【これからのデザイン教育】ムサビオープンキャンパス2018に行ってきた3

2018年6月12日(火)

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6月9日、10日と武蔵野美術大学オープンキャンパス2018が開催されました!!
これまでの話はこちら。
ムサビオープンキャンパス2018を楽しむ7つの方法
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【ムサビ生も意外と知らない】ムサビオープンキャンパス2018への交通手段は8つある
ムサビオープンキャンパス2018を手羽と妄想デートしてみる
【日常が想像以上】ムサビオープンキャンパス2018に行ってきた1
【ほぼフェス状態】ムサビオープンキャンパスに行ってきた2(東京造形も)


オーキャン2018レポートシリーズ最終回は、紹介しきれなかったものをまとめて紹介します。

まずは空間演出デザイン学科のファッションショー企画「MAU COLLECTION 2018」、通称「マウコレ」を。


  • 会場は8号館1階111スタジオ

衣装、演出、舞台美術、照明、そしてモデルさんも全部ムサビ生でこのレベルのものができるってすごいなあ・・・と思いながら会場を出ると

モデルさんが9号館前に並んでてビックリ。この演出すばらしいですね。
空デ、楽しいだろうなあ。


次に・・・すいません、やっぱり新学科です。
クリエイティブイノベーショントークイベント「クリエイティブイノベーションの時代」に潜入しました。


  • 造形構想学部の学部長に就任予定の映像学科・篠原先生から挨拶

クリエイティブイノベーション学科教授に就任する長谷川敦士さんから現在のデザインの状況、そしてこれから求めれる「デザイン」とは?という話。
ガチなサービスデザイン系のミニ講義でしたが、かなり高校生にもわかるように話されてましたね。
これを大学で嫌なほど学べるってほんと新学科の学生さんは幸せだよなあ・・・。

井口先生からはカリキュラムなどの話。
市ヶ谷キャンパスでは完全な4期制、つまりクオーター制が導入されます。美大ではまだどこもやってないんじゃないかしら。これも「新学部」で「市ヶ谷キャンパス」だからできることかもしれません。

終わった後も長谷川さんはいろいろ聞かれてた(笑)

また、大学院のクリエイティブリーダーシップコースは社会人が履修しやすいようなカリキュラム構成になっています。大人ほどこの新学科・大学院がやろうとしてることの需要や必要性に気が付いてるので、結構評判になってますな。
というわけで!
急きょ社会人向け大学院説明会をラウンジで開催することになりました!

大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース 社会人向け説明会
●日程:2018年6月26日(火)、7月10日(火)
●時間:19:00-20:30 *入退場自由、予約不要
●会場:武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ


社会人向けカリキュラムやプロジェクトについて説明します。両日ともほぼ同じ内容なので、どちらかに出てもらえれば大丈夫です。興味のある方はぜひ!

てな感じで、ムサビオーキャン2018レポートは以上です。

関東の美大界を盛り上げておいたんで、あとはタマビさん、女子美さん、東京造形さん、よろしく!!
ムサビは真夏のオープンキャンパスを8月18,19日にやるのでそちらもよろしくっ!

 
 
と、今日の記事はこれで終わりではなく、もう少し。

実はオープンキャンパスの翌日に、

4月に東北芸術工科大学学長に就任された中山ダイスケさんが来校されまして。
<東北芸工大>中山ダイスケ氏、新学長に就任へ「アイデア生み出す大学に」 | 河北新報オンラインニュース
今年はデザセン25周年ということで、デザセンを作った男・長澤先生にいきさつを聞きにいらっしゃったのです。後日記事になると思うので詳しくはそちらを・・・って、ほとんどぶっちゃけ裏話や学長の御互いの苦労話だったのでどこまで掲載できるのかわからないけど(ぼそっ)
中山さんはムサビのデザインの血を持つ二人目の美大学長だし、山形ビエンナーレのプログラムディレクターである宮本さんはムサビ油絵学科卒だし、美術科工芸コースの深井は手羽の彫刻後輩だし、手羽は全力で東北芸工さんを応援します!!


で、インタビューの前に長澤学長から「手羽ちゃん、これ読んでおいてよ」と渡されたのが、

2005年に発刊された「社会は僕らの教室だ―高校生の創造性教育の実践 全国高等学校デザイン選手権大会」という本。
デザセン10周年の時に振り返りをされてて、

長澤学長や赤池さん、日曜にお会いした東京造形プロダクトの玉田先生(当時実行委員長をされてた)の対談なども載ってます。玉田先生は全然変わらないなあ・・。


で、これを読んでびっくりしたことがあって。
長澤先生は当時から言ってることが今とほとんど変わってない。
恐らくデザセンを作った25年前から同じことをおっしゃってるはず。
あ、バカにして言ってるわけじゃなく、長澤学長が以前から指摘してたデザイン界の現状、社会での「デザイン」の扱われ方、そしてデザイン教育の問題点がほとんど解消されてないってことなんですよ。
ようやくこの10年ぐらいで「デザイン思考」「アクティブラーニング」「クリティカル・シンキング」等という言葉が出てきてデザインの本質を説明しやすくなってはいるけど、それでも「デザインといえばロゴマークを作ること」ぐらいの解釈がまだまだ一般的。
暗記受験勉強だけやってきた人とマウコレの衣装や演出をゼロから考える発想力ある人、どっちの方がこれからの社会に必要なのかは一目瞭然だけど、どうしても美大は「ファッションの勉強してる」で終わってしまう。

新学部・新学科の話をすると美大関係者からは「それって昔から美大がやってることじゃん」と言われることもあります。確かにカリキュラムやコースレベルでは既に取り組んでいる美大もありますが(ムサビも含め)、でも「それを知ってるのは美大関係者だけ」という現状がずっと続いてる。
どうしたら美大や造形、デザイン、クリエイティブの本質を社会に認知してもらえるのか・・・そのムサビの答えが造形構想学部、クリエイティブイノベーション学科だったりします。
なので時々「新学科は造形を軽視してる」と言われることもあるんだけど、むしろ逆で、「造形を守るにはどうしたらいいか」というアプローチで生まれてたりもします。

そうそう。「クリエイティブイノベーションって・・もっといい名前無かったの?」と言われることもありますが(笑)、「デザイン」という単語が入った学科名、もっと言うとカタカナが入った学科名を日本で最初につけたのはムサビと言われてます。(諸先輩方から聞いただけなので根拠資料がありません。誰か教えて・・・)
多分、そのころも「デザインって・・・確かに今流行りだけどもなんで学科名にカタカナ・・意匠学科でいいやん」とさんざん言われたんじゃないかと。
また、芸能デザイン学科から空間演出デザイン学科へ改称する時、「空間演出ってフワフワした言葉でみっともない。芸能デザインしかありえない!」という声の方が強かったそう。今の私たちからすると「芸能のデザイン?」とむしろ思うけど、新しい学問領域を打ち出す時ってそういうもんだろうし、むしろそういう声が起きないと「既に新しくない」ってことなんでしょうね。


これまでも、そしてこれからもムサビは

無駄にパワフルな革新者であり続けたい、と思う所存でございます。


以上、「クリエイティブイノベーション学科の略称をどうするか問題」があって、「クリイノ」は言いにくいし、学内関係者で使ってる英語略称の「CI(シーアイ)」は一般化されにくい気がしてるんだけど、昨日「クリノベ」という新しい略称を聞いて「あ。言いやすいし、それ、いいかもしれない」と思った手羽がお送りいたしました。問題を繰り延べしそうなイメージもあるけど。
ちなみに手羽は「クリベーション」を提案してるんだけど誰も耳を傾けてくれません。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。