【美大4年生必見】手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 制作編3「道具と作業の法則」

2022年12月24日(土)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

メリークリスMAU!

・・・手羽は15年前から「メリークリスMAU!」というムサビ挨拶を浸透させようとしてるのに、全然流行る気配がありません。
たった一言「メリークリスMAU!」とつぶやくだけでいいのに「ちょっと今忙しいから」と断られるんです。みんなでやれば恥ずかしくないのに。あ、24日でも25日でもどっちでもいいです。そのへん適当です。
これ読んだ人は最低1メリークリスMAUがノルマなんでよろしく。


卒展出品経験と教務課時代の卒展担当経験、あちこちの美大卒展を見る趣味から、教育研究効果・美術的評価ではない視点の
「卒展ではこういう部分を気を付けるといいよ」
「卒業制作で陥りやすい点」

等テクニカルなアドバイスをまとめました。多分一番欲しているのは精神論ではなくこういう話なのかな、と。
ムサビ生向きな内容になってますが、他美大の方、また卒展以外でこれから展示を考えてる人、来年卒展の方にも参考になると思います。

これまでの話はこちら。
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 準備編1「卒業制作展は卒業記念制作展ではない」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 準備編2「DMやチラシはよーく校正しよう」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 準備編3「先生や友達の意見を聞くかどうか」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 場所決め編1「共有スペースや屋外って難しい」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 場所決め編2「展示室以外の展示」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 制作編1「大きさ・長さ・広さ・高さ・風・時間の重さ」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 制作編2「小屋モノとボリュームもの」
 
 
21.便利な道具と基本的な単語を知ろう
制作編1で「吊りものは難しい」と書きましたが、

こういうターンバックルやピクチャーレールワイヤーとかをかまして左右の傾きやテンション具合を微調整できる構造にしておくと、後々の作業がすんごい楽になります。
テンションがビシっと張られたものにしたければ、たまたまテンション張れる場所を探すのではなく、フレームを作ってその中で構成した方がいいとは思いますが。
でも、こういうものがあることを知ってるかどうかってすんごく大事。

 
最近の便利な道具の典型例は、やはり「グルーガン」でしょう。

「ホットガン」「ホットメルト」「ホットボンド」と呼ばれたりもします。
手羽の学生時代からグルーガンはあったけど、特殊な作業時で使う、知る人ぞ知る工具でした。
でも5年前ぐらいにデザイン系の学生さんが「それ、グルーガンで止めちゃえばいいじゃん」と軽く言ってて、さらにそれが周りに通じてるのを見てびっくりしたんです。
「え。おまえ、いつのまにそんな有名人になったの?!」と(笑)

ボンドだと時間がかかるところをグルーガンならすぐに固定できるから作業効率も上がるし、仮止めにも小さなものなら本止めにも使える。ありがたいのは100円ショップでも売られてるからすぐに手に入る。今はグルーガンの使い方を知ってるか知らないかで大きく作業が変わるはずです。


「手羽が学生の頃は一般的じゃなかったけど」なものだと、「養生テープ」もありますね。

学生の頃は使ってる人はほとんどいませんでした。
布・ガムテープよりも粘着力が低いけど、養生以外に準備・制作・仮止め・展示・梱包で使える便利さがあり、ビニールテープと違って手で切れて作業効率も上がるし、なによりも貼った跡が残りにくい。

マジックで上に名前を書けば名札代わりにもなるから、ワークショップでは無くてはならないひとつになってます。
 

 
ワークショップと言えば、こんどはちょっと違うアプローチで。
卒展で来場者に参加してもらうワークショップものが増えてきましたが、そこで必要なのが汚れ対策で、新聞紙やブルーシートを敷く「施設への汚れ対策」「お客さんや洋服への汚れ対策」が必要になります。
水彩絵の具とかならいいんだけど、アクリル絵の具、ペンキ・インク、墨だとなかなか落ちない。
その手の画材を使ったワークショップをやる場合は、ウェットティッシュ・タオル・ウエス・除光液・専用洗剤など汚れを落とすものやエプロンやビニールがっぱ等服の汚れ防止などを準備しなくちゃいけないけど、そこで抜けがちなのが「足元の汚れ対策」で。

自分がペンキを落としちゃったケースもそうですが、床に落ちてる塗料を踏んで靴底にべっちょりついちゃうのよね。で、そのまま歩いちゃうから、養生していない部分にいつのまにかペンキの足跡がついてしまったり・・・。

え?靴用の使い捨てビニールカバーがあるじゃないかって?

そうそう。これです。
こういう便利なものがあるのはあるんですが、実際にやってみるとわかるけど、安物を買うとすぐに破れちゃうし脱げちゃうんですよね。実は作業やワークショップにはあまり向かなくて。
「私はこういうものがあるのを知ってて、そこまでちゃんと気を回してますよ(あとは自己責任で)」のポーズとして使う・・・ぐらいに考えてた方がいいかな。
「便利なものを知っておくのは大事だけど、知識だけではダメ」ってことも補足しておきます。
 

また、便利な道具や専門用語を知るのも大事だけど、基本的な材料等の名称は卒制前に知っておきたいところです。
例えば「垂木」。美大生なら一度は使う素材なはずだけど、名前を知らない人がたまにいて。
1年生はともかく4年生ぐらいだと油絵学科とかデ情とか関係なく「垂木」と言われて「幅5cmぐらいの角材」をすぐにイメージできた方がなにかと便利ですよ。
 
 
22.素材と工具の軌跡を消せ
難しい言い回ししてますが、「作品性と関係ないなら、工具を使った跡や素材がわからないようにできるだけ処理しません?」って意味です。

例えばノミで掘った跡は「行為の軌跡を見せる」という意味があるんで、そういう時は消す必要はないんです。ただ、最近手羽がすごく気になってるのが「レーザーカッターで切った跡」で。

以下、「手羽だけかもしれないけど」と前置きつけて告白させてもらいます。
「うわー、こんな細かい文字や形をどうやってこんなに大量に切ったんだろ。すごいなあ」と感動しながら切り口を見ると焦げた跡があり、「なんだ。レーザーカッターか・・」と興ざめするケースがすごく増えてまして。
これが通称「焦げ焦げ問題」です。手羽が命名しました。

なんで突然そこでクラフト感出すの?なんで突然木なの?作品と関係ないじゃん。てか焦げまくってるじゃん。それは見て見ぬ振りすべきなの?と。

その焦げが作品と関係あるのならともかく、もう「焦げ焦げのタイトル板」「焦げ焦げの細かい模様」ってのはやめにしません?ヤスリで磨いたり、色付けるでもいいし。
対処の仕方もいろいろあります。例えばこちら。
レーザーカッターでの焦げを防ぐ!紙にも使える前処理方法をご紹介 - FabCafe Global

こういう記事があるってことは、手羽以外に気になってる人がいるんだな・・。

あ、念のために書いておきますが、「自分で作れ!」的な手作業主義な発言ではありません。
最新の便利な道具はどんどん使うべきだけど、レーザーカッターが目新しい時代ならともかく、これだけ浸透した時代にMDF的なものをレーザーカッターで切ったまんまの焦げ焦げ状態を展示するのはどうなのってことです。
例えるならこの時代に昔のポリゴンCGを自慢げに見せられて「すごいでしょ」と言われてるようなもので。

また、作品として素材感を出したいのなら別ですが、コンパネも面取り・パテ・研磨・塗装次第でプラスチックや鉄のように見せることができます。「銀色を塗る前に下地に黒を塗っておくと、安っぽい銀色にならない」とか、こういうテクニックを知ってると安上がりにワンランクアップの作品や展示にすることができまっせ。
 

 
23.大事な時に機械は壊れるし、材料はなくなるの法則

レーザーカッターとか3Dプリンタ、大型プリンター等最新の機材は壊れやすくて。
数年前に比べてだいぶ壊れにくくなったと言われてはいるけども、まだまだ安定して信用して使える代物ではなく代替もききにくい・・しかも決まって締め切り間際に壊れるし、材料切れになるのよね・・。
なおかつ、昔の機材なら近所の「●●産商」みたいな修理のおじさまが来て2、3時間で治ってたのに、下手すると3Dプリンタとかは復旧するのに2、3日かかることも。
3Dプリンタのフィラメントはたっぷりありますか?海外からの取り寄せで時間がかかったりしませんか?そんなにいっぱいいらないのに最低販売数が決まってて高くついちゃうことはないですか?
 
これらの機材を使うのが前提の人は、「そういうものだ」という覚悟とスケジューリング、それとバックアップになるような施設をいくつか調べておくことをかなりかなり強く薦めます。
卒展前はどこも混んじゃので・・。
 
 
続くっ!!!!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。