美大受験生へのアドバイスをお答えする恒例の「#美大受験」シリーズ。
#美大受験 では、ムサビまたは関東美大の一般選抜を具体例で使ってますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
■東京4美大2026入試日程から言えるたった1つのアドバイス
■美大入試で家を出る前に絶対確認したい3つのこと(試験日時編)
■美大入試で家を出る前に絶対確認したい3つのこと(場所・会場編)
■美大入試で家を出る前に絶対確認したい3つのこと(持ち物・携行用具編1)
■美大入試で家を出る前に絶対確認したい3つのこと(持ち物・携行用具編2)
■ムサビ実技試験で絶対に絶対に忘れちゃいけないものがある
■雪や電車遅延で遅刻しそうな場合はどうすればいいのか? #1分でも遅刻するとダメなの? #遅延証明書や事前連絡は必要?
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
今日からタマビ入試も始まるので、美大入試の最大の特徴である「実技試験」について、前日、いや当日に聞いても点数アップに役立つアドバイスをお送りします。
それはひとつだけ。
問題文をちゃんと読もう。
・・え?「それって学科試験のアドバイスじゃないの?!」ですって?
とんでもない。これほど実技試験で超実用的で、即効力があり、簡単に得点を稼げる方法は他にないんですよ。
これには2つの意味があります。
一つ目はそのまま、「『条件』も含めて問題文だからしっかり読んでね」という意味。
例えば例年、タマビのグラフィックデザインやムサビ視覚伝達デザイン学科等の試験問題は「条件」「設定」が多く書かれてます。これをよく読んでないと痛い目を見ることがあるんですよ。
去年のムサビ視覚伝達デザイン学科「デザイン」を例にしましょう。
ムサビ視デは条件に書いてあるとおり、塗っていない余白は「白色」扱いされますが、タマビグラフィックや工デ「デザイン」は余白を白く塗らないと「未完成」とみなされます。同じような試験なのに「白」の扱いが違うんですね。「ちゃんと試験問題を読まないとダメ」のいい例。
(「去年の入試は」です。今年はどうなるかもちろんわかりません)
また、視デ「デザイン」は条件の中に「答案用紙は縦横自由」とありますが、これは各実技試験で違って、この典型例が基礎デザイン学科。
基礎デ「基礎造形」では、
「答案用紙は横長で」とあるけど、一方基礎デ「感覚テスト」は
「答案用紙は縦長で」とあるんです。
同じ学科の試験でもこういうことがあるんですよ。
入試年・受験学科科目によって紙の縦横指定は違うので、「横長で」と言われてるのに読み飛ばして縦位置で描いてしまうと・・というわけ。
去年の対策をみっちりやった人ほど気が付かないこともあって、例えば去年なかった「左下に●文字以内でタイトルを入れなさい」と今年は問題文に入ってるのに、去年通りにやってしまって書き忘れてしまう、なんてことも。
これも「ちゃんと問題文を読もう」のひとつです。
ただ「条件もよく読もう」と書いてきたけど、建築学科「鉛筆デッサン」なんて、
完全文系な手羽には、この理系な設定・条件群を読みこなすのにすごく時間がかかってしまう・・・。もう条件3あたりで「うがああああ(混乱)」と叫びたくなります。
なおかつこの立方体はコンクリート素材をイメージして描かなくちゃいけなかったり、1.8mの人物もいれるよう指示があります。しかも立方体等のモチーフがその場にあるわけじゃないから、完全に頭の中で組み上げたイメージを作り上げないといけない。
自分は平面構成とかはセンスがないまでも、なんとなく問題文からイメージを沸かせることができるけど、この建築「鉛筆デッサン」は絶望的に描けない気が毎年するんです。
つまり、鉛筆デッサンって「絵がうまいかどうか」を見るだけじゃなく、理系力を問うこともできるってわけですね。
奥深いでしょ?
「問題文をちゃんと読もう」の意味の2つ目を説明する前に、まず「モチーフ」 という言葉を解説します。
美術用語としての「モチーフ」は主に2つの意味がありまして。
1つ目は「絵や彫刻で再現するための観察される対象」。多くの方がイメージする「モチーフ」はこれじゃないかしら。これを仮に「モチーフA」とします。
2つ目が「題材や動機」という意味で、違う単語だと「テーマ」「きっかけ」「お題」。
あくまでもそこに存在するのは「きっかけ」であり、そこからどう発想を展開させたかの着眼点・発想力などを見るもの。これを仮に「モチーフB」としましょう。
で、去年の工芸工業デザイン学科「鉛筆デッサン」をご覧ください。
「目の前にあるものをじっくり観察して、どれくらい質感などを忠実に描けるか」を問うオーソドックスな問題で、多くの方になじみのある、すぐに想像できる美大実技入試らしい「モチーフ」といえます。
つまりこれが「モチーフA」パターン。
ちなみに工デ「鉛筆デッサン」は必ず工業製品がモチーフに出てきますが、恐らく「絵をリアルにした場合に工業製品として成り立つ構造を保っているか?」も採点者は見ていると思います。
去年はハンガーが出ましたが「それをリアルにした場合、ちゃんとぶら下げられる形になっているか?」とかね。
次に去年の油絵専攻の油絵試験をご覧ください。
問題文はたった1行「モチーフを自由に描きなさい」。
でも、この「自由に」がとってもクセモノで。
目の前に静物が組まれてるから 「見たまま」を描いてしまいそうですが、「自由に」から「目の前のものは『きっかけ』でしかなく、その空間やそこで起きてる現象や印象を自分なりに整理し解釈し発展させ、それを自分なりに再構成して自由に表現しろってことだな」と読み取らないといけないんです。
つまり「モチーフB」パターン。
参考作品を見ればこの意味がわかるはずで、よくもまあ、同じモチーフであれだけのアイデアが思いつくもんです。
出題者がどういう意図でその出題を出したか解説し総評する「出題意図と評価のポイント」てのが入学試験問題集にはあります。
=====
~全体の空間感など基本的な造形性も重要だが、油絵は『絵としてどれくらい魅力があるか』というのが最大のポイントであろう。(中略)モチーフから自分の興味を引き出して、楽しみながら描いている作品によい評価が集まった。
=====
と書かれています。
「うまく卒なくまとめた」絵より(それも大事だけど)、多少乱雑になっても「この部分面白いなー」と自分の興味心を信じ、自分が楽しみながら描いた作品の方が教員の評価は高かった、ということなんですね。必ずしも上手な作品が高得点になるわけじゃなく、これも美大実技入試の特色だと思います。
というわけで、「問題文をちゃんと読もう」の2つめの意味は「問題文に隠されたヒントを探し、そこから自分なりに発想を広げよう。」。
美大の実技入試はこう考えた方がいいです。
「最初の課題」「教員からのメッセージ」
実技入試は「この出題をあなたはどう解釈し、表現しますか? → 私たちはそれを理解できる(超える)、それを表現できる人材が欲しいんです → そういう人のためのカリキュラムを用意してます」なメッセージが込められていて、そのまま3つのポリシー(アドミッション・カリキュラム・ディプロマ)になってるんです。
相談会で「タマグラとムサビ視デの違いは?」とよく聞かれるけど、実は学科の理念の違いが一番手っ取り早くわかるのが、実技試験とその出題意図だったりします。
「問題文をちゃんと読もう」を言い換えると、一つ目は「出題意図から離れないため」であり、二つ目は「どこまで離れられるかを探るため」です。
文部科学省が「思考力・判断力・表現力の育成が大事だ」と言い出し、いろんな大学でそれらをみるための試験をあわてて導入し始めてますが、美大実技入試は昔から「思考力・判断力・表現力」をみる実技試験をやってるんですね。
ちなみにムサビでは学科試験は「解答用紙」、実技試験は「答案用紙」と言葉を使い分けているのですが、正解がある問題を解くのが「解答」で、答えを自分で考える(作る)のが「答案」だからなんです。
美大実技試験って知れば知るほど面白いし、すごいでしょ?
さて、今まで触れずに流してきましたが、これまで紹介してきた問題文の「条件」にちょこちょこ「画面の裏面に上を示す矢印を描きなさい」と書いてあるのに気が付いてましたか?
ムサビ実技試験独特の条件で、いわゆる「天地矢印」ってやつです。
これを書き忘れる方がぼちぼちいるんですが、備考ではなく「出題条件」にある以上、矢印を書いてなかったら「課題違反」になる可能性があります。
実力で点が低いのはあきらめがつくけど、こんなことで減点されるのってもったいないし、悔しいですよね?
ここからも問題文をちゃんと読む大事さがわかっていただけるはず。
表面を描き始める前に書いちゃいましょ。
以上、やっぱり雪が降りそうなので、万が一のことを考えて今日はホテルを予約した手羽がお送りいたしました。
タマビさんや東京造形大さんの入試担当者も同じようにされてるんじゃないかしら。
お互い頑張ろう!
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。