【ビダモン2018】気になる「倍率」だけど、気にする必要は全然ないって話 1

2018年2月11日(日)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

大学関係者なら恐らくこう言うでしょう。

去年と今年の受験者数・倍率比較ほど信用できないものはない、と。

あ、ちょっとこの表現は語弊がありますな。
「ウソの数字を発表してる」というわけではなく、「いろいろな算出方法や解釈の仕方がある」「いろんな条件が重なるのでアテにできない」ので、「参考にはなるけど信用できるほどのデータではない」って意味です。


理由は3つあります。

一つ目は「定員の変更」
総入学定員は変えず、一般入試の定員を減らし、その分をAO・推薦入試やセンター方式等に回すのはよくある手段。そうすると、一般入試の志願者数が減っても母数が減るので、倍率的には去年より上がったように見えます。
例えば、こういうことですね。

地方だと「8割以上がAO+推薦入試の定員」なんてことは普通で、ある関西の美大関係者が「これだけAO・推薦で決まってると、一般入試は定員を補充するためにやってる2次募集試験のようだ」とおっしゃってました。

ちなみに文科省「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」によると、2021年度入試からAO入試(総合型選抜)は出願が9月以降(現行8月)・合格発表11月以降、推薦入試(学校推薦型選抜)は出願が11月以降(現行通り)・合格発表時期12月以降へ変更になる予定です。
関西美大は8月上旬のAO入試が一般的で、試験日がかぶらないように平日に試験をやったりもしてます。でもこれは夏休みだからできたわけで、9月となると日祝日にやるしかなく、より分捕り合戦が強くなるんじゃないかと思ったり・・。

また、学部での総入学定員は変えないんだけど、志願者数が厳しい学科の入学定員を他学科に回す・・・ってのもよくあること。

なので▲▲学科の志願者が多少減っても倍率が去年より上がったりすると。
これは簡単に図式化したもので、大学としての総収容定員が変わらなければ、学部間での定員移動も意外と簡単に(届出で)できます。「タマビが造形表現学部の定員を美術学部に移動し新学科2つ開設」「京都精華がポピュラーカルチャー学部新設」もそういう仕組みですね。
ただ(簡単に書くと)「学生■人につき教員は●名以上必要」という文科省ルールがあるので、学内的にいろいろ調整しないといけないわけですが・・。


2つ目が「補欠」
2月下旬になると「オレは●●学科の補欠◎番だけど、大丈夫かな?去年って何番まで上がったの?」なんて書き込みやつぶやきが毎年あるし、大学への電話問い合わせも多いです。
手羽も東京造形彫刻は補欠だったので補欠の方の不安な気持ちもわかるんですが、この「去年の補欠の繰り上がり数」も、本当にアテにならない数字で。
去年はいっぱい繰り上がったと思ったら、今年は数番で終わり、ってことはほんとよくあるし、もちろんその逆のパターンもあります。

これは「人気度が変わった」という考え方もなくはないだろうけど、「もろもろのデータを参考にして、今年は去年より合格者をたくさん出したから補欠の繰り上がりも減った」ってことがあるんです。
あ、これを意外と知らない人が多いんだけど、多くの大学が合格したけど抜けていく人を見込んで合格発表の合格者数は定員よりも少し多めに出すもんなんです。「入学定員=合格発表数ではない」ってこと。どれくらい多めに合格者を発表するかは当然各大学・学科バラバラだし、3で説明する「併願率」を踏まえて年によって変わります。
なので「補欠数は常に調整されてる数字」と考えてもらった方がいいです。(今日の主題じゃないので詳しくは改めて書きます)

「合格発表数は定員どおりにして補欠で補充する」が一番簡単なんだけど、あんまり補欠が繰り上がりすぎると「あの大学は人気がないんだな・・」と思われちゃうから、どれくらい合格者を多めに出して、補欠を発表するかってかなり難しく、ある意味大学と受験生との「かけひき」。
「多く入学させちゃってもいいじゃん。倫理的な問題はあっても大学経営上悪いことじゃないでしょ?どーんと合格出しちゃいなよ」と素人考えで思いますよね?
でも入学者数上限(超過率)に関する文科省のペナルティがあるから、定員ぴったり、もしくは若干多いぐらいになんとかしないといけないんです。これを無視してる大学もなくはないですが(ボソッ)。
なので 「去年より〇〇学科は多めに合格者発表したけど、意外と辞退者が少ないなあ・・あと二人くらい辞退してくれないと困るんだけど・・」という嬉しい悲鳴なケースもあったりします。


続く。


以上、こういうツイートを見かけて、



コメントにも「東工大は数学3時間」とか書いてあるけど、えーと、美大実技入試だと3時間・6時間の試験監督が普通なんだけど、の手羽がお送りいたしました。
手羽も昨日6時間の日本画「着色写生」の試験監督やってたもんで、ヘトヘトっす・・。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。