【アートの役割】東工大×ムサビ合同WS「コンセプト・デザイニング2018」by楽天ビューティ最終プレゼンにいってきた3

2018年8月9日(水)

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東工大との合同ワークショップ「コンセプト・デザイニング2018by楽天ビューティー」のレポートをお送りしています。
これまでの話はこちら↓。
東工大×ムサビ合同ワークショップ「コンセプト・デザイニング2018by楽天ビューティ」スタート!
【アート的思考】東工大×ムサビ合同ワークショップ2日目!
東工大×ムサビ合同ワークショップ中間プレゼンに行ってきた
【一般大学と美大の違い】東工大×ムサビ合同ワークショップで「鏡」をモチーフに考える

最終プレゼンの様子はここから↓
【EDPも】東工大×ムサビ合同WS「コンセプト・デザイニング2018」by楽天ビューティ最終プレゼンにいってきた1
【「自分」に会ってみたいですか?】東工大×ムサビ合同WS「コンセプト・デザイニング2018」by楽天ビューティ最終プレゼンにいってきた2


ちなみに最終プレゼンには毎年こんな5つの条件をつけてます。
(1)最終プレゼンは7分間(英語テーブルは通訳時間追加OK)
(2)最終アウトプット(造形物)材料費は1万円以内(ありものは使ってOK)
(3)最終アウトプットの「うまい、へた」は(そんなに)問わない。
(4)パフォーマンス・寸劇も可。ただし造形物はマスト。
(5)必ず全員役割をつけること。


(4)は美大のプレゼンだと普通のことなんだけど、通常の大学じゃパワポだけ見せるケースが多いようであえて。
(5)は「グループプレゼンで一人だけしゃべって、後のメンバーは後ろの方でじっと立ってるだけ」てのをよく見かけるんだけど、あれって絵的にもみっともないし、手羽が嫌いで。全員必ずなんらかの役割をもって最後まで参加してもらうためにそうしてます。


4番手はEグループ「えびせん」
ま、これはそのままやね(笑)

テーマは「ミラージャングル」


  • 「鏡が2枚あるってことは見えない部分をみるためだ」と解釈し、

さらに「新しい発見・自己認識」と展開。「見る」だけでなく五感を使って、自分の「感じる」を感じるにはどうしたらいいか、というのがテーマになっています。
こちらも中間プレゼンからの流れですが、いい感じに発想の飛躍が起きてますね。


  • なんかゴロゴロ出てきた。今年は装置が大きい(笑)


  • これは制作途中の写真ですが、中はこんな感じにいろんなものがぶら下がってる

本番では真っ暗にし視覚情報が遮断された状態で入ります。お香もたかれてる。中に入る人は触覚や嗅覚を使って自分が「これだ!」と思ったものをはさみで切り取って出てきます 。

袴田先生が選択したのが予想外にかわいい形のもので、会場からクスクス笑い声が聞こえる(笑)
でも、これが袴田先生本人も気が付いていない「本当の自分の感覚」なのかもしれない。それを知識や経験でごまかしてるだけかもしれない。

EDPの最終プレゼンから、東工大・齋藤先生もかけつけてくれてコメントをしてくれました。


  • 今回TAをやってくれた東工大生は3月のVISAワークショップに参加した学生さん



続いて5番目の発表はBグループ「おしゃれイヅミ」

「鏡たらしめる展」という展覧会を模した形でのプレゼン。
展覧会のビジュアルも作ってあるし、ちゃんとスポンサー名も入ってる(笑)


  • 言葉モチーフである「のようなもの」を組み合わせて、テーマを「鏡のようなもの」とし、そこから「無意識を意識する」に


  • いろんな素材の丸板が机に並んでます。

簡単に説明すれば「鏡たらしめるものはなにか?」を問題提起した作品。


  • フロアの人に「鏡」と「鏡のようなもの」を分類してもらう


  • 「鏡」と「鏡のようなもの」の境界線はなんなのか?「顔がはっきり見えるかどうか」など人によって判断基準はバラバラ。でも分類できちゃう不思議


  • 説明するおしゃれなイヅミくん。


  • 2年前に参加したコンセプトデザイニングOGもコメントしてくれました


  • 真剣に考えるフロア


  • 学長も一緒に考えてました。

 
最初に書いたとおり、最終プレゼンで課してるルールに「材料費1万円以内で造形物(最終アウトプット)を制作すること」があり、「造形」の解釈については各グループの判断に委ねてます。
デザイン思考WSだと(役に立つ)プロダクトがアウトプットになることが多いですが、コンセプトデザイニングでは「デザイン」と付くくせに、アート寄りな作品が多いのが特徴かもしれません。

この「アート寄りな造形物」がほんとクセモノで(笑)、東工大とムサビ生が混在するコンセプトデザイニングでは、ある時はグループでの議論がまとまらない原因になるし、またある時はそれによって(いい意味で)発想が飛躍したり議論がまとまることもあります。「アート」は既成概念を壊し、自分なりに問題点を作り、本質を浮き彫りにし、議論を飛躍・発生させる(場合によって共感を得る)力があると思ってて。
でも通常だとアート寄りなものを「わけわからん」「こんなの意味がない。役に立たない」と一蹴されるか、もしくは「面白い」の言葉だけで終わってしまう可能性が高い。なぜなら「アート」を評価できる人が少ないから。


去年、Mistletoe(株)代表・孫泰蔵さんが講演で「これからはデザインシンキングではなく、OUT OF THE BOX DESIGN THINKINGと語ってました。
手羽が超意訳するとこんな話。
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100年に1回は起きると言われてる「文明の本質的な技術革新」がいよいよ起きようとしている。ロボットが雇用を奪ってしまう時代はブルーカラーだけじゃなくホワイトカラーも摩擦的失業に直面してしまう。18-19世紀の 産業革命では失業率が10%で、それに近い状態かそれ以上の事態が起きるかもしれない。経済的価値のない人々が巷にあふれるのをまもなく目にすることになり、治安悪化やスラム化などが都市で発生する。私たちは20世紀の産業社会型モデルを維持するのではなく、21世紀型の価値モデルへと変えていかなければならない。

昨今デザイン思考が注目されてるが、その問題点として「ユーザーに接近しすぎると彼らの考え方や慣習にとらわれすぎて、改善はできても革新的なイノベーションは生み出しづらい」ことが明らかになっている。これまでは「前例とデータで見たらこうだから、こうやって変えるとあれがこうなる」とクールに解決してたけど、今は変換点なので前例もほとんどないし、経済効果が高くなくても変えなくちゃいけないことが増えてきてる。
新たな価値モデルを作るには、型(既成概念)にはまらず、あらゆる方向に遠く離れてみて得られる様々な観点を関連付けて考え、そこから考えや解決法を導く思考をしよう、これがOUT OF THE BOX DESIGN THINKING。
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この話を聞いて、ますます「理工系思考とデザイン思考とファインアート思考をごちゃまぜにしたコミュニケーション中心の課題発見・課題解決型授業」の必要性を感じたんだけど、コンセプトデザイニングではアート寄りな作品をちゃんと講評できるファインアート系の教員も参加してるのが特徴で、「その視点も入っているのが単なるデザイン思考WSとは違うコンセプトデザイニングの核なのかも」と実感できたのが今回の手羽の収穫でした。


と、まとめのようなこと書いてるけど、もう1話続くっ!

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。