【 #美大受験 2021】東京の大学へ行くか、地方の大学へ進学するか迷ってる方へ

2021年3月8日(月)

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今頃、「合格した第2希望の大学にするか、浪人して第1希望の大学にいくか」で迷ってる方も多いと思います。
一所懸命比較して両校受験したのなら、最後は「●●ちゃんが行くから」「●●という施設や制度があるから」「●●先生がいるから」とかじゃなく、「自分に合ってそうだから」なフィーリングで決めていいと思います。どの大学にもいいところもあれば悪いところもあるから、悩んで両校受験したなら、最後はなんだかんだ「感覚」で決めていいんじゃないかと。

でも、地方の人が「東京と地方、どっちの大学に行くべきか?」で迷っているのであれば、金銭的な比較でなければ「無理してでも若いうちに東京で勉強した方がいいよ」と、手羽は3つのデータと1つの印象からアドバイスします。
今日はそんな話。

あ、最初に断っておくと、手羽は田舎が嫌いで嫌いで東京に出てきた人間なので、これに関してはすごく偏った考えを持っています。今どきこの質問に対してこんなにはっきりと「東京だ」と答える人もいないでしょうから(笑)、今日のは話半分ぐらいで読んでもらったらちょうどいいかも。
 

 
数年前、愛知の某美大さんが「東京は治安が悪いけど、名古屋は安全だし家賃が安い」的なことを大学案内に書いてたんですよ。軽いネガティブキャンペーン(笑)
親御さんが一番心配するのは東京の治安で、「人が冷たいコンクリートジャングルで子供を一人暮らしさせるのは心配」「犯罪に巻き込まれるんじゃないか?」と不安に思ってる人は多いはず。
東京の家賃の高さは事実ですが、治安はほんとに悪いのか?

まず、こちらのデータをご覧ください。
全国治安ワーストランキング2020|ALSOK
東京は人口が多いので「件数」だとどうしても多くなるし、メディアでも東京のニュースが扱われがちなんで東京は治安が悪そうに見えますが、「犯罪率」だったり「犯罪遭遇率と検挙率で見た治安の高さ」でみると、

ま、こんなもんだったりします。
地域で見た場合の犯罪率だと、
全国の犯罪率ランキング【スマイティ】
こんな数字もあります。「だから東京は絶対に安全だ」というつもりはありませんが、愛知の某美大さんには「あなたには言われたくない」でして(笑)
 

 
それと、よく京都の大学が「京都市は10人に1人が大学生!人口に占める学生の割合は全国で1位!」というフレーズを使ってるのを見ます。
多分これは「大学生がいっぱいいる街!周りに仲間がいっぱいいるお!」ということなんだと思うんですが、手羽はイマイチこれによるメリットが思いつかないんですよね・・・。

こういう表を作ってみました。

東京都は京都府の約2分の1の面積なのに、京都の5倍以上の学生がいます。
・・え?「京都府じゃなくて京都市の話をしてるんだ!」って?
京都市なのに「京都」じゃない? じゃあ「京都」の範囲とは? 京都新聞の記者たちに聞いてみた|まいどなニュース
こういうことですね。でもそれを言い出すと東京も23区と都下の関係があるんで、東京都と京都府の比較にさせてもらいます。


アートやデザインは、企画(発想)・調査・実践(制作)・発表・フィードバックが必要です。
「1人で制作する」「友達に向けて発表する」を求めるのなら「10人に1人大学生」とか広い空間を確保しやすい地方の方がいいけど、「たくさんいろんな種類の人、今まで会ったことがないような人と直接関係を持つ」「様々な場やシーンを調査し発表する、見てもらう(いわゆる刺激)」を求めるなら・・他の学びはわかりませんが、美術やデザインを学ぶ場は地方より東京の方がいいんじゃないかと思ってます。

東京で卒業制作展をやってる地方の大学さんになんとなく矛盾を感じるんですよ。
「そんなに地方最高っていうなら地方でやればいいのになんでわざわざお金を出して東京で展覧会をやるの?てかそのキュレーションされた方は東京の美術館のキュレータだよね?」と。
そして、「人がいる」ということは「仕事がある」ということでもあります。
「東京行きの就活専用バスを出してます!」「就活で東京に行く時は交通費出します!」とやってる地方の大学さんがあるんですが、やっぱり「それって地元に仕事ないってこと?入学前にそれ言ってましたっけ?『こんな教授がいます!』と自慢してる教授が所属する会社はほとんど東京だよね?」と思うんですよね・・。


3つ目のデータは、野村総研が2017年に発表した「都市の成長可能性ランキング」という表。


「東京の人は冷たい」とよく言われるけど、地方は身内には優しいのに、外からの人に冷たいんっすよ。地域おこし協力隊でうまくいってないケースをちょこちょこ聞くけど、だいたい原因はこの地方の風土が関係してるよう。

東京は外から来ることを前提にコミュニティが作られていて、「人に冷たい」ではなく「相手を尊重してる」だし、「多様性を受け入れる」という意味では東京の方が親切心が高いと思ってます。「多様性」「寛容」って「身内にする」ではなく「他人を他人として受け入れる」ことなのかな、と。
「よそ者を排除せず、多様な文化や価値観を受け入れる寛容性」が高いのが東京で、クリエイティブやイノベーションには必要な要素なんですよね。
自分が地元が嫌だった理由は、「オシャレじゃないから」「アートやデザインがないから」「コトが起きないから」ではなく、そもそも「クリエイティブを受け入れる、発生させる土壌がない」→「寛容度が低いから」だったのかもしれないなあ、と最近気が付きました。
 

最後に。
札幌出身の奥さんと前からよく話してることがあったんですが、最近似たようなつぶやきを発見したんです。

そう、ほんとこれ!
例えば小学校のキャリア教育で有名企業の本社社員の人が普通にやってくるし、美術館や歌舞伎とか普通に行くし、普通にピアノ弾ける子がいるし、普通に同級生でタレントしてる子がいるし、普通に同級生の親がデザイナーやタレントやってるし(笑)
クリエイティブの土壌が全然地方と違うというか、「普通にある」状態なんですよね。
奥さんと「東京の人ってズルイ。こういう環境で育ちたかった」と。

お金も人も仕事もない村社会で、アートやデザインを学ぶ意義がどれくらいあるのか自分にはわからくて。あ、東京の人が「地方でその文化を勉強したいから」ってのはわかるんだけども。
「コロナで遠隔授業ならわざわざ東京に行く意味がない」と言われたりもするけど、むしろコロナみたいな状況だから地方と東京の差が出ちゃうと思うんですよね。
なので地方に残るか、東京に行くか・・金銭的な比較でなければ「無理してでも若いうちに東京で勉強した方がいいよ」てのが手羽の答えです。


手羽が東京へ行くことに決めた最大のきっかけがあるんだけど、それはまた別の時に。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。