【創造的思考力とは】インターンシップ演習2018を終えて8

2018年12月25日(火)

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メリークリスMAU!
勇気を出して叫ぼう!!

子供がいると必ず発生するのが「サンタクロース問題」
サンタ話って矛盾がありすぎて、こういうのはちゃんとストーリーを練ってから展開してほしいと思うのです。
手羽家は「サンタさんから『プレゼント数と配布時間には限りがあるから、私は不幸なお子さんを優先したいので、手羽さんはお父さんからプレゼントを渡してもらえますか?』と頼まれたんだよ」と伝え、その年から一緒にプレゼントを買いにいくようになりました。
子供に「思いやり」「シェア」の気持ちを育みつつ、夢も壊さない完ぺきな作戦だと思いません?
これが広がって10年後ぐらいになれば、「サンタさんからプレゼントもらった」と自慢する子が減るわけで、消費はキープしつつも、矛盾を抱えたサンタ話をスルーできるメリットもある。皆さんもどうぞ。


学生さんはインターンシップ演習のレポートを書かなくちゃいけないんで、そのために授業で話した内容を振り返っています。これまでの話はこちら。
インターンシップ演習2018を終えて1
【今年のプレゼント発表!】インターンシップ演習2018を終えて2
【ムサビで学んだあんな人こんな人】インターンシップ演習2018を終えて3【完全保存版】
【他分野からのデザイン領域進出】インターンシップ演習2018を終えて4
【美大は誤解されている】インターンシップ演習2018を終えて5
【尊厳・きざし】インターンシップ演習2018を終えて6
【4つの思考傾向】インターンシップ演習2018を終えて7

昨日の続きです。

「企業の関心ごとがモノのスペックからサービスの提供へ移ってる」ってことだと、ムサビの近くに「イナバボックス」ができたんですよ。イナバって「100人乗っても大丈夫!」のあのイナバです。
200人乗っても大丈夫な物置を開発する方向ではなく、これまでのブランド力を使って「トランクルーム」というサービスを始めてるのもこれに入るのかな、と。


で、ここからは手羽の勝手な解釈が入るんですが、

デザイン思考アプローチだけでは「ユーザーの考え方や慣習にとらわれすぎて、改善はできても革新的なイノベーションは生み出しづらい」ことが明らかになっています。新たな価値モデルを作るには、型(既成概念)にはまらず、あらゆる方向に遠く離れてみて得られる様々な観点を関連付けて考え、そこから考えや解決法を導く思考しよう、これがいわゆる「OUT OF THE BOX DESIGN THINKING」。

「ペルソナ立ててジャーニーマップを作って・・」なフォーマット通りのデザイン思考では限界があり、じゃ何が足りてないかというと・・・これがアート思考じゃないかと。
アート思考の本質は「課題創造・発見」「型からの脱却」「答えがない(かもしれない)ことへの取り組み。そしてその決断」「自分の要求が原点にある」ことで、イノベーションと相性がいい。

そういうイノベーションやビジネスにおけるアート思考の有効性が多分2015年後半ぐらいから語られるようになり、山口周さんの「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか? 経営における『アート』と『サイエンス』」をはじめとして、



様々な本が最近出てるのはご存知の通り。
今まで「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Mathematics(数学)」教育、つまりSTEM教育が大事だと言われてきたけど、Art(芸術)」を入れたSTEAM教育の重要性が語られるようになってきたのもリンクしてますね。
となると、デザイン思考は「一般大学」でも学ぶことができるけど、「デザイン思考+アート思考」の学びは美大、つまり造形教育にこそあるのかもしれない・・というのがこの図から語れるのです。
これが二つ目。


これまで「造形」を学ぶことで、「モノゴトの美意識」「イメージ形成力」「観察力・鑑識力」「批評力・被批評力」「課題発見力・課題解決力」「柔軟な発想力・想像力・構想力・価値判断力」「答えは複数ある、もしくはないかもしれないという認識。そこからの決断力」「自分で考える力・出した答えを信じる力」「数値化の危うさを知る力(感覚値)」「言語に頼らないコミュニケーション力」などの創造的思考力(クリエイティブシンキング)が副産物的に生まれてた・・という扱いでした。

そうそう。
視デ・齋藤先生が多摩北部医療センターという総合病院と産学連携をやってて、先週はお医者さんや事務の方と一緒に学生さん主催のワークショップをやったんです。


  • お医者さんや事務の方を業務時間中に2時間拘束するのって大変なことで、院長・副院長先生のトップダウン・問題意識があるからできたこと

当初は「館内サインを考えてほしい」というリクエストだったんですよ。ま、美大といえば「絵を勉強してる人がいる大学」というイメージですからね(笑)
リクエスト通りにパパっとサインを作ってプレゼンした方が美大産学として楽なアプローチなんだけど、ヒアリングしていくと「地域の中の病院のポジション」「医者と患者のコミュニケーション」という課題が見つかり、まずその課題を解決していく方法を探ろう、となりワークショップをやることになった、と。
そこからアウトプットがサインになるのかイベントになるのかはわかりませんが、病院の方も「そういうアプローチの課題発見・課題解決があるのか」と感心されてました。
つまり世の中で求められる美大での学びの武器は「造形」だけじゃなく「創造的思考力による課題発見・課題解決力」にもある、ということ。

これを逆アプローチにして、創造的思考力を体得するために造形を体系的に学び、そこに「ビジネス」(仕組み構築)を入れていけば、イノベーションが起こせるんじゃないか?
そして「イノベーションを起こす!」と宣言したイノベーションは失敗が多いけど、そこに方向を示すリーダーシップの学びがあれば、成功する可能性が上がるんじゃね?
というのが、ざっくりなクリエイティブイノベーション学科とクリエイティブリーダーシップコースの発想です。

よく新学部・新学科は「実技入試をやらないなんて造形を軽視してる!」「造形には『構想』という意味がもともと入ってるから『造形構想』という言葉はおかしい!」「デザイン思考を学ぶ学科」と学内外で言われたりしてるけど、「造形の必要性を一般の人に伝えるにはどうしたらいいのか?」が出発点なんですね。
造形に『構想』が入ってることは私達美術関係者は知ってるけど一般の人は全然知らないわけで、いつまで「造形には『構想』という意味が入ってる!」と美術関係者の中だけで自慢し慰め合うのか、という話であり、むしろ「デザイン思考だけじゃダメ。ファインアートの学びがないと意味がない」と宣言してるのが、他大学さんがやってることとの一番の違いです。

何が言いたいかというと、新たな美術教育の在り方を提案する新学科をよろしくお願いいたしますってことです。
これが語りたくて7回書いてきました(笑)


ところで、美術手帖2019年2月号の特集が「みんなの美術教育」なんです。美術手帖さんが美術教育を特集にするのはなんと10年ぶり!
BTさんがこの振り返りシリーズで書いてきた「20年前ぐらいのイメージで語る予備校教員や卒業生の慰め話」「噂話を語る在学生や美術関係者の座談会や美大の変な人自慢」「デザインアプローチが完全に抜けてるファインアート視点の美術教育論」な「昔の美術教育」をそのまま載せるとも思えないので、かなり期待しています。予約しちゃった。

以上、美術手帖さんで特集してくれるのも嬉しいけど、日経ダイヤモンドさんとかで美術教育が特集される世の中になるともっといいなあ、と思う手羽がお送りいたしました。

 


とっても大事なので最後にもう一度言わせてもらいます。
メリークリスMAU!


振り返りシリーズは次回最終回!

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。