【ビダモン2018】美大入試当日に関する11のアドバイス

2018年2月3日(土)

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美大受験生の疑問にお答えする、略して「ビダモン!」シリーズをお送りしています。
これまでのビダモンはこちら。
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ムサビ中心に書いてますが、他美大入試でも参考になるはずです。


いよいよ今日からムサビとタマビの入試が始まるので、今日は「家を出る前から会場に着く」までの話を。


(1)もう一度募集要項を確認しよう
家を出る前に(できれば前日に)、最低3箇所確認をしてほしい部分があって。
それは、「場所(会場)」「試験日時」「持ち物リスト(携行道具)」です。
極端な話、会場と日時と持ち物さえ間違ってなければ、あとはその場に自分さえいればどうにでもなります。「教室は暖かいからどうの」とか「空気が乾燥してるからどうの」とか「待ち時間がどうの」とか「鉛筆は」とか「絵の具は作ってもってけ」とかは、あくまでもオプション情報にすぎません。
まずは「場所」「時間」「もの」、そして「自分」が正しい状態か確認を。

まずは試験日時
毎年1人ぐらいは日程を間違えてきちゃう受験生がいます。「誰かがそう言ってた」とか思い込み要素が大きいです。ちなみにうちの奥さんは日時間違えのスペシャリストで、これまでお葬式・友達の披露宴・保護者会の日を間違って行ったことがあります。「間違って知らない人のお葬式に参列しようとした」がマンガだと「おっちょこちょい女子。てへぺろ」で終わるけど、これが実話だから困ったもんでして。

次に試験会場
これも、「武蔵野美術大学」だから武蔵野市吉祥寺が試験会場だと思って吉祥寺校へ行っちゃう人が時々いるし、正門前に立ってたら「津田塾はここですか?」と津田塾受験生に聞かれたことがありました(実話)。
タマビの統合デザインや演劇は普段の授業は上野毛キャンパスだけど、試験は八王子キャンパスだったりするし、女子美はコース・試験によって相模原キャンパスと杉並キャンパスに分かれるので要注意。

最後に携行用具(持ちもの)。
これは後述します。

「調べるまでもない」かもしれないけど、もう一度最後に募集要項の確認ね。


(2)受験票があるか、もう一度確認しよう
受験票は大事なものなので、カバンにちゃんと入れたか、そして「どこに入れたか」の最終確認を。
ペラペラな紙切れだからあわてると鞄から探せず、試験が終わった後に「あ。募集要項の間に入ってた」「ジャンバーのポケットに入ってた・・なんでこんなところに・・・あの時は探しても見つからなかったのに・・・」と気が付くケースもよくあるんで、「どこに入れたか」も大事だったりするんです。そして受験が終わっても、合格発表・成績開示などで必要なものだから、大事に保管しときましょ。
また、間違って他大学の受験票を持って行ってしまうケースもあるのでこれも気を付けないと。
入構時に受験票チェックしたらタマビの受験票しか持ってないことがよくあって、微妙にムサビ職員はへこみます(涙)

ムサビとタマビは完全WEB出願なので、受験票は郵送されず、自分でPDFをプリントアウトして会場へ持っていくことになります。
3つポイントがあって、
●白い紙にそのままプリントしよう。
●切り取り線で必ず切って持ってきてね(折るだけじゃダメ)
●スマホで見せるのはNG。必ず印刷したもの

です。

以前、受験票をA4全体に拡大して持ってきた受験生がいました。
これ、すんごく気持ちがわかるというか、「そのままだと印刷した時に余白が多くバランスが悪いからわざわざ拡大した」ってのは美大生としては大事な発想とセンスなので、「もうこれだけで合格でいいんとちゃう?」と思ったりもするけど、「 印刷し、指定サイズに切り取った受験票を」と書いてあるので、これも受験という場ではNG(現地で仮発行)になるからご注意を。
手先が重要視される彫刻・空デ・工デ・建築の受験票は、長方形じゃなくあえて弁財天白龍王大権現とか複雑な形にして、美大生の造形心をくするぐるような、必死に切りたくなるような形で「受験票を切り取るところから試験が始まっとるんじゃい!」なパターンにしたらどうだろう。
手羽美術大学★ではそうします(初期設定を思い出した)


(3) 時計は必要!
普段はスマホで時間確認してるかもしれません。手羽もそうです。
でも、試験時は携帯含め電子機器は電源切ってかばんの中に入れるよう指示があります。 どの大学もそうです。会場には時計がないこともあるんで、持ってなかったらコンビニとか100円ショップでいいから安い腕時計を購入しときましょ。
家で使ってる目覚まし時計でもいいんだけど、音が響いちゃって場合によっては注意されるかも。


(4)「早めすぎる行動」もつらい
親や先生から「大事な受験なんだから早め早めの行動を」と言われるだろうし、私もそうした方がいいと思います。
ただ、ムサビ正門が開くのが試験開始1時間前、だいたい8時半頃なので、それ以前だと寒い正門前で待つことになるのね。私達も早く構内に入れてあげたいんだけど、モチーフの最終確認が終わるまでは誰も入れられないんです。
毎年7時ぐらいからポツンと正門前で待ってる方がいるけど、さすがにこれは早すぎで。あの時間だと、ムサビの周りや鷹の台駅周辺はお茶を飲むところも何もないし、暖を取れるところもなく。
なので、「8時半ごろにムサビに着く」「8時には国分寺駅をクリアしてる」ぐらいの目標がちょうどよく、早く着きそうだったら国分寺駅で時間をつぶした方がいいです。
タマビも東京造形も大学前はなんもないよ。橋本駅でステイしましょ。
つまり大学の下見では「大学周辺で朝から暖を取れそうなところ」もチェックした方がいいってことです。「朝から」がポイントで普通の喫茶店だと朝の7時からはやってないのよね。


(5)ムサビ実技入試はカルトン(パネル)が絶対に必要
「ムサビ実技試験で一番忘れて困るのは何か?」の質問には即答できます。それはカルトンまたはパネルです。これだけわかってもらえてればいいくらい。
カルトンとは「デッサン用の画板兼紙ばさみ」のことで、 詳細は造形ファイルをご覧ください。
カルトン | 武蔵野美術大学 造形ファイル

数的には受験票・時計を忘れてくる人が多いけど、最悪それらはなくてもなんとかなるもの。 でもカルトンやパネルを忘れちゃムサビ実技試験で絵が描けません。
実は「忘れちゃった」以外に「大学で配られる」「貸してくれる」という思い込み、もしくは予備校の先生がそう指示したケースの方が多かったりします。
理由は簡単で、タマビ入試や他大学試験とゴッチャになってるパターンですね。
カルトンやパネルを用意してくれる大学、イラストボードまたは水張りされたパネルを回答用紙とする大学がありますが、ムサビ実技入試で配られる回答用紙はすべて「紙」の状態です。 木炭用紙だったりケント紙だったり。あ、油絵はキャンバスだけど。

確認してみましょ。
ムサビ募集要項P27「携行用具」をご覧ください。


ことごどく実技入試には「パネルまたはカルトン」と書いてありますよね。(油絵専攻の油絵試験以外は)。

ではタマビを見て見ましょう。
油画は、


持ち物に「木炭紙大のカルトン」と書いてあり、版画も同様。
でも日本画は鉛筆デッサンでは「カルトンまたはパネル」とあるけど、水彩では不要になってます。

一方、グラフィックデザインは、


注意書きに「カルトン・パネルは不要」と書かれてあり、デザイン系は全部そうだし、彫刻学科もカルトンは不要です。*間違ってたら怖いので必ず各大学の募集要項を確認してね。

「ムサビ実技入試では全学科カルトンorパネルが必要だけど、タマビ実技入試は学科・科目によって変わってくる」ってことは、ムサビ試験が先にあれば(誰かが「いらない」と教えない限り)忘れることはないだろうけど、先にタマビ試験があって道具類をそのままでムサビに行ったら忘れちゃう可能性が高まる、と。

で、忘れた場合、ムサビはカルトンやパネルの貸し出しを一切行っていないので、気が付いた段階で世界堂さんへ買いに行ってもらうことになります。
これは「基本的には貸してない」「貸すこともないこともない」ではなく、「貸し出していません」の手羽記事では珍しい超断定形です。過去に貸し出したことは一度もありません。「いいや。貸してもらったことがあるはず」「借りたってやつを知ってる」というのは完全に親や予備校の先生の思い込みです。断言できます。 100%です。
毎年、試験開始直後、「あれ。パネル貸してくれないの?」と気が付き、世界堂へパネルを買いに走っていく受験生が後を絶たなくて・・。

1回の試験のためにパネルを購入するのって、ちょっともったいないんですよね。カルトンを忘れると、お金的にも時間的にも精神的にも非常にロスになる。 予備校講師やお母さんや友達、SNSの
「きっと忘れたら貸してくれるだろう」
「昔は貸してたと思う」
「去年誰かが貸してくれたって言ってた」
「確か水張りされてるんじゃない?」
「国分寺から無料シャトルバスが出てるはず」
な不確かな情報に惑わされないでね。

特に。
今年から視覚伝達デザイン学科の鉛筆デッサンは「アトリエでの静物デッサン」で実施することが発表されてます。
2018(平成30)年度入学試験の変更点
つまり「モチーフ囲ってのイーゼル試験」の可能性が非常に高いってことなんです。アトリエでも静物デッサンを机上でやる可能性があるのでこの説明文だけでは断言できませんが、普通に考えればイーゼル。10年前ぐらいまでは普通に視デもアトリエ+イーゼルで試験やってたけど、机上試験が続いちゃったんであえて「変更点」として発表したってことは、そういうことなんじゃないかと。
で、机上試験だとパネルを忘れてもなんとか描けますが、イーゼルじゃカルトンかパネルがなけりゃ100%描けません。視デ受験生は例年と違うので要注意です。


(6)ムサビ4号館下パン屋は営業してません
ムサビにはおいしいおいしいパン屋「EMU」があるんだけど、入試時は営業してません。

え?パン屋が営業してるかどうかがそんなに大事かって?
終日試験の受験生はお弁当を持ってくるよう募集要項に書いてあるので(学食もやってます)、普段の入試日ではそんなに大事ではありません。でも、デッサン試験日ではすごく意味があって。

木炭デッサンでは食パンをケシゴムとして使用するんです。
食パンの白い部分をちぎって、こねて、ネリケシのようにして使うの。この文明の進化した現代、「この後スタッフがおいしくいただきました」と必ずテロップで出ちゃう時代でも普通にパンを画材として使ってます。
信じられない方は、やっぱり造形ファイルで細かく説明してくれてますので参考に。
木炭画用消し具(食パン・布) | 武蔵野美術大学 造形ファイル
造形ファイル、便利だなあ。こんな素晴らしいものを大学で作ってるってすごいなあ(宣伝)。
ちなみに「なぜ食べ物なのに『食パン』というのか。それは食用のパンとデッサン用のパンがあるからだ」と言われたりもしますが、諸説あるようです。

木炭デッサン試験の時、世界堂の前に「食パンあります」と張り紙が出てて、一緒に歩いてた職員が
「バターも塗ってなくて焼かれてない食パンじゃ誰も買わないでしょうに。受験生のためならアンパンとか焼きそばパンを用意してあげりゃいいのに。だからムサビってバカなんだよ」
と文句を言ってたことがありました(実話)
いやいや、受験生のために食パンなの。アンパンじゃ全く意味がないの。ていうか世界堂で売ってる段階で画材だと気が付いてほしいのだけど。
世界堂で売り切れてたら怖いから、パンは駅前のコンビニとかで事前に購入しときましょ。自分好みの銘柄もあるでしょうし。ちなみに手羽はいろいろ試して140円の安い食パンを愛用してました。高級パンは油分多くて使いにくいんですよね。


(7)学校に着いたらヘッドフォンを外そう。
電車遅延などで試験時間繰り下げが決まったら、誘導係や構内放送でくどいほどアナウンスされるんだけど、聞いてない受験生がいるんですよ。 「あれだけアナウンスして聞いてないって、どういうことだ?!」と思うんだけど、それはヘッドフォンをしてるから。
大事な情報が流れてるかもしれないから、とりあえず大学に着いたらヘッドフォンを外すか、ボリュームを下げようね。


(8) 教室に着いたら、まずは受験番号の確認を!
ムサビは試験が始まる前に試験監督が「この教室は受験番号●番から●番までの教室です。ご確認ください」と伝えるようマニュアル化されています。でも、それでも気が付かない受験生がいまして・・。
試験が始まってから受験票のチェックを試験監督が一人ひとりしていくと、ガンガン描いてる時に、試験監督から「・・・あなた、この教室じゃないよ(汗)」と言われ、あわてて教室を移動するケースが年に数件あります。この場合、移動して一から書き直しなんです。もちろん時間の配慮はありません。

必ず教室についたら入口表示でまず確認。
室内に入ったら室内黒板にその教室の該当番号が書かれてあるので、そこでも確認。
そして試験監督が入ってきたところでもう一度確認。
試験が始まってからもう一回確認・・・ぐらいのことはしてもいいです。
「え。そんなの当たり前でしょ・・」と思うかもしれないけど、意外と緊張しててできないもんなんで、またそういう時に限ってたまたまその席の受験生が休みだったりするんですよ。


(9)試験が終わるまで学校から出られません
1日学内で試験を受ける時、学外に出ることはできないので昼食は学内で取るしかありません。一応学食も営業してるけど、お弁当を持ってきてくださいな。
ちなみにムサビの近くにはコンビニがないので、鷹の台駅周辺で購入するしかないです。
コンビニマップを作ってみた。

昔は駅前と創価高校前のセブンイレブンしかなかったけど、ずいぶん便利になりました。
といいつつ、手羽はほとんど鷹の台駅使わないんで、潰れてるコンビニがあったらムサビ関係者の方教えてください・・。


「昔は言う必要なかったけど、書かなくちゃいけなくなってきたなあ・・」なのがこちら。
(10)保護者の方は入構できません。子離れしましょ
入構受付してる時に、お子さんと一緒に何事もないように入構してくる親御さんが多いことにびっくりしました。そのまま一緒に試験教室まで入っちゃうんじゃないか、いや一緒に受験するんじゃないかって勢いの。
今は保護者待機室を用意してる大学もありますが、ムサビにはないし、駐車スペースもありません。親として気持ちはわかるけど、そこはグっと我慢して正門で別れてください。


でも、いろいろ言ってきたけど、一番いいたいのはこれです。
(11)振り向くな。前に進め
電車やバス、タクシーの中に荷物を全部忘れてきてしまう受験生も毎年何人かいます。
「大学につくまで気を抜いちゃダメでしょ!」と指摘するのは簡単なんだけど忘れてしまったものは仕方ない。

「受験票なくすなよ」「カルトン忘れるなよ」「時計は買えよ」「風邪引くなよ」「歯磨けよ」とカトちゃん的に書いてきましたが(知らない人はお父さんに聞こう・・)、もっと究極な話、「試験はその場に自分がいることが一番大事」なんです。
道具を忘れてもお金があればなんとかならないことはないし、受験票は会場で仮発行できるし、最悪鉛筆1本と消しゴム、または絵具3色と筆があれば絵は描けます。
「安全に気を付けながら時間までに会場へ着く」。
それさえクリアできれば「後はどうにかなる」と割り切る気持ちも、ある段階では重要だったりするわけで。試験当日はいろんなことが起きると思うけど、特に実技試験ではポジティブに、前向きに考えた方が勝ち。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。