【 #美大受験アドバイス 】美大に合格した人の6つの悩みに答えます【現役・学科試験のみ合格でもついていけるか?】【両方合格したらどっちに行くか?】

2024年3月6日(水)

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美大受験生の疑問にお答えする恒例の「#美大受験アドバイス」シリーズをお送りしてます。
#美大受験アドバイスでは、ムサビまたは関東美大の一般選抜を具体例で使ってますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
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*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。 
 

タマビムサビの補欠繰上も始まり、いろいろな選択を迫られている頃かもしれません。
合格された方の悩みで多いのはこの6つじゃないかな。
1.現役で受かったけど(学科試験のみで合格したけど)、ついていけるか?
2.両方合格したけど、どっちに行こうか?
3.第1志望は不合格、第2志望に合格した場合どうするか?
4.国公立と私立、東京と地方、海外、どこがいいか?
5.人とのコミュニケーションが苦手だけどやっていけるか?
6.入学式は何を着ていけばいいか?

 
それぞれにあくまでも手羽の個人的な考えとして書いていきます。


1.現役で受かったけど(学科試験のみで合格したけど)、ついていけるだろうか?


  • 多摩美術大学

手羽も現役でムサビ彫刻学科に入学しましたが、当時は浪人が当たり前、同級生に2浪・3浪がゴロゴロいる時代で、現役生は30人中5人ぐらいしかいませんでした。
しかも、手羽は油絵学科が第1希望だったから彫刻の勉強は全くしてなかったんです。ぶっちゃけ入学するまで水粘土で作品を作ったことも触ったこともなく。むしろどっちかといえば立体は興味がないというか苦手な方で、学科の点数と、たまたまその年からスタートしたモデルデッサンで受かったような感じで。
なので最初はかなり苦労しました。でもなんとかやれるもんで、3ヶ月もすれば現役も浪人も関係なくなるし、3年の時には彫刻の面白さがわかり、卒業する時には菊練りができるようになったし、溶接資格も取りました。

・・・というか、そもそも「現役で入ってもやっていけるか?」って悩みは、美大マンガの見すぎですね(笑)
まずはこちらのデータをご覧ください。
タマビ、東京造形大・東北芸工大・ムサビの合格者の現役比率です。

合格者データで見ると、タマビ・ムサビは6割以上、東京造形大は7割、東北芸工大にいたっては8割以上が現役生なんです。
なおかつこれは一般選抜のデータであって、推薦入試はほぼ100%現役生だから、全体でみるともっと現役生の割合が高くなるはず。
 
次に東京藝大。
なぜか今年は合格者現役率が公開されてないので(どこかにあったら教えて)、

2022年度の東京藝大美術学部の志願者/入学者の卒業年度のデータです。
 
よく「東京藝大に合格するには4浪、5浪当たり前」と言われてますが、現役と1浪を足すと実は5割を超えるんです。2浪も入れれば7割超えます。あの東京藝大でも。
もちろん学科で倍率は全然違いますが(油画は20倍超えた)、数字上では東京藝大入るのに(東京藝大のブランドを得るのに)「4浪5浪は当たり前」はもう過去の話なんですね。こういうデータを見ずにそれが現状のようにいまだに語られているだけ。
 
これは芸術系大学独特の判断基準とも言えますが、採点者は「実技力はまだ低いけど、この人は”何か”持ってる(伸びしろがある)」と高評価にすることがよくあるんです。一般大学の入試では絶対にありえない話(笑)
基礎実技力部分はどの大学もそんなに評価は変わらないと思うけど、教員が感じる「何か」の違いが各大学・各学科の違いでもあるわけで、「何故実技がこなれた浪人生じゃなく、現役のあなたが高評価だったか」を考えてほしいな、と。
 
学科試験のみで合格した人も同様で、本人が実技力が足りないと感じれば頑張るしかないのですが、よく相談会では「基礎デザイン学科は50年前から学科試験のみ入試をやってます。問題があればとっくにやめてますって」と言ってます。
今のデザイナーや作家に求められてる「フラットに物事を考える力」は実は現役生や学科試験で合格された人の方が高いかもしれません。
ちなみに最近は総合型や学科試験のみ合格で実技力の不安な方が美術予備校の春期講習などに通うケースもボチボチでてきてます。デッサンで得られる観察力や構図力は無いよりあった方がいいので、どうしても不安な人はそういう手もあるということで。
 

 
2.両方合格したけど、どっちに行こうか?


  • 武蔵野美術大学

なんともうらやましい悩みですが、「貴方の価値観次第」としか言いようがなく。
雪が降った時にスキーをしたいなら多摩美術大学ですが、スケートしたいなら武蔵野美術大学だし、山登りしたいならタマビだしマラソンしたいならムサビをお勧めします。・・冗談です。

いろいろ調べた上で受けた大学なら、最後の最後は親や友達や講師やネットの意見じゃなく、「オープンキャンパスでこっちの大学の雰囲気がなんとなく合いそうだったから」「五美大展で好きな作品が多かったから」「家から近いから」とか、自分とのフィーリングで決めていいと思ってます。
「自分の中のモチベーション」に相談した方がよく、最後は自分の運や縁を信じるしかありません。「ちゃんと情報を調べろや!」と普段は言ってますが、最後の最後はそんなもんです。はい。

その正解を知ってる人は存在しないし、そもそも答えがありません。
「ムサビは早稲田っぽい、タマビは慶応っぽい」と言う人もいれば「いや、ムサビが慶応ぽくて、タマビが早稲田」てな人もいます。「あっちの大学にしろ」と言う人の情報もどこかから聞いた「噂」がベースだったりするし、随分前の情報やイメージだったり、利害関係もあったりするわけで。
手羽の情報だってもちろんそうです。

 
ただ、ひとつだけ忠告するなら。
大学選択理由が「親友の●●さんが行くから私も」「大嫌いな▲▲さんが行くから嫌」はかなり危険です。なぜなら大学に入るといろんなヒトとデキゴトに出会うので、興味をもつ対象や考え方自体お互いに変わる・・というか大学に入って変わらない方が変なんですよ。
 
例をお二人。
No.65 竹内 誠[(公社)日本サインデザイン協会会長/(株)竹内デザイン代表取締役]|msb! 武蔵野美術大学校友会

竹内さんはオーディオが好きだったから最初工学部を目指してましたが、浪人中にムサビの人が楽しそうにしてたんでムサビを考えるようになり、なりゆきで建築学科に入学。
でも今となっては六本木ヒルズ、赤坂サカス、東急電鉄サインマニュアル、渋谷(駅・街)サインプロジェクトなどを担当されてて、日本サインデザイン協会会長でもあります。
 

吉田さんは彫刻学科に入学し、第51回ちばてつや賞佳作、9th SICF準グランプリなども受賞されてますが、大学で民俗学者・宮本常一先生の教え子でもある相沢韶男先生、文化人類学者の関野吉晴先生に出会ったことで「暮らしに近いアート文化」に興味を持つようになり、今は北海道小樽に拠点を移し、箒職人をされてます。
 
竹内さんも吉田さんも入学前に今の仕事をほんの少しでもイメージしてたかっていうとそれはありえなくて、興味も仲間も住処も全然変わる。なぜなら専門学校は仕事を学ぶ場だけど、大学は生き方を学ぶ場だから、とでもいいますか。


例えば、ムサビでは今日こんなイベントが開催されます。
武蔵野美術大学実験区構想トーク 〜美大にしかできない創業の場をつくるには?〜 #00 丸山 幸伸/武蔵野美術大学教授

●日時:2024年3月6日(水)19:00〜20:30
●場所:オンライン配信
●参加費:無料
*事前申込制

2024年春からスタートする美大生のための創業支援プログラムで、今回はムサビ生はもちろんのこと、プログラムに興味のある他美大生、美大生との事業共創に関心のある企業や自治体、クリエイター向けの創業支援を実施している方など、どんな方でも参加可能です。
就職だけが「生き方」ではないってことですね。
 
3ヶ月もたてば大親友だった友達が違う友達と行動するかもしれないし、画塾時代は嫌いだったけど毎日付き合っていくうちに「ああ。こういうやつだったんだ」と理解するかもしれない。そういうケースの方が生涯の親友になる可能性が高かったりします。
これは「彼氏が●●大学に行くから私も」も同じ。大学に行けばきっともっと素敵な恋愛に出会いますよ(責任は一切取りませんが)


続く。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。