大学職員・美大職員についてシリーズで書いています。
これまでの話はこちら↓
■【実は隠れた人気業種】君も大学職員になろう1
■【大学職員インタビュー手羽編】君も大学職員になろう2
■【参考になる情報はどこにある?】君も大学職員になろう3
■【美大卒美大職員は意外と少ない】君も大学職員になろう4
■【美大職員採用試験で参考になる動画】君も大学職員になろう5
■【美大の事務組織編】君も大学職員になろう6
■【ジョブローテーションの考え方】君も大学職員になろう7
■【美大出身者こそ就職しろ】君も大学職員になろう8
■【ムサビ職員は「事務方」ではない】君も大学職員になろう9
アレがアレなので、あくまでも個人の見解です。
「君も大学職員になろう」シリーズ最終回も、ムサビのマイナビ転職 エントリーページを引用しながら、具体的な解説をします。
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【チームワークを大切にしています】
専任職員は現在74名。大きくない組織だけに各グループ間の連携が不可欠です。
チームワークよく業務に取り組むことが大切です。
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通学部学生約4500人で、プラス通信教育課程も扱ってるこの規模の大学としては専任職員74名はかなり少ない方だと思います。
「各グループ間」「チームワーク」は、多分「グループ・チーム制」のことですね。
今までなかった多様な仕事が増え、職員の仕事の範囲も広がっています。でも「部課室」のままだと「自分の仕事はここまで」と既存の与えられた業務分掌を保守する力が動いてしまい、同じ部でさえも「それは●●課の仕事」と別名「業務の縦割り」「たらい回し」が起きてしまいます。
例えば、中学校から「大学で生徒を2週間職業体験で受け入れてくれないか?」と相談が来た場合、どの部署が最初に対応するべきだと思いますか?
「広い意味での将来の受験生なんだから広報・入学課だろ」「いやいや、地域協力ってことで社会連携の他ないでしょ」「ちょっと待って。人を雇うようなもんなんだから総務課に決まってるやん」「仕事括りで就職課じゃないの?普段インターンお願いしてる立場なんだから、あんたらやりなさいよ」「でも大学で中学生にお願いできる仕事って図書業務ぐらいでしょ。だから図書館が対応すれば?」「事務では反対だけど、学長がやれっていうならやらなくはないよね。学長室で決めてくれない?」という話になるんじゃないかしら。
この手の話は昔はなかったし、業務として決めるのも変な話。どれが正解ってことはなく、各大学の文化、それと「課長と担当者」によって、どの部署が初期対応するか決まるはずです。
そこで業務が固定化された課を無くし、「大きく括ったグループ内の仕事をその時々に合わせてチームを組んで対応しましょ」というのが2015年から導入した「グループ・チーム制」の理念で、「事務業務のフラット化」「有機的な仕事のやり方」が目的にあります。
業務内容・職員の求められる仕事が増加・変化・進化してる現状だと「縦割り」では全然対応しきれないし、課のままでそれに対応しようと思うと職員数とスペースを増やすしかなく、さらに原資は決まってるのに予算取り合戦になってしまう。
業務に合わせて人の組み合わせを変える、「チーム」というよりもっと柔らかい形の「プロジェクト」が意味合いとして近いかもしれません。
ただ、理論的にはよくできた仕組みなんですが、このポリシーが職員全員にしっかり浸透してるとは正直言いにくく、6年やってきて、チームリーダー(いわゆる課長)がこのポリシーを理解してないと名称や仕組みを変えても「縦割り」が発生してしまうことがわかってきました。
逆に若い職員さんの方がポリシー理解が早く、「従来の仕事の枠に捉われない」「チームを超える」動きが若手職員から起きているのをかなり実感してます。
でも、「先輩社員にお話を伺いました」で去年入職の塩山さんが
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Q ずばり職場の魅力は?
少数精鋭の組織なので入職すぐから責任ある仕事を任せてもらえ、中心メンバーとして活躍できる点です。
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と答えてるけど、これって「74人じゃ全然人手が足りてねーんだよ!」と言ってるような・・。
「派遣職員さんがこの5年で一気に増え、『専任職員がやるべきこと』を常に考えながら業務に取り組んでいます」と言いたかったんだよね?と強引にいいようにフォローしておきます。
ちなみに塩山さんのコメントに触れるつもりはなかったのだけど、「どうせ手羽さんは書くだろうから」と本人からメールもらってしまったので仕方なく触れました。
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【求める人材】
◎仕事を通じて自己の成長を図りたい方
◎組織の発展のために尽力する熱意のある方
◎美術・デザインを通じて社会貢献に取り組む意欲のある方
◎柔軟な創造力と着実な実行力を併せ持つ方
◎経営的視点で大学を運営できる方
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これまで書いてきた通り、5項目のうち美術・デザインにうっすら関係するのは1項目だけで、しかも美術・デザインの知識ではなく「を通じて社会貢献に取り組む意欲」。「美術が得意かどうかは関係ない」ってのはそういうことです。
「てかお前らはそういう能力あるのかよ?」と言われたらギャフンですが。
ちなみに、どういうタイプの人に入ってもらいたいか議論重ねて最終的にこの5つに絞り込んだんですが、「この求める人材5か条って、クリエイティブイノベーション学科、大学院クリエイティブリーダーシップコースの理念そのものだな」とあとで気が付きました。
■概要 | 武蔵野美術大学 造形構想学部・大学院 造形構想研究科
「ま、そういうことなんだな」と。
大学職員の役割や業務がこの10年ぐらいで大きく変わってきています。
それをうまくまとめてるのが、こちらの記事です。
■大学組織や大学職員について、昔と変わった事 - 大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ
「多様化する業務」「アウトソースの活用」は手羽も書いてきたとおりで、その次の「仕事ができる大学職員の定義の変化」ですね。
一昔前は上司の指示に従い、静かにミスなくやるのが「仕事ができる大学職員」だったけど、今は知識と信頼があり、企画調整を行い、コストパフォーマンスを考えて仕事をする人が「できる大学職員」に変わっている、と。
私も同じように思っていたし、先ほどの5か条も言いたいことはだいたいそういうことだし、文化学園さんも2022 年度 新卒採用募集要項で「求める人物像」として
〇論理的な話し方や考え方ができるコミュニケーション能力のある方
〇指示待ちでなく行動力を伴った積極性のある方
と同じようなことを挙げています。
数年前に「これからの大学職員たるものは」という議論があり、文科省的な結論はこういうことなんですが、
■文部科学省|大学の事務職員等の在り方について
武蔵野大学の偉い方が「これから有明キャンパスでグイグイ行くぞ」って時に、あるセミナーで「事務員は武蔵野キャンパスに置いていく。有明キャンパスには職員しか連れて行かない」と語っていたのを強烈に覚えてて、ここでいう「職員」とはそういうことですね。
と、意識高い系の話ばかりじゃつまらないので。
このまとめ記事をちょっと読んでみてください。
■「阪神大震災の時、避難所に神戸市...」、@ShinShinohara さんからのスレッド
皆さんはどう感じましたか?
勇気を振り絞って正直なことを書くと、ずっと大学職員をやってきた手羽はこの公務員さんの心理がすんごくわかってしまいます。こんな手羽でも、です(笑)
全然「だから公務員は」とバカにしたり怒ったりできないし、自分が同じ立場になったら最初は同じ考えを持つんじゃないかしら。やはりそこには「大学職員」という公共サービスに近い仕事をずっとやってきた人間の宿命というか、「そのサービスは平等か」をまず考えてしまう習慣が染みついてるというか。
ここまでじゃないにしろ、「『平等か不平等か』を基準にして、0か100か決める。30や60なんて対応はない」な発想の大学業務は今もあちこちにあります。むしろすぐにクレームが入るので、昔よりその傾向は強くなってるかもしれません。
「平等」と「公正」の違いをこういうイラストで説明されたりしてますが、
FAIR ISN’T getting everybody the same thing ...... FAIR IS everybody getting what they need in order to be SUCCESSFUL pic.twitter.com/BSDI419yp3— Equity Vs. Equality (@studentsRhuman) December 12, 2017
この違いが広く理解されてると、今の世の中のいろんな問題もスムーズに動くはずなんですけどね。
あ、脱線気味になりましたが、つまり、きれいごとばかりじゃなく、こういう要素もなんだかんだ大学職員には今もあることは認識しといてね、ってことです。
まとめに入ります。
少子化など大学・美大にとって確実につらい局面が近いうちにやってきます。
大学職員ならみんなチェックしてるこちらのデータをご覧ください。
■18歳人口推移、大学・短大・専門学校進学率、地元残留率の動向2020|リクルート進学総研
常に改革していかないと社会に置いてかれてしまう恐怖を今の大学・・特に大学職員は持っています。
また、コロナ対応は前例が全くない中でスピード感を持った対応が求められてるし、普段は考えることを停止していた「学費とは何なのか?」「大学が提供する教育サービスとは?」「美術教育とは?」を職員も真剣に考えないといけない事態になってます。
このタイミングでの入職は大変な反面、めったに経験できないことを「自分事」としてやれるチャンスなわけで、ぜひ「覚悟」して大学職員、 美大職員、そしてムサビ職員になって、新たな美大の在り方を社会へ一緒に投げかけていきませんか?
終わり。
以上、今のムサビはネタが尽きないから、志望動機とか、かなり語りやすい大学だとは思うんだけどね、の手羽がお送りいたしました。
数年前の面接で皆さんが全員「グローバル」「旅ムサ」「デザイン・ラウンジ」とおっしゃってて、「うちは他にないのか(涙)」と思ったりした時期もあるけど。逆に「御校の教育理念に共感し」「若いアーティストの卵を」ぐらいなテンプレで終わってたら「なにやってんのよ・・・」でもあるけど。
皆さん、頑張ってください。
そして明日の記事も読んでください。こっそり関係してる話を書きます。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。