【美大4年生必見】手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 会期中編1「お客さんとの関係」

2022年12月28日(水)

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卒展出品経験と教務課時代の卒展担当経験、あちこちの美大卒展を見る趣味から、教育研究効果・美術的評価ではない視点の
「卒展ではこういう部分を気を付けるといいよ」
「卒業制作で陥りやすい点」

等テクニカルなアドバイスをまとめました。多分一番欲しているのは精神論ではなくこういう話なのかな、と。
ムサビ生向きな内容になってますが、他美大の方、また卒展以外でこれから展示を考えてる人、来年卒展の方にも参考になると思います。

これまでの話はこちら。
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 準備編1「卒業制作展は卒業記念制作展ではない」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 準備編2「DMやチラシはよーく校正しよう」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 準備編3「先生や友達の意見を聞くかどうか」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 場所決め編1「共有スペースや屋外って難しい」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 場所決め編2「展示室以外の展示」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 制作編1「大きさ・長さ・広さ・高さ・風・時間の重さ」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 制作編2「小屋モノとボリュームもの」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 制作編3「道具と作業の法則」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 制作編4「作るということ」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 会場設営・準備編「ぐねぐねコードとコロナ対応」
 

 
シリーズ最終章は会期中のアドバイスです。
30.電気を使う作品は電源入れて初めて成立する

ビデオとかPCとか電気を使う作品はちゃんと展示の時は電源いれましょ、ってこと。
すんごく当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、それが卒展でできてない作者が多く・・・。

展示室に入ると、電源の入ってないプロジェクタとパソコンだけポツンと置かれてて、「???プロジェクターだけ置いたインスタレーション?」みたいな状態ほどみっともないものはなく。そういうメディア・発表方法を選んだ以上、「毎朝電源を入れてスタートボタンを押す」のも卒展なんですよね。
 
観客として理解できないのが、1部屋を複数人使ってて、1人だけ電源が入ってないケース。
監視の学生さんに「なんでアレは電源入ってないの?」と聞くと、「●●ちゃん、寝坊してて(笑)」と返ってくる。「電源入れてあげれば?」と聞くと「スタートの仕方がわからないんで」「壊したら怒られるんで」「それは作者の責任なんで」と。

確かに作品を見てもらえないのは作者の責任だけど、これまで書いてきたように隣接した作品の影響って大きく、部屋の中に一つでも電源がついてない作品があると、その部屋全体悪い印象になるんです。
その子がいつも遅刻ばかりする子だと「作者の責任です」と周りが言いたくなる気持ちもわかるんだけど、「個の卒業制作」と「合同の卒業制作展」は違って、自分のためにも「教室でのグループ展」という意識でやった方がいいですよ。
ちなみに手羽は卒展で教室に1,2個電気がついてない作品があったら、その部屋は丸々見ないようにしています。それが気にならない作者たちが自分の作品に気を使えるとは思えないので。
このやり方で卒展見ても、結果的にほとんどの優秀賞を毎年チェックできちゃうのが何よりの証拠です。
 

 
31.写真はちゃんと撮っておこう

写真がうまい人にスマホじゃなく「ちゃんとしたカメラ」で撮っておいてもらった方がいいですよ(お金出してでも)

手羽ね。ほんと卒展の時は精神状態がアレで、作品が気に入らなかったのもあるんだけど写真をほとんど撮らなかったんです。卒展後すぐに全部廃棄しちゃったし、「過去は振り返らん!それがかっこいい!」と中2病というか美術系が陥りやすいファインアート病というか、ほんとアレだったの・・。

でも今となっては後悔してます。
卒業制作って「自分はなんなのか?」を一番考える時期でもあるから、今は作品が気に入らなくても、自分の人生の記録としてちゃんとした写真を残しておいた方がいいっす。「内定もらってるからもうポートフォリオ用の写真はいらない」って人も数年後必要になるかもしれないしね(ぼそっ) 
なので展示中に撮影をしてて「なによ。鑑賞のジャマでしょ!」とお客さんは感じるかもしれませんが、講評終わったばかりなもんで展示中に作者さんたちは撮影するしかないんです。
すいませんが優しい心でご協力お願いいたします。
 

 
32.開催時間中の作業はみっともない

会期中も作業してる人がチラホラいるのがムサビの卒展で。
言い訳させてもらうと、ムサビの卒展は「完成してる作品を展示する」ではなく、もともとは「卒制講評するために展示した作品を一般公開してる」で、会期中に講評をやる学科も多いです。
なので「間に合わなかった」は問題外ですが、講評直後に指摘された部分を修正することがあり、これはある程度許してほしいと思ってます。

ただ、個室ならともかく、合同展覧会場で「開催時間中に展示場でお店広げて作業してる風景」ってのは学生さんが思っている以上に見栄えがいいものではなく。
せめて修正作業するのは人が少ない時や会期時間外とかにやった方がいいです。


 
33.お客さんに話しかけよう
ある方から「タマビの卒展では受付や監視の学生さんに挨拶されるけど、ムサビの卒展では挨拶されない」と言われたことがあります。
手羽はムサビ卒展に慣れちゃってるからか、「念のために学生さんがスタンバッテいる」ぐらいの認識なので別に挨拶されなくても全然平気だけど、普通に考えればお客さんが部屋に来たら「こんにちは」の一言ぐらいは言った方がいいかもしれませんね。
下は4年前のムサビ卒展で工デの部屋の受付に置かれてた学生同士の伝言メモです。

人が入ってきても顔をあげずノートPCやスマホをずっと触るのは印象としてあまりよくないのでやめようね。

でも、「話しかけよう」と書いたけど、これは意見が分かれるところですが、作者が「作品を説明させてもらっていいですか?」と近寄ってくるのが手羽はちと苦手で・・。
自分のペースで作品を見たいし、興味を持てばこちらから聞くし、そもそもそこにあるパネルや作品で説明できてない研究発表ってなんなの、と思ってしまうんです。

ただ、これは人それぞれで、「普通の展覧会じゃなく卒業研究・制作発表なんだから、自分の研究内容をちゃんと伝えるべき」という意見ももっともだし、説明を聞いて「へーー、そんな意味があったんだ!すごい!」と感じることもあります。
見た目だけじゃわかりにくい場合は、作品パネル頭に2行ぐらいの作品概要(キャチコピーみたいなもの)を書いておくといいかも。そこから会話が生まれるはず。
 

 
34.ネットは便利だけど怖いもの
ここ最近は卒業制作を作者がSNSで宣伝したり、お客さんがバズらせてくれることが多いです。
去年のムサビ卒展だと、例えばKIMUKIMUくん

や、るぅ1mmさんは卒展前からうファンがついてる状態でした。
あ、るぅ1mmさんにはムサビのことを漫画で描いてもらいましたよ。
卒業作家たちが語る武蔵野美術大学の魅力:第3回 るぅ1mm|美術手帖

「すごい時代になったなあ」と感じる一方、「昔よりも周りの目を気にしなくちゃいけなくて、かわいそうだなあ」とも思ってます。
手羽の頃は友達と教授以外に「君の作品はダメだ」と言われることはなかった(情報が入ってこなかった)んで「オレってまさか天才?!」と勘違いしたまま卒業することができたけど、今はネットでいろいろ言われちゃうんですよね。
作品の「好き嫌い」は人それぞれでそれを語るのは自由だから、ネットでの評価を参考にするか無視するかは自分次第。でも卒展時期はくどいようですが気が付かないうちに精神が不安定になってるんで、エゴサーチして自分を追い詰める必要はないと思ってます。

また、「文脈を読まれずに叩かれるケースも想定しないといけない」というめんどくささも出てきてます。
下は3年前のムサビ卒展で見かけたキャプションです。

作品を見ればオマージュであることは一目瞭然だし、解説文にもそう書いてあるけど、行間や文脈どころか説明文章も読まれずに「パクリだ!」とネットで炎上しちゃう可能性が今はあって。
昔は「わからない方が悪い」だったけど「誰でもすぐにわかるように作ってない方が悪い」の世界になっています。それがいいことなのか悪いことなのかは抜きにして、わざわざ「オマージュです」と別パネルで説明しなくちゃいけないのって文化的に前に進んでる状態なのかなあ、と思ったり。

また、「この作品すごい!」と好意でSNSにUPされた写真が、ある段階で情報が切り取られ逆に悪い意味で炎上してしまうケースも出てきてます。SNSではその瞬間盛り上がればいいから、どんなにそのあと「違うんです」とフォローしても誰も読まないんですよね。
こういうことが続くと近い将来いろんなところで「撮影NG」になっちゃうはず。


以上、続きは年明けに書きますの手羽がお送りいたしました。
ブログの年内更新はもう少し続きます。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。