【美大4年生必見】手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 制作編4「作るということ」

2022年12月25日(日)

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メリークリスMAU!!


卒展出品経験と教務課時代の卒展担当経験、あちこちの美大卒展を見る趣味から、教育研究効果・美術的評価ではない視点の
「卒展ではこういう部分を気を付けるといいよ」
「卒業制作で陥りやすい点」

等テクニカルなアドバイスをまとめました。多分一番欲しているのは精神論ではなくこういう話なのかな、と。
ムサビ生向きな内容になってますが、他美大の方、また卒展以外でこれから展示を考えてる人、来年卒展の方にも参考になると思います。

これまでの話はこちら。
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 準備編1「卒業制作展は卒業記念制作展ではない」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 準備編2「DMやチラシはよーく校正しよう」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 準備編3「先生や友達の意見を聞くかどうか」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 場所決め編1「共有スペースや屋外って難しい」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 場所決め編2「展示室以外の展示」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 制作編1「大きさ・長さ・広さ・高さ・風・時間の重さ」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 制作編2「小屋モノとボリュームもの」
手羽の卒業制作アドバイス36ヶ条 制作編3「道具と作業の法則」
 

制作編ラストです。
24.意外と平面は平面じゃないし、垂直は垂直じゃない

これには2つ意味があります。

一つ目は「床はフラットではないし、水平でもないし、微妙に膨らんでたりする」ということ。
屋外や階段は水がたまらないようにわざと微妙に傾斜が入ってたり、中央部分が盛り上がってたりします。
普段は全く気にならないし、小さな展示台ぐらいじゃ影響は少ないんだけど、ある程度大きな作品を設置してみて初めて「ん?傾いてない?」「フラットじゃないじゃん・・」と気が付くことがよく起きるんです。特に屋外では。

同じようなことは垂直方向でも起きます。
レーザー水平器を使って完璧な水平垂直を出して作品を壁に掛けても、壁面の形状・模様・色・周辺のモノで傾いて見えることがよくあります。建物自体がゆがんでる可能性もないことはない(ムサビの古い建物だと可能性大・・・)
「水平器を使って水平に設置しているんです。傾いて見えるだけです!」かもしれないけど、傾いて見えるんだったらそれは間違いなく「傾いてる作品」。最後はなんだかんだ目で確認するしかありません。

2つめは「平面と思ってる素材はそんなに平面じゃない」ってこと。
一番多いのは「スチレンボード」と「ベニヤ板」。
スチレンボードはある程度厚みがないと、すぐにそっちゃう。プレゼンボードを壁に貼り付けたら真ん中が浮いちゃってるケース、よくありますよね(笑)
ベニヤ板は安いから芸祭とかで使うこと多いけど、きれいな平面は出せないので、すごくチープな作品になりがちです。特に囲み壁モノはベニア板だとほんと安っぽい作品になっちゃうので、広いしっかりした平面を作りたい場合は分厚いコンパネを使いましょ。

ビニール素材も同じことがいえます。
以前書いたとおり、シワなくテンションを全方向からビシっと出せればいいけど恐らくそれは無理で(強度的にも)、絶対にシワシワになります。平面素材と思わない方がいいです。
広い透明な平面を出したい時に、ガラスや透明アクリル板の代わりに(多くは予算の関係で)透明ビニールを使ってる作品を時々みますが、板の代用品にはなりません。
加工や扱いが簡単だけど要注意な素材で、使い方を間違えると安っぽく見えるのが布やビニールなんです。
特に「黒いペンキを塗ってる時間ないから黒いビニール袋で壁作っちゃえ」的な発想は、見た目に絶対にやめた方がいいですよ。

 
25.終わった後のことも考えて作ろう
作品を作る以上、ゴミは発生しちゃうもの。
手羽はこれはどうしようもないと思ってるし、卒展が終わった直後に卒制作品をバラバラにしてゴミコンテナに全部廃棄しちゃった人間です。だって3mもあるFRP作品を保管する場所なんてないんだもん。
なので、偉そうなことは全く言えないのだけど、でも、

芸祭や卒展直後のゴミストックヤード(ゴミ捨て場)を見ちゃうと、やっぱり「うーーん・・」と思っちゃいますね・・。大きめの木材やパネルは再利用可能だけど、模型とかシチレンボード、プラスチックとかはゴミにしかならない。
ゴミの定義について考察する作品で「燃やすこともリサイクルと言ってるのは日本だけ」と問題提起しといて、展示終わったら説明シチレンパネルをそのまま捨ててしまうことも。
このご時世、「展示が終わった後にその作品やパネルをどうするか。捨てる以外の方法はないか」を作る時に考えておきましょ。
それによって素材や作り方、撤去方法も変わるので。

あ、最近こういう記事が出てました。
大河ドラマ 実は撮影セットが…

テレビや舞台のセットで使う岩はだいたい発泡スチロールでできてるんだけど、保管場所が大きく必要になるんで終わったら捨てることも多かったんです。保管できたとしても移動が大変で、かさばるからトラックが何台も必要になる。
でも新たに開発された「ラバー岩」は畳めるので、保管場所も小さくなりリユースしやすくなった。さらに必要なトラック台数が激減するから、輸送時に発生するCO2も大幅に減らせてSDGsだ、と。業界もこういうことになってるんだなあ、と。
 

 
26.自分で作る必要はない

「制作場所もないし、手伝ってくれる人もいないけどどうしたらいいの?」と嘆くあなた、答えは簡単です。
自分で作らず外注しちゃえばいいんです(ドーン)

自分で作ることによって得られることがあるから教育効果的には自分で作った方がいいけど、実はシラバスには「卒業制作は全部自分で作りなさい」とは書かれていません。自分でしっかり考えたアイデア・コンセプトを精度の高い表現で見せたければ、制作は外注しちゃえばいいんです。
どうしても周りの状況から自分で、そして大きな作品を作らなくちゃいけない雰囲気になりがち、それが絶対条件に思いがちだけど、そんな必要は全くなく。
あ、制作状況確認が履修条件に含まれてれば一概にそうとはいえなくなるので、一応シラバスや研究室に確認してください。

数年前の卒展で、講評数日前にいかにも職人さんって人が数人来て、1日ですごい立派な小屋を作り、それを展示スペースにした作品がありました。それを見た他の学生さんがこっそり「ずるいなあ・・」と言ってるのが聞こえたけど、コンセプトをちゃんと自分が作ったものであれば、手羽は全然アリだと思ってます。
ただ、外注となるとお金がかかるんで、そこで「3.やっぱりお金って大事」になるわけです。
CIの学生さんは、自分で作らず、造形学部の学生さんや企業にプロトタイプを作ってもらい、その製作費が必要ならスポンサーを探してきて、最後に自治体にアイデアを売る・・みたいなアプローチがCIらしいと勝手に思ったりも(笑)
 

 
以上、これは学期末に清掃さんが張り出す張り紙だけど、

美大で一番「これは作品と言えるのか?」「アートはゴミかどうか?」を一番真剣に考えているのは先生や学生さんではなく清掃さんかもしれないなー、と思ってる手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。