくれる人。どちらを信用するかは・・・最後はその人との信頼関係かな。

どの選択が正しいのか、それは誰にもわかりません。

ご家庭の都合で浪人できないために他大学進学を選択するケースもあるかと思います。でも、あなたが気がついていない何かのきっかけを神様が作って待っているのかもしれない。
「私を落とした大学の先生め!私の実力を見るがいいわ!」ぐらいの気持ちの方が人生楽しいはずだし、たまたまあなたの絵にその時にいた先生が興味を持たなかった、ただそれだけのこと。 「あそこの先生は見る目がない」で「とりあえず」はいいはず。
どうしてもその大学に行きたいのなら「編入」「大学院」という手もありますしね。
 
どんな結果でもポジティブに捉えた方がうまくいくし、そうしないと気持ちとしてモチベーションが入らず、どの選択でも不満足な結果になりやすい。
どの選択が正しいかわからないけど、「最後は運と縁」というアドバイスは多分間違いじゃないと思ってます。
 

 
4.国公立と私立、海外、東京と地方、どこがいいか?


  • 東京藝術大学

この比較の場合、多くは「学費の違い」が大きいと思います。
子供が突然「オレ、私立美大行くからお金よろしく」と言ってきて、簡単に「OK!パっと学費払っちゃうぜ!」と言える親は少ないはず・・普段は「美大最高!」と語ってる手羽でさえそうです・・。
 
国公立と比較した場合の私立美大の強みは人数と施設かな。
人数が多いということは味方もライバルも先生も多いということで、「協力しつつ研鑽する」「いろんな種類のダイナミックな活動を経験できる」って意味では大人数ってのは悪くはないんです。
また国公立5芸大を全部見てきましたが、やはり学ぶ環境(設備・施設)は私立美大の方が圧倒的によかったです。

国公立と私立美大の比較だとこういう話があります。
ムサビから東京藝大彫刻大学院に行った学生さんとこんな会話がしたことがありまして。
===
手羽「藝大どうよ?バリバリ作ってるんでしょ?」
藝大生「バリバリというか、工房が早く閉まっちゃうんで・・」
手羽「へー、イメージとしては藝大とかは24時間作業できる感じだけど」
藝大生「建築系とかはそうかもしれませんが、工房は夜使えないし土曜は作業ができないんです。公立なんで」
手羽「え。工房の使用時間的にはムサビの時より減ってるわけ?機材は?」
藝大生「ムサビの方が全然よかったですね」
手羽「ちょっと待ってよ。制作時間が足りない分どうしてるの?」
藝大生「実は外に共同アトリエ借りて制作してます・・」
手羽「・・それじゃ学費の安い藝大に行った意味がなくね?」
藝大生「まあ、それは・・」
===

国公立芸術系大学は私立に比べて学費が安いけど、「施設を使いたおす」「学生支援サービスの充実度」という点では私立美大の方が分があります。文科省からの財政的締め付けがどんどん厳しくなってるので、どの国公立芸術大学を見に行っても「大変そうだなあ・・」と手羽は感じてたりするわけですが。
 
 
海外との比較だと、「日本の美大の学費を出すぐらいなら海外に留学した方がいい」と昔はよく語られてましたが、海外の美大の学費を調べてもらうとわかるけど、今はとんでもないことになってます。奨学金制度もありますが、ちゃんと調べた方がいいですよ。
また「言語の壁」と「美術知識・経験の壁」の2つを抱えての留学はかなり大変なので、いろんな人の話を聞く限り、日本の美大で「美術知識・経験」を習得し、1つ壁を減らして、大学院から海外に行った方が自分のためにもなるんじゃないかと思ってます。
 

最後に「東京と地方、どっちの大学に行くべきか?」問題。
結論は「それぞれいいところも悪いところもある」「どこが良い学び場かは自分の意識次第で変わる」だと思ってますが、あえて書くなら「(金銭的な比較でなければ)無理してでも若いうちに東京で勉強した方がいいよ」と手羽は思ってます。

あ。最初に断っておくと、手羽は田舎が嫌いで嫌いで東京に出てきた人間なので、これに関してはすごく偏った考えを持っています。話半分ぐらいで読んでもらったらちょうどいいかも。
今どきこの質問に対してこんなにはっきりと「東京だ」と答える人もいないはずなので(笑)


まず、地方の親御さんが一番心配するのは東京の治安でしょう。
そういう人はここを見てください。
全国治安ワーストランキング2022|HOME ALSOK研究所
東京は人口が多いので「件数」だとどうしても多くなるし、メディアでも東京のニュースが扱われがちなんで東京は治安が悪そうに見えます。

これは岡山・広島説明会に作ったスライドなのであれですが、住宅侵入盗の検挙率・住宅侵入盗遭遇率だと東京はかなり良かったりするんです。
決して「すごく安心・安全なので全く心配いりません」とは言えないし、他のデータは東京も悪かったりするんだけど、こういう見方もあります、と。
 
「東京の人は冷たい」とよく言われますが、東京は外から来ることを前提にコミュニティが作られているので、「人に冷たい」ではなく「相手を尊重してる」だし、「多様性を受け入れる」という意味では東京の方が地方より親切心が高いと自分の経験値から思ってます。
「多様性」「寛容」って「身内にする」ではなく「他人を他人として受け入れる」ことであり、「よそ者を排除せず、多様な文化や価値観を受け入れる寛容性」が高いのが東京で、クリエイティブやイノベーションには必要な要素なんですよね。


「東京にどれくらいクリエイティブな人がいるのか」がわかるデータを2つ。

芸術家の数だと桁違いで東京が多い。
そう考えると、子供の同級生の親にも普通にデザイナーや芸術家やタレントさんがいます。

クリエイティブ系事業所の数も圧倒的で、これは「就職先がある」ということよりも、それだけ「デザイン等を必要としてる人」「見せる人や場所」「それを受け入れる土壌」「ライバル」「仲間」があることを意味します。
 
アートやデザインは、企画(発想)・調査・実践(制作)・発表・フィードバックが必要です。
「のんびりした環境で1人で作品作りたい」「地方でその文化を勉強したい」てことならわかるんだけど、「たくさんいろんな種類の人、今まで会ったことがないような人と直接関係を持つ」「クリエイティブな土壌がある場」「様々な場やシーンを調査し発表する、見てもらう(いわゆる刺激)」を求めるなら・・他の学びはわかりませんが、アートやデザインを学ぶのであれば、それが金銭的な比較でなければ「無理してでも若いうちに東京で勉強した方がいい」と思ってます。

続くっ!
 
 
以上、くどいけど、今日の記事はかなり偏った都合がいいデータしか使ってないので、話3分の1ぐらいで読んでね、の手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。