【 #美大受験2020 】東京4美大2020年度一般入試志願者数(確定版)から言える1つのアドバイス

2020年2月5日(水)

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美大受験生の疑問にお答えする「#美大受験2020」シリーズをお送りしてます。

#美大受験 では、ムサビ、または関東美大の一般受験入試(AOや推薦入試じゃない)を具体例で使ってますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはず。
これまでの話はこちら。
東京五美大2020一般入試スケジュールからわかる2つのアドバイス
交通に関する8つのアドバイス
美大入試で必要な持ち物に関する4つのアドバイス【カルトンと食パン】
美大実技試験に関するたった1つのアドバイス
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。

 
昨日タマビが2020年度一般入試志願者数を発表したので、これで女子美術大学、東京造形大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学の東京4美大の志願者数が出そろったことになります。
女子美術大学|2020 年度一般入学試験(A 日程/センター利用Ⅰ方式・Ⅱ方式)志願者数
東京造形大学|2020年度一般入学試験 志願者数(確定)
多摩美術大学|2020年度 美術学部一般入試志願状況
武蔵野美術大学|2020年度一般選抜志願者数


ただ、大学公表データには昨年度の数が入ってないんで、誰もが気になる「で、去年と比べてどうなのよ?減ったの?増えたの?」がわからないんですよね。

なので心優しい手羽が作ってみました。え?いい迷惑?
1時間ぐらいで作った完全手羽オリジナルなので、数字が間違ってたら指摘してください>大学関係者
受験生は正確な数字を上記公式大学サイトで必ず確認してね。

■補足:
基本的に一般方式とセンター方式は、学科試験(国語・英語)を大学で受けるかセンター使うかだけの違いで(配点や科目の違いはあります)両方を併願する人が多いです。また実技試験を伴わないセンター方式もあり、大学へ行かずにセンターの点数だけでいいので、一般方式を併願する人は少ない傾向にあります。
ムサビが造形構想学部を作った時に「実技試験のない美大なんて」と結構叩かれましたが、実は随分前から実技試験を必要としない美大入試は存在してたんです(笑)

補足終わり。
では、まず各大学を軽く触れて、最後に全体的な傾向とそこから言えるアドバイスという流れで。

最初は女子美術大学。

全体で26%アップ。
あ、タイトルで「確定しました」と書いてるけど、女子美さんはB日程があるんで厳密には確定ではありません。


続いて東京造形大学

東京造形さんは5年連続で増加。
5年連続の志願者増は4美大では東京造形大学だけ。


そして多摩美術大学。

全体で見るとほぼ去年と同じ数字になりますが、今年から始めたプロダクトデザインのセンターII式分を抜くとマイナスになります。


最後は武蔵野美術大学。
まずは造形学部

全体で2.5%減。
建築学科が3年連続で増えてたけど、今年減っちゃった。

続いて造形構想学部


  • センター5教科方式は3月2日(月)まで出願受付けしてるので、厳密にはまだ確定ではありません。

全体だと約21%減。クリエイティブイノベーション学科(CI)の減少が大きいですね。
新学科の最初の年は入試広報も力が入るため「ご祝儀志願者」が発生するから、翌年減ることは予想してました。2年目募集は「本当の数字に近づいた」と捉えるべきなんだけど、手羽の予想よりちょっと減り幅が大きかったかな。
ちなみに河合宿の最新のデータ見ると、CIの偏差値は52.5。


今年度の4美大全体的な特徴としては、
●芸術学系がすんごい増えた
●彫刻が増えた
●情報デザイン系が踏ん張っている
●プロダクトや工芸系が減っている

が言えるかも。

芸術学系と彫刻はこの数年ずっと減少してたので、「より戻し」が起きたと考えてよさそう。
定員が少ない学科でもあるので、女子美さんのアートプロデュースは前年比300%なんて数字になってたりします。
情報デザインもこの数年は好調で、ムサビのデザイン情報学科は視デについで2番目にムサビで志願者が多い学科を去年からキープしています。
ただ、プロダクト系や工芸系は去年から急に全大学で減り出した印象があります。ムサビの工デは一般方式だと空デにとうとう志願者抜かれてましたし。
 

で、この志願者数一覧から言える、受験生に送るアドバイスは・・・

これだけじゃ何にもわからない。自分が頑張るだけ

です。
ちゃんと最後まで聞いて(涙)

3つ理由があって、1つ目は「毎年微妙に定員はいじられている」ということ。
推薦入試などに定員を移動させ、一般入試の定員を減らす(または増やす)定員移動を毎年微妙にやってるので、「受験生が減った=倍率が去年より下がる」には必ずしもなりません。

2つ目は「志願者比較は数年分見てみないとわからない」
昨年度が大きく落ちたから今年が増えたように見える(「下げ止まり」「底をついた」「より戻し」と表現します)だけで、5年分見てみたら下降ラインには間違いない・・・またはその逆ってことがよくあります。
作っといてなんですが、昨年度比較だけで「●●学科は人気が落ちた!」「上がった!」と語るのはほとんど意味がなく。

3つ目は「あくまでもこれは『見た目志願者数』」ということ。
多くの受験生は他学科併願や一般方式・センター方式併用をしてるので、私たちはこの数字を「見た目志願者数」という表現を使っています。すぐ手に入るデータだから見た目志願者数は「参考」にはするけど、これで一喜一憂する大学入試関係者はいません。
この「見た目志願者数」をうまく使ってるのが某近畿大学さんで・・・と細かくは後日書きますが、大学入試関係者が大事にしてるのは「実人数」や「どういう人が受験したか?」だったりします。
例えば「クリエイティブイノベーション学科の志願者が減った」といっても、去年より造形学部や美大併願者が減って、一般大学併願者や高偏差値高校からの受験者が増えていたらムサビ的には万々歳なわけで、多分今頃入試本部はその分析をやってる最中じゃないかと。

なので、志願者数を見て「う、うわ。志願者増えてるやん(怖)」「減って合格しやすくなったんじゃね?(嬉)」と考えるのは時間の無駄で、自分は精いっぱいやるだけってことなのです。

ちなみに今わかりにくくなってるのが、受験生の傾向。
昔だと「第1志望学科を中心にして、滑り止めで第2、第3志望学科を受験する」が主流でしたが、数年前から「無理めな第1志望学科は受験せず、第3、第4希望を受験する」という傾向が出てきました。
なので教員は「受験生が増えた!!」と喜んでるけど、入試部署の職員は「あそこの大学(学科)が減って、うちが増えるということは、今はいいけど18歳人口が大きく減り出した将来的に・・」と逆に不安に感じてる人の方が多いかもしれません。

 
最後に。
以前はほとんどの大学が一般入試志願者数を入試前に公表してました。
でもAO・推薦入試で定員の7、8割を確保してる大学が多くを占めてる現状では、特に地方大学では「一般入試はオマケ。補充試験みたいなもん」な状態になっており、そして定員割れしてる大学が増えてきてるので公開しない大学がどんどん増えてます。

なのでいまだに試験前にちゃんと一般入試志願者数を公開してるこの東京4美大を褒めてほしいのです。
もう意地で出してるようなもんで(笑)、評価されないと来年からなくなるかもしれません。
さっきは「参考レベルの数字」と言いましたが、美大全体の動向をすばやく手っ取り早く分析できるデータはこれしかないんですよね。
当たり前のものをずっと残すためにどうぞよろしくお願いいたします。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。