学生さんはインターンシップ演習のレポートを書かなくちゃいけないんで、そのために授業で話した内容を振り返っています。
これまでの話はこちら。
■インターンシップ演習2018を終えて1
■【今年のプレゼント発表!】インターンシップ演習2018を終えて2
■【ムサビで学んだあんな人こんな人】インターンシップ演習2018を終えて3【完全保存版】
■【他分野からのデザイン領域進出】インターンシップ演習2018を終えて4
■【美大は誤解されている】インターンシップ演習2018を終えて5
■【尊厳・きざし】インターンシップ演習2018を終えて6
■【4つの思考傾向】インターンシップ演習2018を終えて7
■【創造的思考力とは】インターンシップ演習2018を終えて8
まだ書きたいことはあるけど、今年のまとめもやらないといけないんで、締めに入ります。
シリーズラストは、準備してたけど授業で話せなかった話を。
今回の授業は8つのセッションに分けて構成してて、事前にリハーサルをして、
ポストイットにそれぞれの時間を書いて「このセッションは●分で終わる」とタイムコントロールしてたんです。意外とちゃんとしてるでしょ?(笑)
ちゃんとしてるわりには漢字間違ったりしてるけど・・ほんと漢字が書けなくなりましたね・・最近字を書かないからカタカナも怪しい・・。
ちなみに授業後アンケートに「手羽さんのプレゼンが斬新だった」と書かれてましたが、実は昔からある「高橋メソッド」を改良し、独自開発した「手羽ちゃんメソッド」です。
・1ページの情報量は少なくして、紙芝居をするように
・フォントサイズは一番小さくて20ポイント。通常は36ポイント以上
・色は2色、フォントは1種類だけ
・5分に1回は動画か音を入れる(そうしないとみんな寝ちゃうから)
・1セッションはできれば10分以内(じゃないと飽きちゃうから)
てなポリシーでやってて、このメソッドのメリットはプレゼンシート見ながら補足するだけなんで、お客さんの顔をみて話ができる、つまり「台本がいらない」ことです。
ただデメリットもあって、セリフの紙芝居状態だから、時間のわりにはスライド数が膨大になっちゃうのね。今回インターンシップ演習で使ったスライド枚数は641枚でした・・。
修正する時に大変なのと、話を飛ばしたい時に何枚もスライドを送るハメになっちゃう。
「最後にお土産配ったりするから90分より少なめ・・目標は75分、調子のったら80分間一気にしゃべります」と最初に宣言したはいいけど、余計な話を結構してしまって。東京造形大・M澤くんがいたんでアドリブで東京造形大ネタを入れたりね。
「このままじゃ5分ぐらい超えちゃうなあ・・」と話しながら考えて、1ネタ飛ばすことにしたんです。20枚ぐらいセリフ状態のシートを送りながら。
全部話終わった時にストップウォッチ止めたらこのスクリーンショットの通りぼぼ80分だったから計算通りではあったけど、授業後アンケートに「説明しなかった『芸祭にお酒は必要か?』って話が気になった」とちゃっかり書かれてました(笑)
それは「後輩たちに贈るメッセージ」として用意してた一つで、毎年やってるから今年はいいか、と飛ばしちゃった話なんです。
「ディベート(討論会)ワークショップ」というのがあります。
自分の思想・主義主張と関係なく肯定(賛成)派と否定(反対)派に分かれて、あるテーマに対して意見をぶつけ合うワークショップです。
研修でも用いられることがあり、その場合は「相手を口で負かす!」というよりも「多方向の視点を知ることで課題の本質を学ぶ」というのが趣旨にあって、事前に調べてくるケースやその場でお題を出させるパターン、午前「賛成派」だったら午後は「否定派」とかいろんなやり方があります。
そこでよく言われてるのが「現状肯定よりも否定側が有利」です。
存在する矛盾点を追究できるから否定派の方が論理的に感じるし、理想のあるべき姿を語ってるので説得力があり、聞いてる方も理解しやすい。
逆に、問題点を抱えつつ存在しつづける理由をちゃんと説明するのはかなり困難です。「行動の根拠」って説明が難しいし、ずっと続けてるものは時間とともに動機が薄れてることも多い。最後は「でも必要なんだもん・・なんとなくわかるでしょ?」的な精神論的な話になってしまう傾向にあります。
芸術祭(学園祭)を例にするとわかりやすいかな。
「芸術祭にお酒は必要か否か?」
をテーマにした場合、おそらく多くの学生さんや卒業生は「お祭りなんだもん。成人限定であればお酒ぐらいいいんじゃね?」と感じるんじゃないかしら。
でも、その理由をちゃんと説明できます?
「お祭りでは酒で体を清める意味がある」なんて言った日にゃ「あなたは芸術祭を神事としてやってるつもりなの?(苦笑)」と突っ込まれるし、多くは「昔からやってる伝統だし」「なくなったら寂しい」「お酒飲んだら楽しいやん」な外から聞いてたらグダグダなものしか言えないはずで、論理的に「芸術祭にお酒は絶対必要だ」と説明するのはなかなか難儀。
でも、否定側は「他大学での飲酒事故」「お酒のリスク」「アルハラ」「最近はノンアルコールのパーティも増えてる」「ダイバーシティの観点」「学生自治なのに大学側に責任がかかる社会になった」等いくらでもできるので、ディベートワークショップをやれば間違いなく「芸術祭にお酒は必要ない」が有利に聞こえるはず。
でも、だからといって芸術祭でのお酒を完全に中止にすることがいいことなのか?って話ですよね。
多角的な視点で考えるのって社会の課題発見・課題解決をやるべきアーティストやデザイナーにはすごく必要なはずだし、これまで語ってきたように本来は美大生なら得意なはず。
でも最近の学生さんのSNS見てると「バカなの?死ねばいいのに」とつぶやいてるのをちょいちょい見かけることがあり、なんとなくこれって「問題点の回避」「理解からの逃避」のような気がするんです。
もちろん本気でつぶやいてないのはわかってるけども、「そんなにあっさり全面否定しちゃっていいの?」「面白いテーマが転がってるのにもったいなくね?」と。
「それは理解できない」といきなり全面否定するのではなく、「なんでそうしたんだろ?」から入った方がより高いレベルの結論、社会が幸福になる道を導き出すことができるはず。
そのために必要なのが知識や教養で、だから美術大学では実技と一緒にそれを学んでるし、特にムサビはそれを重視してるんですよ・・・という話につなげてます。
一応補足しておくと「否定・批判しちゃいけない」ではなく、「否定・批判の方が肯定するよりも簡単なんだってことを知っておきましょう。相手にまず興味を持ちません?」という話なので念のため。
バックボーンも調べずSNSで流れてきたたった1枚の画像だけでみんなと一緒に相手を叩いたり、相手の否定ばかりして否定されるとブチギレる人が時々いるけど、なんかクリエイティブな行為じゃないなあ、と。
以上、何が言いたいかというと「流行ってないからやらない」じゃなくて「流行ってないからやる!」の精神が大事なんだよ!カメとめ風に言うなら「出すんじゃない。出るんだよ!」で、それがクリエイターってもんでしょ?なんで誰も「メリークリスMAU」を使ってくれないんだよ(涙)今年も静かに終わっちゃったじゃん(涙)な手羽がお送りいたしました。
ミッドタウンのイルミネーションもきれいでした。最終日ですごい人だったけど。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。