#美大受験では、ムサビまたは関東美大の一般入試(AOや推薦入試じゃない入試)を具体例で使うことになりますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
■東京五美大2021入試カレンダーからわかるたった1つのアドバイス
■コロナ対応の入試変更点は重要な情報だから、マメにチェックしよう
■ムサビの実技試験で絶対に忘れちゃいけないものを1つ断言します
■美大実技試験に関するたった1つのアドバイス
■美大の学科試験当日に聞いても役に立つ2つのアドバイス
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
ムサビもタマビも東京造形大も入試後半戦に入りましたね。
受験生も関係者の方も頑張って!
2月4日にタマビが志願状況を発表したので、女子美術大学、東京造形大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学の東京4美大の一般選抜志願者数が出そろいました。
■女子美術大学|2021 年度一般選抜(A 日程/共通テスト利用Ⅰ方式・Ⅱ方式)志願者数
■東京造形大学|2021年度一般選抜入学試験 志願者数(確定)
■多摩美術大学|2021年度 美術学部一般選抜 志願状況
■武蔵野美術大学|2021年度 一般選抜志願者数
ただ、大学公表データには昨年度の数が入ってないんで、誰もが気になる「で、去年と比べてどうなのよ?減ったの?増えたの?」がわからないんです。
なので心優しい手羽が作ってみました。
1時間ぐらいで作った完全手羽オリジナルなので、数字が間違ってたら指摘してください>関係者
受験生は正確な数字を上記公式大学サイトで必ず確認してね。
あ、去年某美大の入試会議資料にこのデータがそのまま使われていたようで、それはいいんだけど一応正確かどうかだけ確認してくださいな(笑)
まず各大学のデータを軽く触れて、最後に全体的な傾向とそこから言えるアドバイスという流れで。
最初は多摩美術大学から。
このコロナの状況下で全体で約5%減でおさまったのはすごいですね。
でも、芸学と演劇舞踊の減り方が少し気になります。
次に、武蔵野美術大学。
造形学部。
油絵と基礎デが増えてる。でも空デと芸文の減りが大きい。
造形構想学部。
CIは卒業生が出るまで踏ん張りどころですな。
ムサビもこのご時世で両学部とも88%は頑張った方じゃないかと(甘い?)。
続いて東京造形大学。
東京造形大は5年連続で増加してたんだけど、ここで止まりました。
今年から外国人留学生選抜入学試験が新設されたので、外国人留学生分がカウントされなくなってます。なので、その分の減りは想定内ですが、絵画が半分以下になるとは。
最後に女子美術大学。
洋画が37%、プロダクト36.4%、工芸39.3%に減少と、データ作りながら「ほんとにこのデータ合ってるのかな?(汗)」と不安になるくらいの減少で。「37%減」ではなく「37%になった」です。
あ、タイトルで「確定しました」と書いてるけど、女子美さんはB日程があるんで厳密には確定ではありません。
今年度の特徴は、小さなところだと『メディア●●』がどの大学も増えた」てのがあります。
でも、やはり一番大きいのは「東京造形大と女子美の激減」でしょう。
「女子美は去年26%アップしたのでそのより戻しが起きた」とも考えられますが、一番大きな原因は「タマムサとの入試日程のカブリ」と言われてます。
一般選抜のカレンダー東京4美大版を作ってみました。
これをみると明らかで、
●女子美の学科試験日・プロダクト等実技日とムサビ油絵・ムサビ工デ
●東京造形の絵画実技試験日とタマビ油画、ムサビ日本画
がぶつかってるんですよ。まさに今日明日の試験。
その証拠に女子美A日程の油画は37%に減ってるけど、試験がかぶらない共通テスト方式はそれほど減っておらず、実技試験日が丸カブリの女子美プロダクト等はどっちの方式も大きく減らしてます。
入試担当者内ではなんらかの影響が出るんじゃないかと噂されてたようですが、ここまではっきり数字で出るとは誰も思ってなかったんじゃないかしら。
逆の言い方すると、それくらいしか要因が思いつかなくて。
で、この志願者数一覧から言える、受験生に送るアドバイスは・・・
これだけじゃ何にもわからない。自分が頑張るだけ
です。
あ、ちゃんと最後まで聞いて(涙)
3つ理由があって、1つ目は「毎年微妙に定員は調整されている」ということ。
意外と知らない人が多いんですが、入学定員自体は変えず推薦入試などに募集定員を移動させ、一般入試の定員を減らす(または増やす)定員移動をどの大学も毎年微妙にやっています。なので「受験生が減った=倍率が去年より下がる」には必ずしもならないのです。
典型例は今年だと女子美の洋画A日程かな。
志願者が37%に減ったから倍率がかなり下がりそうな気がするけど、実は去年定員25名だったのを今年15名に減らしてたんですよ。なので去年倍率3.3倍なのが今年2.9倍と思ったほど減ってなかったりします。
2つ目は「志願者比較は数年分見てみないとわからない」。
昨年度が落ちたから今年が増えたように見えるだけでってことがよくあります。
この典型例はタマビ統合デザイン学科とムサビの基礎デザイン学科でしょう。
2学科とも今年は増えてるんで「この2学科の分野が今勢いがあるってことか!!」と思っちゃうんだけど、過去5年で見ると、
両学科とも去年少し減ったんで、今年増えたように見えるだけだったりします。ま、大きな入試改革もしてないのにこの志願者数の維持はすごいけども。
また去年芸術学系はどの大学も大きく増加したので、今年は減ったように見えているだけかもしれません。「より戻し」ってやつですね。
つまり作っといてなんですが、昨年度比較だけで「●●学科は人気が落ちた!」「上がった!」と語るのは全く意味がないってことです。
3つ目は「あくまでもこれは『見た目志願者数』」ということ。
多くの受験生は他学科併願や一般方式・共通テスト方式併用をしてるので、私たちはこの数字を「見た目志願者数」という表現を使っています。すぐ手に入るデータだから見た目志願者数は「参考」にはするけど、これで一喜一憂する大学入試関係者はまずいません。
この「見た目志願者数」をうまく使ってるのが某近畿大学さんで・・・と細かくは後日書きますが、大学入試関係者が大事にしてるのは「実人数」や「どういう人が受験したか?」だったりします。
例えば「クリエイティブイノベーション学科の志願者が減った」といっても、一般大学併願者や高偏差値高校からの受験者割合が増えていたらムサビ的には万々歳なわけで、多分今頃入試本部はその分析をやってる最中じゃないかと。
なので、志願者数を見て「う、うわ。志願者増えてるやん(怖)」「減って合格しやすくなったんじゃね?(嬉)」と考えるのは時間の無駄で、自分は精いっぱいやるだけってことなのです。
個人的に今年気になってたのは「コロナの影響をどれくらい受けるのか」で、「地方からの志願者が減る」「留学生志願者が減るんじゃなかろうか」と言われています。
地方からの志願者数は今は入試関係者しかわからないけど、外国人留学生志願者だったら最新のデータが出てます。
ムサビもタマビも1割減弱で済んでますね。もう少し影響が出るかと思ってたけど、こんなもんか。
ちなみにこの規模の大学で外国人志願者が500人強って多い方に入るんですが、京都精華大さんはなんと延べ人数で975名。マンガ学部だけで446人なんだからすごすぎ・・。マンガ学部をグローバル学部にした方が早いような気も。。
最後に。
以前はほとんどの大学が一般入試(一般選抜)志願者数を速報の形で入試前に公表してました。
でもAO・推薦入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)で定員の7、8割を確保してる大学が多くを占めてる現状では、(特に地方大学では)「一般入試はオマケ。補充試験みたいなもん」な状態に完全になっており、どんどん速報を出さなくなってきました。
私立美大はもうほとんど出していません。
ちょっとこちらのチャンネルをご覧ください。
一般入試の入学率が明治さんが68.7%、東京理科大さんが65.1%と言われてます。
母数が違うので比較はできないんですが、ムサビは募集定員でみると、
一般入試(選抜)率は82%あり、なおかつそのうち63%が完全大学独自の一般方式です。
タマビも同じような割合だし、女子美さんも東京造形大さんもまだまだ一般入試に力をいれています。東京4美大の一般入試率が高いのは、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性」が見れるレベルの実技試験をやってるからだと言えます。
(個人的にはもう少しムサビはAO・推薦比率を上げたらいいのにと思ってますが)
なのでいまだに試験前にちゃんと一般入試志願者数を公開してるこの東京4美大を褒めてほしいのです。
もう意地で出してるようなもんで(笑)、評価されないと来年から公表しなくなるかもしれません。
さっきは「参考レベルの数字」と言いましたが、美大全体の動向をすばやく手っ取り早く分析できるデータはこれしかないんですよね。
当たり前のものをずっと残すためにどうぞよろしくお願いいたします。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。