【4つの芸大】神戸芸術工科大学SD研修をやってきた2

神戸シリーズ第6話目の手羽です。いよいよ本当に本題を。

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前回までの話はこちら
大手前大学メディア・芸術学部オープンキャンパスに行ってきた
神戸芸術工科大学オープンキャンパスに行ってきた1
神戸芸術工科大学オープンキャンパスに行ってきた2
【白すぎる】姫路城に行ってきた
神戸芸術工科大学SD研修をやってきた1

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この日の神戸芸工さんは窓口業務停止し、学生はおらず、全学職員研修の日に当てられてました。
「研修の参加者は約80名」と事前に聞いてて、「え。そんなに職員がいるんですか?」と質問するとパートさん等も含めた本当の「全職員対象の研修」だと知り。
管理職だけ、専任職員だけの研修はいろんな大学でやってるはずですが、パートさんも含めた研修ってのはあまり聞いたことがありませんね。
これは私たちも参考にさせてもらわないと。

午前中は「教育研究活動にかかるモラールの向上について」という倫理研修をされてました。
これ、聞かせてもらえればよかった・・・。

某大学の「研究費の不正利用」が問題になり、公的研究費に関する物品の発注や納品に関するルールというかガイドラインが厳しくなりました。
科研費などは一定のルールさえ守っていれば使いやすい研究費だったのだけど、今は・・・どうなんだろ・・この数年ですごく窮屈なものになったような気はしてます。
そして、小保方さん問題以降、改ざん・盗用についてもガイドラインが示され、これらも含めた教育研究倫理が大学を始めたとした研究機関に求められるようになりました。
これまでは「研究者として常識の範囲だからわかるっしょ?」で終わってたのだけど、研修をし、誓約書のようなものを取ったり・・・ある大学さんは学会出張の証明書に他機関2名以上から「本当にこの人は学会にきましたよ」と署名をしてもらうルールになったそう(これどうなったんだろう)。
国民の税金でやってるものなのでしっかりやるしかないのですが、長い目でみるとこの流れは国にとってあまりいいことではないような・・・と思ったりも。難しいです。
で、神戸芸工さんは教員には既に研修は終わっており、この日は全職員への倫理研修だったと。


んで、はいお待たせしました。
午後からいよいよ手羽の出番!

簡単に経緯をおさらいすると、栃木県高等学校教育研究会美術・工芸部会で講演レポートで最後にこっそり

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と冗談半分で書いたら(えっ)、これを読んだ神戸芸工の教務・片山さんから数日後電話がかかってきて、「ちょうどSD研修の中身を検討してるところだったので提案してみましょうか?」と話があり、急いで企画書のようなものを作り、会議にかかり開催決定した・・・というのがことの始まりです。
なにごとも言ってみるもんです(笑)
あ、片山さんはムサビのオープンキャンパスでやった美大ブログサミット(ムサタマトークだっけ?)を聴講しに来られ、そこからのお付き合い。

他美大で研修講師をやる手羽も手羽だけど、他美大職員に研修講師を依頼する神戸芸工さんもちょっとクレイジー(褒め言葉です)。
若い大学さんということもあり、見た限りだと職員の平均年齢はムサビにくらべるとかなり若い。
こういうものに対する考え方や動きが軽快でうらやましく思います。


あ、この写真はいつものごとく「ブログ用にかっこよく撮って送ってもらえます?クネクネしてる写真はNGで」と片山さんにお願いして撮ってもらいました(笑)

講演のタイトルは、「美大・芸大ってなんだろうね」

栃木県高等学校教育研究会美術・工芸部会での講演を元ネタにしてたので、当初は「美大ってなんだろうね。美術ってなんだろうね。」とした企画書レジュメを送ったんです。

すると芸工さんから
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●「美大」や「美術」の表現を「美大・芸大」「美術・芸術」としていただけますか?なにぶん美大という言葉に慣れてないエリアでございまして。。。(中略)「美大・芸大」でいいますと、我々は芸術系大学とかデザイン系の大学と総称して本学のことを呼んでいるように思えます。(○○美術大学という名称の大学がないため、美大という言葉を使い慣れていないことも大きな要因かと)
●関西芸術系大学が客観的にどう見られているかは皆興味のあるところですので、いろいろお聞かせください。ただ、パートから専任老若男女混ざってますので、受け止め方に幅がありそうで表現はお手柔らかにお願いします。

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とリクエストが。

なるほどなるほど。
この「美大」「芸大」の話は、私の講演の核心部分でもありまして(笑)


もうアチコチで語ってるので飛ばし気味に書きますが、「4つの芸大」という話。
この話が飽きてる人は最後の写真まで飛んでもらって結構です。


「芸大」という言葉を少し整理しましょ。
というのも、『芸大』という言葉には恐らく4つの解釈(定義)があるんです。



■解釈1:「音楽も含めた芸術全般を網羅する芸術大学」の意味

厳密に書くと、文部科学省「学科系統分類表」 の大分類「芸術」における中分類「美術関係」「デザイン関係」「音楽関係」「その他」を網羅している大学・・・ですね。
簡単に書くと、「 美術・音楽学部等を開設する大学」のこと。
「芸大・美大・音大」と並列表記が存在するのがその証拠です。
この場合、ムサビやタマビは音楽要素を必要とする学科もありますが、メインではないので「芸大」には入りません。



■解釈2:「●●芸術大学」の地元愛称

名古屋芸術大学、大阪芸術大学、沖縄県立芸術大学は地元では「芸大」と呼ばれています。京都市立芸術大学さんもかな?
似たようなパターンだと「造形大」で、東京で「造形大」といえば間違いなく「東京造形大学」のことだけど、新潟では「長岡造形大学」だったりします。
ただ一方で、名古屋芸大さんは「名芸」、大阪芸大さんは「大芸」、京都芸大さんは「京芸」「市芸」と他の「芸大」と区別する呼び方もあります。
もちろん、この解釈でもムサビ・タマビは「芸大」には入りません。


■解釈3:「東京藝術大学」の略

今週金曜日から学園祭を行う東京藝大さんの大学ドメインが「geidai.ac.jp」なのが何よりの証拠です。

また、国公立5芸大スポーツ交流大会とかでは便宜上「東芸」という表記を使ってるようですが、普段東京藝大のことを「東芸」と言ったりしないし、芸術業界で「芸大卒」と表記された場合は、通常は「東京藝大卒の省略形」と認識する「暗黙の了解」があります。
当然この解釈でもムサビ•タマビは「芸大」ではありません(笑)


■解釈4:分野・分類「芸術系大学」の略

美大や音大など「芸術系分野を学べる大学」「芸術系大学」をひっくるめて「芸大」と表現することがあります。
進学雑誌などでは「芸大(美大・音大等)」という表記の仕方が存在しますね。
この解釈だとムサビ・タマビは「芸大」に入ります。

でも・・・・関東では「芸大」は「解釈3:東京藝術大学の略」の意味があまりにも強いので、私たちは「芸術系大学」のことを「芸大」と略したりはしません。
あくまでもムサビタマビは「芸術系大学」の一つであり、やっぱり「美術系大学」「美大」という言葉に誇りをもっています。


ま、「文学は芸術じゃないのか?!」というツッコミどころもあるんですけどね。
ちょっと手羽が感じてるのは、関西の美大さんはあえて「芸大」という言葉をこの数年で意識的に使いだした印象があります。「中身的には美大なのに」と思ったりもするけど、そこは解釈の違いなので。
ちなみに気が付いてる人もいるかもしれませんが、変な誤解をさけるために手羽の記事では意識的に「芸術系大学」のことは「芸大」、東京藝大のことは「藝大」と書き分けるようにしています。

そして、全職員対象ということは、パートさんや姉妹校から異動された方など年齢も経験値もいろいろな参加者。
ムサビもそうですが、美大職員といっても、広報スタッフと経理課スタッフではもってる美大の知識が違いますからね。

なので美大・美術初心者向けな内容にアレンジして、美大関係者によくやる「美大のエグイ話」は省いて構成しました。
手羽の売りは「エグイ話」なんだけど(笑)
レベル的にどうだったかしら。もう少し噛み砕いた方が良かったのかな、と思ったりも。

持ち時間60分ピッタリで終了。
ワークショップのことを考えて、55分で本当は終わらせたかったんだけど。



えーーーと、続くっ!!!


以上、

普段学校で愛用してるマグカップを見ながら、「ここ、踏ん張りどころ!!」とつぶやいた手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。