大学職員・美大職員についてシリーズで書いています。
これまでの話はこちら↓
■【実は隠れた人気業種】君も大学職員になろう1
■【大学職員インタビュー手羽編】君も大学職員になろう2
■【参考になる情報はどこにある?】君も大学職員になろう3
■【美大卒美大職員は意外と少ない】君も大学職員になろう4
■【美大職員採用試験で参考になる動画】君も大学職員になろう5
■【美大の事務組織編】君も大学職員になろう6
■【ジョブローテーションの考え方】君も大学職員になろう7
アレがアレなので、あくまでも個人の見解です。
これまで書いてきたとおり、美大職員といっても大学職員なので、実際は美術と関係ない仕事の方が多く、一般大学卒の職員が多いです。
個人的には、これからの美大のためにも、もっと美大卒業生が美大職員になってほしいと思ってまして、今日はそういう話を。
美大出身者はバックオフィスの存在をイメージしにくいようで、どうしても一般大学卒のジェネラリスト的な発想を持ってる人と比較すると弱く見え、なかなか最終面接まで上がってこれないと聞いたことがあります。
美大卒の人が「高校生に美術の面白さを伝えたいんです!」「ワークショップと産学経験あります!」「絵を描くのが好きです!」「美術を頑張ってる後輩を応援したいんです!」「学生や受験生に接したい!」と熱く語ってくれるのは嬉しいのだけど、あまり強く言い過ぎてしまうと「そういう仕事しかないと思ってるのかな?大丈夫かな?」と面接官が感じ、逆効果になる可能性もあります。
また、大学職員試験の倍率も知らず「美大職員試験なんて楽勝」と甘い考えの美大卒より、例え一夜漬けでも事業計画・中長期計画・事業報告・決算書を読み込み、美大のことをちゃんと調べて対策してきた総合大卒に論文や面接の印象で負けちゃうみたい。
採点するのは人間だから、「卒業してから久しぶりに大学に来ました」な美大卒より、「先日のデザイン・ラウンジや市ヶ谷キャンパスの公開講座に参加してきました」な一般大学卒の方がやっぱり「本気度が高い」と感じるもんです。
事業計画は必ず出てるし、ほとんどの大学で中長期計画を発表してるから、少なくともそれらは読んでおきましょ。結構いろんなことが書かれてまっせ。
ところで時々言われるんですよ。
「手羽さんはいいですよね。美大卒だからデザインの知識も美大の知識もあって」と。
いつもニコニコしながら、心の中で「ふざけんなよ」と竹中直人ばりに叫んでます(笑)
確かに「受験時レベルの美大の知識」「彫刻学科の経験」は総合大卒の人よりありましたが、他学科の友達がほとんどいなかったんで他学科がどういうことをやってるのか教務課に配属されるまで全然知りませんでした。ファインアートの人間がデザイン系のエリアに行くのって勇気が必要で、入ったことがない建物がほとんどだったし。
デザインについては広報、デザイン・ラウンジ、産学連携を担当するようになって「あ。今の状態じゃまずいぞ・・」と必要に迫られて勉強しただけで、スタートラインは普通の人とほとんど変わりません。社会連携の仕事をやってなかったら、恥ずかしながら10人もデザイナーの名前を言えなかったはず。関係する部分を優先的に勉強したから、いまだに「応用はわかるけど基礎はない」の状態です・・。
逆にデザイン系出身者が油絵のことを語れるはずもありません。
例えるなら、音楽大学でバイオリンやってる人が全員ホルン吹けますか?で、せいぜい「とっかかり」があるぐらい、「ちょこっとピアノが弾ける」な超初歩的な知識やテクニック、それと「共通する音楽の本質的な学びと楽しさ」は語れるけども、って話。
他美大のことを積極的にチェックするようになったのは、美大卒も広報も関係なく、美大愛好家になってからです。名古屋造形大学の移転先を自腹で見に行ったのは完全に趣味だし。
ちなみに手羽がチェックしたのは2019年2月で、2021年4月現在はこんな状態になったようです。
早く見に行きたい・・・。
あ、何が言いたいかというと「出身大学も前職も関係なく、知らないのはあなたが勉強してないだけですよ」です。
ここまで読むと「じゃ全然美大卒が美大職員採用試験を受ける優位点がなくね?」と思うかもしれません。
ポイントは「美大の本質的な学びがなんなのか?」「美術やデザインの必要性は何か?」を自分事として考えた、実感したことがあるか、それを自分の言葉で語れるかどうかで、これは確実に美大出身者の超優位ポイントだし、逆に美大卒でそこが言えないと超マイナスポイントになります。
こちらをご覧ください。
■武蔵野美大、都心で勝負 旗振り役は元出光の豪腕社長 : NIKKEI STYLE
■天坊昭彦(28)武蔵野美大|社会と交流 伝える力育む 都心に新キャンパス: 日本経済新聞
「武蔵野美術大学」でググるとこの日経の記事が上位に出てくるから、数年前の採用試験ではこの天坊 前理事長の話をする人ばかりでした。
天坊さんは理事長時代、入学式・卒業式でも同じようなことを毎年しゃべってたから、行間を読めない学生さんや卒業生から「今のムサビの理事長は、美大卒業したら一般企業に総合職で就職しろと言ってる。そんなに就職率を上げたいのか?ムサビも落ちたもんだ」とSNSで叩かれたことが何度もありました。
ちゃんと読めば「美大での学びって絵がうまくなることだけじゃないよね?美大での本質的な学びを経験した人を社会や企業は本当に求めてる」なのはあきらかなのに。
で理論的に大人なら理解できる話で、一般大学卒の人ならここから
山口周さんや末永幸歩さんあたりの本を読んで、知識として学ぶのが限界。
でも美大卒であれば、自分の体験談を具体例として深く語れる強みがあります。今注目されてるこの分野をリアルに経験し自分事として理解できてるのは美大出身者しかいないわけで。
「美大のこと、美大の危機的な将来を自分事で考えられる人」「美大での本質的な学びやその必要性」を体感してる人が美大職員に増えれば、もっと美術・デザイン業界や美大業界、そして社会が良くなるはずだと信じてます。なのでたとえ総務や経理に配属されるとしても美大卒の美大職員がもっと増えるべきだし、個人的には美大卒ほど役所に就職してほしいと思ってるくらいです。
じゃあ、美大卒じゃない人が美大の本質的な学びやその必要性をより深く知るにはどうしたらいいか。
簡単です。
手羽美術大学★を最初から読めば完璧!!(こればっかり)
あ、気をつけて欲しいのは「アート思考の重要性を語れば高ポイントになります」というつまらない話ではなく、「自分の経験と分析を、自分の言葉で語れる人に興味を持ちます」ということです。
「言われてるからアート思考とかいろいろ調べてみたけど、私の経験からも美大は絵を描ける人を育てるべきだと思います!」と面接で語りだしたら手羽は間違いなく「おっ!!」となります。
つづく!
以上、「美大といっても大学職員だから美術と関係ない仕事の方が多い」のだけど、「とはいっても美術の世界と全く無縁じゃない仕事が美大職員」で、なんやかんやいろんな部署で間接的に美術・デザインに関係する仕事があります、の手羽がお送りいたしました。
教務課だと卒業制作展だったり、学生生活課だと芸術祭(学園祭)だったり、もちろん就職課や国際交流課も業界のことがわかってないとダメだし、総務課でも「なぜ入試の時だけ食パンを売るのか?」を知ってなくちゃいけないし、経理課も「なんで油絵学科(絵画組成)は卵を教材としていつも買ってるのか?」をわかってないと「あいつらは毎日パンケーキでも作ってるのか?」と思っちゃうしね。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。