#美大受験では、ムサビまたは関東美大の一般入試(AOや推薦入試じゃない入試)を具体例で使うことになりますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
■東京五美大2021入試カレンダーからわかるたった1つのアドバイス
■コロナ対応の入試変更点は重要な情報だから、マメにチェックしよう
■ムサビの実技試験で絶対に忘れちゃいけないものを1つ断言します
■美大実技試験に関するたった1つのアドバイス
■美大の学科試験当日に聞いても役に立つ2つのアドバイス
■2021年度東京4美大一般選抜志願者数(確定版)から言える1つのアドバイス
■倍率は全然信用できないって話 1 #募集定員と補欠のトリック
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
「去年と今年の受験者数・倍率比較ほど信用できないものはない」という話の続きです。
理由3つ目が「併願」。
例えば、美子さんが●●学科と▲▲学科を併願し、なおかつ▲▲学科は一般方式と共通テスト方式を併用したとします。
併願などの全部の志願者数を足した数字を「総志願者数」「延べ志願者数」「見た目志願者数」と言い、通常、大学が公表するのはこの数字で、ここでは「3人」とカウントされます。
でも、美子さんは一人しかいないから「実志願者数」「実数」は、もちろん「1人」。
私立大学は実数と延べ人数の関係があるんで、「全部合格しても合格した時の選択肢は1学科だけ(美子さんは1人だけ)→他2学科(2人分)は『蹴る』」が発生する、と。
学内併願・併用がある以上、総志願者数だけでは何とも言えないし、詳しくは後で書くけど総志願者数はテクニックで比較的簡単に増やそうと思えば増やせます。
なので、大学入試関係者は総志願者数を参考にはするけど信用していないのです。
つまり、倍率とかデータとか去年の補欠繰り上げ数とか周りのこととか気にしても意味がなく、精神論ではなくほんとに自分はベスト尽くしてやるしかない。そのためにできる一番簡単で合理的な方法が「体調管理」であり、結局最初のアドバイスになっちゃうんですよね。
ちなみにこの「延べ人数」「見た目志願者数」をうまくブランディング広報に使っているのが、ご存知近畿大学さん。
この表は週刊朝日で発表された2020年度一般入試「志願者数ランキング」。
■私大志願者数ランク速報! 近大が8年連続の首位に王手…2位は昨年5位の明大が浮上 早慶は共通テストの対応で明暗
2021年度速報でも近畿大が8年連続で首位になりそうだと伝えられてます。
近大マグロを始め、この数年の近畿大の広報戦略は目を見張るものがあり、先生や理事長から「近畿大の広報を見習え!」と言われた大学広報関係者も多いのではないでしょうか。近畿大広報担当者のセミナーはいつも満席だし、確かに参考になることも多いです。
という状況だと、何書いても妬みにしかならないのだけど(笑)、「こういう見方もある」程度にこの「志願者数」について分析します。
メディアに登場する・・一般的に使われる「志願者数」とは「延べ志願者数」のことで、総志願者数を見てワーワー言うとるわけです。これもそうです↓
■最新版「志願者数が多い大学」ランキングTOP50 7年連続で近畿大が首位、10万人超は8大学に | 本当に強い大学 - 東洋経済オンライン
でも3年前あたりから、ようやくメディアも学内併願をカウントしない「実志願者数」に注目するようになってきました。
実志願者数ってかなり生々しいという赤裸々なデータなので、公表してる大学はほとんどなかったんですが、数年前から週刊朝日さんが調べるようになったのです。
では、「実志願者ランキング」はどうなるかというと、こうなります。
実は近大の実志願者は2万7千人ぐらいしかなくて、実志願者数で見ると11位なんですよ。千葉工大さんなんて「志願者が10万人超えた」と言われてるけど、実志願者は2万人いません。
これがうっすら皆さんが感じてる「違和感」の原因で、1度の試験で他学科や他学部を複数併願できたり、自動的に併願になっていたり、併願割引作ったり、と受験方法の仕組みで学内併願率を高めて「見た目志願者数」を高めてるんですね。
いろんな大学でやってる手法ですが、にしても近畿大の併願率525%、千葉工大561%ってすごすぎ。。
この仕組みを知ってると、こちらの記事を読むと、
■早稲田志願者は10万人割れも、立教は4000人増 混迷する「都内難関私大」を取り囲む複合的要因とは
「早稲田の延べ志願者が10万人を割る」って内容なんかより
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立教大学は2021年から入試内容を変更し、(中略)最大2回だった一般入試の受験機会を文学部では最大6回、理学部を除く他学部で最大5回まで増加させています。
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こっちに目が行くようになります。
急激に総志願者が増えた時は、「人気が上がったから」よりも「共通テスト方式導入などで学内併願率を上げたから」等がほとんど。総志願者数は比較的簡単に増やすことができるとはこういうことです。
この仕組み(仕掛け?)を先生でも知らない人が多く、先生から「近大を見習って志願者増やせ!」と言われても入試スタッフが「そうですね・・・で?」という反応を返しちゃうから、先生に「うちの入試広報はやる気がない!」と怒られる流れは、最近の大学あるあるかもしれない。
あ、戦略的に延べ志願者数を増やすことを否定してるわけじゃありません。
やっぱり総志願者数は気になるし、増えたら嬉しいし、「行列が行列を呼ぶ」ブランディング広報はあるし、法人運営的には受験料収入と関係する延べ受験者数もすごく大事だし、併願率が高いのは「複数学科受験してでも入りたい大学(ブランド力がある大学)」とも言えるわけで。
近大さんの広報戦略は本当にうまく、例えば
■「近大DX」始動!学生に新たな学びの環境を提供 令和3年度から、授業のオンデマンド化を推進 | 近畿大学
記事を読む限りは正直そんな大した話は書かれてなく、ある程度の大学であればやってる、もしくは考えてるような内容なんだけど、「近大DX」とキャッチな名称をつけて大学からリリースを配信してるんです。広報が「この話題は広報になる!」と気が付いてるってことで、これができそうでなかなかできない。
また、「新しいサービスを考える前にプレスリリースを作れ」と言われてたりもします。
共感される要点とゴールを先に決めてからコンセプトを考えるやり方なんですが、近大さんはそれを実践されてる印象で、参考にしなくちゃいけない広報戦略なのは間違いないと思ってます。
今日がタマビ実技試験最終日と東京造形大合格発表日で、東京4美大入試も一旦落ち着きます。
#美大受験2021も少しお休みに入ります。次は国公立の志願者確定版が出た頃かな。
以上、福岡出身の美大愛好家としては
「九州産大学芋って九州産業大学の芋、近大マグロみたいなやつ?」と、どうしても思ってしまう手羽がお送りいたしました。
わかってても「九州産 大学芋」と頭が認識するのに時間がかかってしまう。
・・てか「大学芋」って調理法だから、「九州産の芋で作った大学芋」であって「九州産の大学芋」って変じゃね?
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。