美大受験生へのアドバイスをお答えする恒例の「#美大受験」シリーズ。
#美大受験 では、ムサビまたは関東美大の一般選抜を具体例で使ってますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
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*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
今日はムサビ学科試験日。
なので受験生や美術予備校さんから、よく「ムサビは学科試験を重視してる」「学科試験が難しい」と言われてることについて触れておきます。
ムサビ学科試験は国語と英語の待ち時間も長いので、コラムとして読んでもられば。
この誤解を招いている理由は、4つ考えられます。
まず、募集要項の「合否判定について」をご覧ください。
1つ目は「総得点の高得点順」という記述。
これを読んで「実技だけで評価していない→学科試験を重視してる」と思ってる人がいるようで。
でもムサビの一般選抜一般方式はほとんどの学科で学科試験200点+実技試験300点の総合点500点満点というバランスです。実は点数の割合的には実技の方が高い。
300点満点、400点満点の形式もあるのでちゃんと調べていただきたいのですが、この実技試験と学科試験の配点バランスはタマビもムサビも変わりません。
学科の点数だけで判断することはないし、学科の点数が良くても実技が悪ければ落ちます。総得点なので。
逆の言い方するならば、学科の足りない点を実技の点数で補うことができるので学科試験優位ではないのです。総合点なんで。
入試が実技試験だけの美大、共通テストの点数は参考程度にしてる美大もあるので、それらと比べると学科試験を必須・総得点で採点してるムサビは確かに「学科試験を大事にしてる」と言えなくもないけど、考え方としては「実技試験も学科試験も大事」なんですね。
2つ目は、「高校教員や予備校教員が受験時の記憶で指導してるから」。
ムサビは25年前ぐらいまで、1次学科試験足切りをやってました。まさに手羽の受験時がそうで、油絵学科は1次で学科とデッサン、2次で油絵という形。
そこで「学科が悪いと本チャン実技試験を受けられない」→「ムサビは学科を大事にしてる」というイメージが生まれ、当時受験した高校や予備校教員がその記憶からいまだに指導してるパターン。
この傾向は地方だと顕著で、2年前、地方の進学相談会で高校の先生から
「ムサビは1次足切りがあるから、うちの生徒にはハードルが高くて」
「・・1次足切りはもう25年前ぐらいにやめましたよ」
「え。そうなんですか。だから、東京に行きたい子にはムサビ短大も受験するように指導してて」
「・・・短大もやっぱり25年前ぐらいに募集停止してます・・・」
なんてやり取りが本当にあったくらい。しかもこの方、ムサビOGだったんです・・。
1次足切りをやってた本当の理由は「当時は受験生が多すぎて、単純に実技教室数が足りなかったから」だったりするんですが(昔は場所がなくて倉庫も試験場に使ってました)、一度作られたイメージってそう簡単には変わらないもんで。
3つめは、合否判定に書かれている2番目の部分を勘違いしている点。
「一科目でも20%未満の点数があったら、他の点数がよくても不合格になります」とあるんですが、これを募集要項を読まない方たちが「学科試験が悪いと実技がよくても足切りされる」と飛躍展開し「学科試験重視」と広げてるパターン。
ちゃんと募集要項を読めば、学科試験に限らず実技試験にも当てはまることは一目瞭然なんだけど。
でも、20%ということは学科試験であれば100点中20点。
河合塾さんや代ゼミさんなど進学予備校さんが「ムサビ学科試験は少しクセがあるが、基礎学力を問う問題を安定してずっと出している」と分析してるくらいで、基礎勉強をちゃんとして、頑張って答えた人であれば20点未満を取ることの方が難しいと思います。
ただ「基礎学力がはっきり出るので、ちゃんと勉強した人とそうじゃない人の差が出やすい」とも分析されてるから、それが「学科試験が難しい」と言われてる所以かもしれません。
ちなみに美術予備校に行くと、実技担当の先生から「ムサビは学科が難しい」と言われ、国語担当の先生から「ムサビは学科試験が簡単」と言われることがしばしば・・。
そして4つ目はムサビの建学の精神である「教養を有する美術家養成」を誤読してるケース。
確かにムサビを語る上で「教養」がいつもキーワードになるし、「教養科目が豊富」は売りでもあります。
でも、「教養」の意味を「教養科目(座学授業)」から「頭がいい」「勉強」と勘違いして、「ムサビは勉強ができる作家を育てたいんだ→学科試験を重視してる」と展開しちゃってるパターン。
でも「教養」を辞書でひくと「知識や経験によって獲得する人格や品位」と書いてあります。
すんごく頭のいい人が、相手への思いやりがなくコテンパンに論理でやっつけたら、「あの人は頭が切れる」とは言っても「あの人は教養がある」と言わないように、「勉強=教養」ではないんです。
以上、ムサビ入試は山場に入りました、の手羽がお送りいたしました。
全日程的には後半なんだけど、学科試験日は一番受験生の多いので「この日を乗り切れば」と思える日でして。
富士山がきれいに見えるこの場所での軟禁生活ももう少し。
受験生もスタッフも頑張りましょ!
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。