美大受験生の疑問にお答えする「#美大受験2020」シリーズをお送りしてます。
#美大受験 では、ムサビ、または関東美大の一般受験入試(AOや推薦入試じゃない)を具体例で使ってますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはず。
これまでの話はこちら。
■東京五美大2020一般入試スケジュールからわかる2つのアドバイス
■交通に関する8つのアドバイス
■美大入試で必要な持ち物に関する4つのアドバイス【カルトンと食パン】
■美大実技試験に関するたった1つのアドバイス
■東京4美大2020年度一般入試志願者数(確定版)から言える1つのアドバイス
■美大の学科試験に関するたった1つのアドバイス
■大学職員っぽい人の勧誘と裏ルートとお守り
■「倍率」は全然参考にならないって話 1
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
「去年と今年の受験者数・倍率比較ほど信用できないものはない」という話の続きです。
理由3つ目が「併願」。
例えば、美子さんが●●学科と▲▲学科を併願し、なおかつ▲▲学科は一般方式とセンター方式を併用したとします。
併願などの全部の志願者数を足した数字を「総志願者数」「延べ志願者数」「見た目志願者数」と言い、通常、大学が公表するのはこの数字で、ここでは「3」。
で、美子さんの人数を「実志願者数」「実数」と言い、もちろんここでは「1」になります。
つまり、合格した時の選択肢は1つだけ・・・美子さんは一人だけなので、全部合格しても1つ以外は全部「蹴る」ことになる、と。
倍率が高いからといって合格者全員がそのままその学科を選択するわけじゃないから、本当の倍率はずいぶん下がるので、受験者数・倍率って参考にはなるけど信用はできないのです。
この「延べ人数」「見た目志願者数」をうまくブランディング広報に使っているのが、ご存知近畿大学さん。
メディアでは
「志願者数は7年ぶりに減少したが、推薦入試を含む総志願者数は20万人を超え過去最高を更新した!」
「7年連続で近畿大が志願者数1位!!」
と言われてますね。
この数年の近畿大学の広報戦略は目を見張るものがあり、先生方から「近畿大の志願者の伸びを見習え!うちもあんな広報をやれ!」と言われた大学広報関係者も多いのではないでしょうか。
近畿大広報担当者のセミナーはいつも満席だし、確かに参考になることも多いです。
という状況で、何書いても妬みにしかならないのだけど(笑)、「こういう見方もある」程度に分析していきます。
2年前あたりから、ようやくメディアも併願をカウントしない「実志願者数」に注目するようになってきました。
実人数って生々しいデータなので公表してる大学はほとんどなかったんですが、この数年でずいぶん増え、週刊朝日さんが調べるようになったのです。
では、「実志願者順ランキング」はどうかというと、こうなります。
実は近大さんの実志願者は3万人ぐらいで実志願者で見ると12位ぐらいなんですよ。
1度の試験で複数併願できたり、自動的に併願になっていたり、併願割引作ったり、受験方法の仕組みで併願率を高め、「見た目志願者数」を高めてるわけ。
しかし近畿大の併願率512%、千葉工大489%ってすごい・・・。
この仕組み(仕掛け?)を先生でも意外と知らない人が多く、入試スタッフが「近畿大の志願者数の伸びを見習え?そうですね・・・で?」という反応を返しちゃうから、先生に「うちの入試広報はやる気がない!」と怒られるのは、最近の大学あるあるかもしれない(笑)
あ、戦略的に延べ志願者数を増やすことを否定してるわけじゃありません。
やっぱり総志願者数が増えた方が嬉しいし、「行列が行列を呼ぶ」ブランディング広報はあるし、法人運営的には受験料収入と関係する延べ受験者数もすごく大事だし、併願率が高いのは「複数学科受験してでも入りたい大学(ブランド力がある大学)」とも言えるわけで。
ただ、入学定員が厳格化されたことで難関大の受験を避ける傾向が強くなっていると言われてます。
「2年連続で延べ志願者が増えた!」と喜んでみたら、実はそれは第1ー3志望校ではなく「第4・第5志望校」の現れで、長い目で見たら危険な兆候だったりするし、他学科・他大学の滑り止めとしての価値が上がっただけで合格発表したら去年よりいっぱい辞退者が出た・・なんてことも考えられます。
先生やOBが「●年連続で受験生増えた!」と喜んでるのを見てると「あ、あのー、分析しないとなんともいえないんだけど・・・ま、いいか・・」と。
ちなみに「合格したらその大学を選ぶ(入学する)確率」を「歩留まり率」といい、日本で歩留り率の高い大学のひとつが東京藝術大学です。
去年の数字をご覧ください。
合格者数=入学者数、つまり誰も辞退していない歩留まり率100%の状態。
表にする意味があったのか葛藤しちゃうくらいの100%。何年か前に99%になったことがあるくらいで東京藝大は毎年100%です。
ただここが難しいところなんですが、歩留まり率が低いのは単純に「歩留まり率が低い=人気のない大学」にはならないので、ほんと入試データの読み方って難しいのです・・。
ちなみにちなみに先日放送されたマツコ会議「天才芸術家の卵が集まる…東京藝術大学の卒業展に潜入!」の中で「就職率20%」とさんざん言われてましたが、この「就職率」も非常に怪しい数字というか、信用しちゃいけない数字で。時間があればこの「就職率」について書きますかね。
そもそも「多様な価値観・キャリア」と言われるのに、いまだに「企業に就職する=いい人生」という指標・考え方がもう古いし、アップデイトされないといけない気がするんだけど。
続く。
以上、「翔んで埼玉」の主要キャストが
・伊勢谷友介:東京藝大卒
・中尾彬:ムサビ卒
・京本政樹:タマビ卒
・竹中直人:タマビ卒
・加藤諒:タマビ卒
と美大、というかタマビ率が高いのが気になった手羽がお送りいたしました。
タマビは草でも食っとれってことか。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。