【美大4年生必見】手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 場所決め編1「共有スペースや屋外って難しい」

2022年12月19日(月)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

卒展出品経験と教務課時代の卒展担当経験、あちこちの美大卒展を見る趣味から、教育研究効果・美術的評価ではない視点の
「卒展ではこういう部分を気を付けるといいよ」
「卒業制作で陥りやすい点」

等テクニカルなアドバイスをまとめました。多分一番欲しているのは精神論ではなくこういう話なのかな、と。
ムサビ生向きな内容になってますが、他美大の方、また卒展以外でこれから展示を考えてる人、来年卒展の方にも参考になると思います。

これまでの話はこちら。
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 準備編1「卒業制作展は卒業記念制作展ではない」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 準備編2「DMやチラシはよーく校正しよう」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 準備編3「先生や友達の意見を聞くかどうか」

 
ここからは、どこに展示するかの「場所決め編」をお送りします。
学外美術館での卒展だと「どこに」という問題は発生しないので、これはある程度自由に展示場所を選べる学内卒展でしかあてはまらないかも。

8.いい場所・やりたい場所がいい展示になるとは限らない

ムサビは大きな合同展示スペースがいくつかあり、12号館・9号館の地下展示室、9号館1階ゼロスペースなどがそうです。
いろんな他美大の卒展を見てきましたが、学内卒展で完全な学科シャッフル状態の合同展示場パターンってほとんどなく、それが「ムサビ卒展らしさ」であり「ムサビらしさ」だと思ってます。

これらの合同展示スペースは来場者が足を運びやすい場所にあり、空間も天井高もあるから人気の高い卒展スペースになります。でも、学芸員がキュレーションしてるわけじゃなく、何かテーマが決まってる展覧会でもなく、作家をセレクトしてるわけでもない学科ごちゃまぜの共有スペースでもあります。

なので、隣に来るのがどんな作品・作者かわからない怖さがあるんです。
事前に資料を見せあって、どういう作品が隣に来るかは展示学生さんたちで調整・共有してるけど、展示計画書だけじゃ見えない「作家性(人間性?)」というのもあって。

どういうことかというと、隣が自分と同じようにしっかり作ってくれる人だったらいいんだけど、「未完成でやっつけの作品を前日に隣に置かれる」なんてリスクがあるんですね。事前に見せてもらった資料と全然違う作品(ほとんどの場合は作れなくて)で、なおかつ誰がどう見ても未完成でやっつけな作品だったりする。
同じ学科の人だったらどういう人かわかるし対策がとりやすいし、先生に相談することもできるのだけど、他学科だと言いにくい。特にこのご時世だと。

お互い「ここでやりたい!」と言い合って譲り合わず、結果、作品が影響しあったり、引きが取れなくてちゃんと見られなかったりしたら、自分の作品も何割か悪く見えてしまう。自分の空間も大事だけど、「引きの空間」「作品以外の空間」も展示には大事で。

なおかつ前回書いたように、お互いが通常の精神状態ではなく、そして卒展という自分にとってかなり大事な展示だからお互いが必死。いつもなら「他の場所も考えてみた方がよさそうだな」と柔らかい発想で気持ちを切り替えられるのに、それができない状態の可能性もあります。

卒展の展示では「いい場所で作品を見せる」よりも「いい空間を作る」ことを優先すべきだと思っています。いい空間になれば自然と作品も何割かよく見えます。
ごちゃごちゃして「引きの空間」が取れず、作品同士が悪く影響しあうような人気場所だったら、そこはやめて、早く違う場所を探した方がいいですよ。これほんと。

 
9.屋外作品は学内全体に影響する

屋外作品を大量に展示するのも、実はムサビ卒展以外ではあまり見ないケースです。

ただ、大型の屋外作品はシンボリックな存在になるので、屋外作品がしょぼいと学内全体・・特に近くの建物の作品全体がしょぼく見えちゃうんです。意識してなくても、屋外作品ってその空間周辺を支配しちゃうので、作者の学生さんは責任がかなり大きい。

目立つ場所に置きたい気持ちはわかるけど、目立つ場所に置く以上シッカリ作ってほしいし、「3日間ぐらいで作りました」的、垂木とベニアを組み合わせたような作品は避けてほしいな、と。
逆にちゃんと作った作品が屋外にあると、「今年の卒展は良かった」と言われやすい傾向にあります。これもほんと。

 
10.この時期の風の強さと寒さはハンパない

屋外作品で忘れちゃいけないのは風対策。雨よりも実はやっかいで。
特にビル風(ムサビだと中央広場や12号館前、9号館前、2号館)はほんとにバカにしちゃいけません。手羽の同期が卒展で中央広場にトタンで作ったような作品を設置したら、風で1日もちませんでした。 ブーフーウーの家状態でトタンが飛んでく姿は今でも忘れられない・・・。

そして、屋外は寒い!!
屋外展示は
●室内よりも大きな作品が展示できる
●通りすがりの人も見てくれる可能性が高い。→目立つ
というメリットがある一方、卒展中、室内展示のみんなは来場者の方となごやかな空間を過ごしているのに、屋外展示組は寒くて寒くて作品のそばにはいれないし、 準備・撤収も凍えるように寒い中ずっと作業をしなくちゃいけないデメリットがあります。

 
11.雪は降るものと思え

これは数年前のムサビ卒業制作展最終日の写真。そう、何年かに一度ムサビ卒展は大雪日とぶつかるんです。
ちなみにやはり何年かに一度の頻度で卒展準備・片付け期間に火事が起きてます。
2年前もボヤが発生しました。みっともない話だけど予防のためにリンク張っておきます。
武蔵野美術大学|火災発生について(お詫び)
火事ダメ絶対。


屋外に展示する場合、雨対策で濡れても大丈夫な素材を使ったり、漏電ブレーカーつけたり屋根をつけたりは考えるけど、雪対策まで考えないことがほとんどです。
でも雨との違いは「雪には重みがある」「しばらく残ってしまう」ことで、数年前の大雪の時も雪の重みでつぶれてしまった屋外作品がいくつかありました。

屋外で展示またはパフォーマンスを考えてる方は雨以外に雪のことも考えておきましょ。
「雪が降ったらどうしよう」ではなく「ムサビ卒展では雪は降るものだ」が大前提にないとまずいです。想定外ではなくおもいっきり想定内の案件。


続くっ!!!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。