【ビダモン2018】気になる「倍率」だけど、気にする必要は全然ないって話 2

2018年2月12日(月)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

理由3つ目が「併願」
例えば、今日入試があるタマビの情報デザイン学科受験者はムサビのデザイン情報学科も受けてる可能性が高く、またムサビデザイン情報学科受験者は視覚伝達デザイン学科や基礎デザイン学科などを学内併願してる可能性が高いです。そして、一般方式とセンターA方式を併用してる人も多い。
でも合格した時の選択肢は1つだけなので、全部合格してもそれ以外は全部「蹴る」ことになります。倍率が高いからといって合格者全員がそのままその学科を選択するわけじゃないから、本当の倍率は下がる、と。
なので「延べ人数ではなく実志願者数(実数)の推移」の方がデータ分析には大事だったりするのです。


  • でも美子さんは一人しかいないから2つは蹴ることになる

この仕組みを先生でも意外と知らなかったりします。あ、「データ分析には」であって「法人運営的には」受験料収入と関係する見た目受験者数も大事です(笑)
ただ、実数は大学の評価が丸裸になっちゃうので私立大学で実数を出してる大学は少ないんですよね。出してるところで手羽が知ってる大学だと早稲田大学さんと慶応さんかな。
早稲田大学入学センター|出身高等学校所在地別状況 / 学部間併願状況 / 選択科目別志願者数 / 現役、高校既卒者別志願者・合格者数
慶応義塾大学|一般入学試験 統計総括(2016・2017年度)
早稲田さんでさえ総志願者数約11万5千人に対し実志願者が約5万5千人なのがわかりますね。


また、「合格したらその大学を選ぶ(入学者÷合格者)」ことを「歩留まり率」といいますが、私立大学の歩留まり率平均は40%ぐらい。ちなみに日本で一番歩留り率が高いのが東京藝大。毎年ほぼ100%で、つまり藝大に受かれば全員藝大にいくってことです。
「志願者数が日本一!」「志願者200%増!」と宣伝してても、1度の出願で複数学部・学科を併願できたり、異なる試験方式の回数を増やして「見た目の延べ受験者数」「学内併願率」を上げてる可能性が高く(某マグロ大学さんの歩留まり率は20%台って知ってました?)、大学関係者からすると「志願者数が増えた?すごいですね・・・で?」で、それより「歩留まり率がどうなのか?」の方が大事だったりします。「志願者が増えた!」と喜んでみたら、他学科・他大学の滑り止めとしての価値が上がっただけで、合格発表したら去年よりいっぱい辞退者が出た・・なんてことも。

ただここが難しいところで、歩留まり率が低いのは「複数学科受験してでも入りたい大学(ブランド力がある大学)」とも言えるので、単純に「歩留まり率が低い=人気のない大学」にはならないんですよ。
歩留まり率が高い私立大学は、その1で書いたとおりAOや推薦入試に完全シフトして「一般入試は足りない分を補充する2次募集のようなもの」な位置づけになってる可能性もあり、「一般入試は他大学がダメでどうしても合格したい人が受験してるから」とも考えられる。関東美大と関西美大の歩留まり率を見ると、言ってることがわかるかも。
ほんと入試データの読み方って難しいんです・・。


まとめてみましょう。
●志願者数を定員で割った数字=志願倍率
●志願者から欠席者を引いた数(受験者数)を定員で割った数字=受験倍率
●受験者数を合格発表数で割った数字=合格倍率
●受験者数を合格発表数+補欠繰上げ数(入学決定数)で割った数字=実質合格倍率(入学倍率)
●実志願者数(実数)を総入学定員で割った数字=実数倍率(非公開が多い)

大学によって呼び方は変わりますが、ざっとこれくらいの「倍率」がある、と。


では、皆さんが理解したか問題を出します。

■問題:手羽美術大学★の造形創造学部クリエイティブインタラクションデザイン学科は入学定員50名で受験者数300名です。さて倍率はいくつですか?

正解は「これだけじゃわかりません。問題不成立」です(笑)
求めてるのが志願倍率なら、もちろん6倍。
でも、実際に試験を受けたのが250名だったら受験倍率は5倍になり、辞退する人数も想定して発表した合格者数が60名だったら、合格倍率は4.2倍。
さらに辞退者が多く、最終的に補欠繰上げが40番まで回ると、実質合格倍率は2.5倍程度。
わかったかな?
 

 
ちょっと脱線しますが。

ここまで紹介した「数字のマジック」が理解できると、よく言われてる「私立大学の約4割が定員割れしてる」という言葉をそのまま信じちゃいけないこともわかってもらえるんじゃないかしら。
日本私立学校振興・共済事業団が出してる
平成29(2017年)年度 私立大学・短期大学等入学志願動向
をご覧ください。5ページに「規模別の入学定員充足率」が出てます。

入学定員充足率とは「入学者÷入学定員」のことで、これが100を切ると定員割れってこと。
昔から「定員800人の壁」というのがあって、800人未満の大学の平均は100%以下、つまり定員割れしてるけど、800人以上の大学は100%以上、つまり定員超過してることが多いと言われています。(29年度はボリュームゾーンが移動して500人未満になった)
「中規模・大規模校はあまり定員割れしてないが、小規模校の多くが厳しい」のをぜーんぶひっくるめて計算すると「私立大学の4割が定員割れしてる」な短絡的な説明になる、と。例えるなら「受験倍率が3倍」は、くじ引きにように「3人に1人チャンスがある」ではなく「上位3分の1しか合格できない」みたいなもの。
もちろん、定員充足してる500人未満の大学もあるので、このデータもあくまで「傾向」を見るためのデータですが、これを知らないと「入学定員を増やした」というニュースを聞いて、「え。18歳人口が減って約半数が定員割れしてる時代に??バカじゃないの?」と思ってしまうんですが、中規模・大規模校であれば全然普通に考えられる戦略なのです。はい。


つまり、何がいいたいかっていうと。
倍率が高いからといって嘆く必要もないけど、倍率が低いからといって楽観視する必要もない。 倍率とかデータとか周りのこととか気にしても仕方なく、自分はベスト尽くしてやるしかないってことです。
今日はタマビ学科試験B日程。受験生もスタッフももう少し!



以上、ムサビは学部入試も終わり、関係者の皆さんお疲れ様でした!の手羽がお送りいたしました。
今日から片付けや打ち上げですね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。