美大生は旅へ出よう!海外への旅をオススメする理由

タマビ卒業生の上野です。美大に通った4年間ブログを書いていたのですが、振り返ってみると旅の記録ばっかり。日常生活の中にも綴りたいことはたくさんあるはずなのに、やっぱり旅の「刺激」は日常では得られないことが多いのです。 ぜひ今美大・芸大に通うみなさんにも旅をしてほしい!今回は、私の独断と偏見で(!)海外の旅をおすすめする理由をまとめてみました。読んで、海外旅熱をあげてください!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【美大生が旅すべき理由①】
アート・デザインは万国共通!そしてどんな国にでもある。



  • ▲青空美術館と名乗る街Valparaíso、壁画で埋め尽くされている。(2013年2月, Valparaíso, CHILEにて)

どんな土地へいっても、世界万国、アート・デザインに出会います。美大・芸大生とって旅の最大のおもしろさのひとつは、この出会いです。
世界各国、ほとんどの国には博物館や美術館があります。その国がアピールしようとしているものがわかります。たとえば、イギリスに行けば、たくさんのスフィンクスやロゼッタストーンから、エジプトやインドを植民地にしていたことがわかりますし、キューバの博物館へ行けば、革命がいかに人々の生活を救ったかがわかります。
そうした美術の場だけでなく、街のなかでもアートに触れることができます。道端で絵を描いて販売している人も多いですし、ストリートペイントや壁画も多くいます(ここでは観光客目当ての商業色の強い人も多いので、アーティストとは呼ばないでおきます)。電車や駅の広告、テレビのコマーシャル、街中のサイン表示はもちろん日本と違うし、私がびっくりしたのはトイレの高さだって違う。感性をくすぐるものがたくさんあります。

旅に出る前には、行きたい場所や見たいものを探すだけではなく、簡単でよいから行く先の歴史に目を通し、その地にゆかりのあるアーティストやデザイナーをあらかじめリサーチしておくのがオススメです。


  • モロッコの豊かな色彩感覚。お土産品のバブーシュ。 (2012年10月 マラケシュ,Morocco)

できれば、その国の人が何を生業にしているのか、今の社会状況についてもアンテナを張ってからいくと、見えてくることが多いはず。なぜなら、絵画を見ても、ナポレオンやルイ14世が、どんなことをした人なのか知っているだけで、絵から見えてくることが違うからです。
また、なにか旅のテーマを決めるというのもおもしろい。私の場合は、もともと色が好きなので色彩感覚を探るモロッコの旅や、マティスとシャガールを軸にみるフランス・ニースの旅などをしました。関連する小説やエッセイを読みながら旅をするのもオススメです。

学校で教授や著名人や先輩から学ぶことも多いですが、旅を通して日本のスタンダードがスタンダードじゃないことに気が付けるおもしろさ、自分で調べて深い学びを得ることは、世界中どこにでもあるアート・デザインとの出会いならではだと思います。



【美大生が旅すべき理由②】
言葉が通じなくても、もうひとつの言語を美大生は持っている!


  • 片言の日本語で案内してくれた現地ガイド。 (2012年10月 マラケシュ,Morocco)

よく、「英語が苦手なんですが大丈夫ですか」と美大生に相談されます。もちろん言葉は通じたほうがずっとおもしろい。相手が考えていることや見ている世界を、言葉で理解できるから。でも、行くだけなら、見るだけなら、言葉が通じなくても十分大丈夫。ジェスチャーや知っている単語で、たいていのことはなんとか伝わります。欲しい顔して指差せばなんでも買えます。眉間にしわを寄せ怖い顔で「あ?」と言われても、とにかく気にせず、気持ちをまっすぐに伝えれば、同じ人間、伝わるものです。

現地の日本語を話せる人を見つけるのもオススメです。私はモロッコ人で日本語を話せる方に、イスラム教の考え方を教わりながら街を歩きました。宗教がぐっと身近になり、新しい発見がたくさんありました。
そして、美大・芸大生ならペンと紙があれば絵が描ける!絵は、世界で通じるひとつの言語。じっくり現地の人とコミュニケーションできる機会ができたら、絵を描きながら話をし、お互いのことを知る機会になったりして。そんな筆談もおもしろそうですね。


【美大生が旅すべき理由③】
見ているだけで満足できなくなる。それが留学の動機にも!?



  • ニューヨークSOHOで行われていたオープニングパーティーを訪れた。(2009年2月, NY, USAにて)

  • 留学中に訪れたアートフェアARMORY SHOW。(2009年2月, NY, USAにて)

高校生のときに両親が(頑張って)ニューヨークに家族旅行へ連れて行ってくれました。初めていくニューヨークに大感激をした私は、今度は観光じゃなく、じっくりアートスポットを回りたいと思い、大学1年生で再びニューヨークへ旅に出掛けます。カメラを片手に1000枚以上の写真を撮りながら、ひたすら美術館を周り、チェルシーのギャラリー街(Manhattan島の南西部一体にギャラリーが集中している)に1日中入り浸り、Strand Book Store(創業1927年の本屋さん、アートや写真、映画や演劇などが充実)で気になる本を片っ端から読み、疲れたらセントラルパークでベーグルをかじる。
そうしているうちに、こういう街で学び、住み、暮らし、生活を営んでみたいと思うようになります。お世辞にも綺麗とは言えないニューヨークで、人種も価値観もごったまぜ、雑然とした街で、だけど洗練されたおもしろいクリエイティブが生まれることが、私には不思議で、魅力的で。これが留学のきっかけ。その2年後、3ヶ月でしたがニューヨークへ再び留学に出掛けました。
そんなわけで、インターネットでいろいろ調べたり、作品集を見たりして「オランダのデザインは素敵だなぁ」なんて留学先を決めるのもいいけれど、旅での生の出会いで、自分の目で見て感じて留学先が決めるのは、学びたいものも感じたいものもより明確で、濃厚な時間になるんじゃないかと思います。


【美大生が旅すべき理由④】
時間がたっぷりつくれる!たっぷりだからできる旅がある。


  • 旅の途中には、旅の感動を分かち合える旅の仲間ができたりする。(2013年3月, Uyuni, Boliviaにて)

そうです、そしてその旅が「今」でなくてはならない理由。それはもちろん、社会人になったら時間を気にせず旅をするなんて、そう容易でないからです。もし休みがとれても、ハイシーズン。お金もかかるし、どこへ行っても日本人ばかりだし、人が多くて美術館に行ったらクタクタです。


  • ▲私の卒業旅行は、35日間ヨーロッパ12カ国を回る旅。(2011年2月, Bath, UKにて)

時間がたっぷりあるとできる旅、というのがあります。たとえば、電車でいろんな国や都市を回るヨーロッパ一周(私の卒業旅行)、アメリカを西から東へ横断(私の弟がチャレンジ!)、バスを駆使して世界遺産を巡る南米旅(旦那の卒業旅行)、ボランティアをしながら東南アジア制覇(仲のよい友達)、気に入った国での1ヶ月のロングステイ(この前チリに遊びにきた後輩)、全部学生だからできる旅で、社会人じゃなかなかできません。現に社会人になってみると、ツアーや直行便のない国へは足が運びにくくなってしまいました。
学生だって、課題、バイト、サークルが忙しい‥‥‥、のですが、それでも時間が「つくりやすい」のは学生ならでは。ぜひ、この春休み、時間もお金も捻出し、旅に出掛けてみませんか。

個人的には、写真を撮るのが好きだということ、くいしんぼうで各地の料理を口にするのが楽しいということ、日常の時間の流れから切り離されて非日常に身をおけることなど、他にもたくさん旅の醍醐味はあるのですが、「美大・芸大生ならでは」な切り口に絞って選んでみました。いかがでしたでしょうか。春休みのチケット、まだ間に合います!(笑)

勝手に連載!次回は、お金がない美大生に、ケチケチ旅の知恵を伝授したいと思います。




▼勝手に連載!「美大生は旅に出よう」

#01 「美大生は旅へ出よう!海外への旅をオススメする理由」
#02「美大生は旅へ出よう! お金はちょっとでも、ずっと豊かに旅はできる!」
#03「美大生は旅へ出よう! 見て感じて楽しむ 旅で出会う「美」~欧州編」
#04「美大生は旅へ出よう! 見て感じて楽しむ 旅で出会う「美」~モロッコ編」
#05「美大生は旅へ出よう! 見て感じて楽しむ 旅で出会う「美」~南米西側編」

#06「憧れのジブリの世界が現実に!? ジブリ好きなら一度訪れたい南米の森」
#07「絶景!フラミンゴの住む南米の砂漠街。サン・ペドロ・デ・アタカマ【前編】」
#08「絶景!世界一星の綺麗な南米の砂漠街。サン・ペドロ・デ・アタカマ【後編】」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

OTONA WRITER

natsumiueno / natsumiueno

編集者/メディエイター。美大での4年間は「アートと世の中を繋ぐ人になる」ことを目標に、フリーペーパーPARTNERを編集してみたり、展覧会THE SIXの運営をしてみたり、就活アート展『美ナビ展』の企画書をつくったりしてすごしました。現在チリ・サンチャゴ在住。ウェブメディアPARTNERの編集、記事執筆など。