美大受験生の疑問にお答えする恒例の「#美大受験アドバイス」シリーズをお送りしてます。
#美大受験アドバイスでは、ムサビまたは関東美大の一般選抜を具体例で使ってますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
■東京五美大2024入試日程から言えるたった1つのアドバイス
■美大入試で家を出る前に絶対確認したいことは3つ(時間と場所編)
■美大入試で家を出る前に絶対確認したいことは3つ(持ち物と携行道具編)
■ムサビの実技試験で絶対に忘れちゃいけないものを1つ断言します
■美大実技試験直前でも確実に点数を上げられるたった1つのアドバイス
■学科試験直前に聞いても役に立つアドバイスを1つだけ
■雪や電車遅延で遅刻しそうな場合はどうすればいいのか?
■雪の日のタマビ入試でやれること
■入試では受験生も大学側もいろんなことが起きるんです
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
河合塾が2月2日現在の私立大志願状況を発表しています。
■主要私立大志願状況(集計データ)| 河合塾 Kei-Net
主要私立大学64校の志願者数は前年度比100%で、芸術系は113%とのこと。
そして、昨日タマビさんが発表したので、東京4美大の2024年度一般選抜志願者数もそろいました。
■女子美術大学|2024年度一般選抜(A 日程/共通テスト利用Ⅰ方式・Ⅱ方式)志願者数
■東京造形大学|2024年度一般選抜入学試験 志願者数(確定)
■武蔵野美術大学|2024年度 一般入学試験志願状況
■多摩美術大学|2024年度 美術学部一般選抜 志願状況
ただ、大学公表データにはムサビ以外昨年度の数が入ってないんで、誰もが気になる「で、去年と比べてどうなのよ?減ったの?増えたの?」がわからないんです。
なので心優しい手羽が勝手に作ってみました。え?余計なお世話?
1時間ぐらいで作った完全手羽オリジナルなので、数字が間違ってたら指摘してください>関係者
受験生は正確な数字を上記公式大学サイトで必ず確認してね。
まず、女子美術大学。
次に、東京造形大学。
続いて武蔵野美術大学 造形学部。
武蔵野美術大学 造形構想学部。
最後に多摩美術大学。
今年の傾向は
●ここ数年は洋画・油絵が好調
●最近減少傾向だった立体デザイン系が持ち直した
かな。
で、この志願者数一覧から言えることは
これだけじゃ何にもわからない
です。
あ、ちゃんと最後まで聞いて(涙)
理由は4つあって、1つ目は「志願者比較は数年分(推移を)見てみないとわからない」。
昨年度がすんごい減ったから今年がすごく増えたように見える、またはその逆の「より戻し」が発生しただけ・・ってことがよくあります。
典型例がムサビの映像学科。
今年の映像学科は18%減で、ムサビ志願者数はほとんどの学科で前年よりも増えてるから、いつもよりも減少率が目立ち、「映像学科、大丈夫か?」と思ってしまうんだけど、過去6年調べてみると、
面白いことに前年増えると翌年は減り、その翌年はまた増える、をずっと繰り返していて、「去年が大きく増えたから大きく減ったように見える。実は2年前の数字に戻っただけ」ともいえるんです。これが「より戻し」。楽観視はしてませんが。
つまり作っといてなんですが、昨年度比較だけで「●●学科は人気が落ちた!」「上がった!」と語るのはあまり意味がないってことなのです。
2つ目は、「割合比較って微妙」。
美大志願者数は一般大学に比べ母数が少ないので、数人減っただけで「30%減」等となることがあります。女子美さんなんかは6人増えたら「185%!」てな数字になったりするんですよ。
1学科が250%とかになれば他が80%でも全体では100%を超えたりするので、「A大学は全体10%減で、B大学は20%増えた!A大学は落ち目やね」というのも意味がない行為。そもそも定員が違うしね。
3つ目は、「あくまでもこれは『見た目志願者数』」ということ。
多くの受験生は他学科や他大学も併願してたり、一般方式・共通テスト方式を併用をしてるので、私たちはこの数字を「延べ志願者数」「見た目志願者数」と呼んでます。併願率が増えたから見た目志願者が増えたように見えるだけ、なんてことはよくあること。
すぐ手に入るデータだから見た目志願者数は「参考」にはするけど、これで一喜一憂する大学入試関係者はまずいません。
この「見た目志願者数」をうまく使ってるのが某近畿大学さんで・・・と細かくは後日書きますが、大学入試関係者が大事にしてるのは「実人数」や「どういう人が受験したか?」だったりします。
例えば、ムサビのクリエイティブイノベーション学科(CI学科)は昨年度比101%という結果ですが、いわゆる「一般大学志願者」をターゲットにしてるCI学科からすると、造形学部併願者(美大志願者)が増えてたらあまり意味がなく、むしろ多少「見た目志願者」が減っても、CI学科だけの志願者や想定する偏差値帯の受験生が増えてた方が嬉しかったりするんですね。
で最後4つ目が、「倍率は全くあてにならない」。
他方式・他学科・他大学を併願・併用してる人がほとんどだから、最終的には必ずみんな「どれか1つ」を選ぶわけだし、各大学が現在出しているのは「定員」であって「合格発表数」ではありません。辞退者を見込んで定員よりも多く合格者を発表することが多いんです。
また、共通テスト方式をほとんどの人が一般方式を併用してるけど、共通テスト方式は定員自体が少ないから、毎年すんごい倍率に見えちゃうんですよね。
「え。●●学科の倍率が25倍?!・・そんなの無理やん・・」と心配する必要はなく、実質倍率はグっと下がります。
なので手羽の表には倍率を載せてないんです。ここだけ一人歩きしちゃう可能性があるんで。
てなわけで、これらから言えるアドバイスが、「志願者数・志願倍率なんて全然あてにならないから、気にせず、全力でやるだけ」というわけなのです。
最後に。
以前はほとんどの大学が一般選抜の志願者数を速報の形で入試前に公表してました。
でも今はかなり限られた大学だけになってしまってます。
理由はこちらのグラフをご覧ください。
選別方式別の入学者数推移です。
全国でみると一般選抜の割合は41%ぐらいだけど、関西の美大は推薦入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)で80%以上取っており、「一般選抜はオマケ。補充試験みたいなもん」な状態に完全になってるんで、どんどん速報を出さなくなってきちゃったんです。今も出してるのは公立の美大ぐらいじゃないかしら。
なので、いまだに試験前にちゃんと一般入試志願者数を公開してるこの東京4美大を褒めてほしいのです。
もう意地で出してるようなもんで(笑)、評価されないと来年から公表しなくなるかもしれません。
さっきは「参考レベルの数字」と言いましたが、美大全体の動向をすばやく手っ取り早く分析できるデータはこれしかないんですよね。
当たり前のものをずっと残すためにどうぞよろしくお願いいたします。
以上、雪の日のムサビ正門がSNSで話題になりましたが、
学生入試バイトくんが作ったこっちの方が地味にすごいと思っている手羽がお送りいたしました。
宙に浮いたMとAの作りもそうだけど、キャラクターじゃなく大学略称を作ってて、とってもムサビ愛を感じるんです。
学生さんが何気なく雪で大学略称を作る大学って他にあります?
ムサビ入試も終わったし、ずっと更新続けてたので、しばらくこのシリーズはお休みして、更新頻度も落とします。次は国公立の志願者がわかったあたりかな。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。