【美大4年生必見】手羽の卒業制作35ヶ条その1「卒業制作展は卒業記念制作展ではない」

2019年11月21日(木)。PARTNER_WEBはこれで2100エントリー!

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来週木曜まで更新しないつもりでしたが、卒展担当者から「学生さんに知ってほしいからこのシリーズを早くやってほしい」と言われてたのをふと思い出し、1つ目のプレゼン、白賀新理事長へのレクチャーが昨日無事に終わったのであわててUPします。(勇気を出して新理事長に絶賛在庫中のムサビ日記も贈呈しました)


まず、「卒業制作、卒業制作展って何?」の話を。
美大では当然ながら「卒業論文」「卒業研究」もありますが、「卒業制作」をおさめて卒業するケースが多く、それらを展示するのが「卒業制作展」(以下『卒制展』『卒展』)です。
以降、面倒なので「卒業論文」「卒業研究」「修了制作」等をひっくるめて「卒業制作」「卒制」と表記させてもらいます。


で、卒展は学内展だったり学外展だったり大学によってやり方はバラバラ。
大学全体としての卒展を以前は関東美大は学内、地方美大は学外の公立美術館で実施する傾向にありましたが、最近は京都造形を始めとして地方の美大も学内卒展に切り替えるケースが増えてきました。


  • 去年の名古屋芸術大学卒展の様子。

名古屋芸大も以前は駅近の公立美術館で卒展をやってましたが、学内でやるようになりましたね。
よく「学内で展示やらずに外でやれよ。身内向けに狭い世界におさまってるから美大はダメなんだ」と最近の卒展をご覧になってない方からご指摘を受けることもありますが、それについてはおいおいと。


ムサビの場合は1月に展示した状態で講評・採点し、そのまま学内で一般公開するので意味合いとしては「卒業制作=卒業制作展」になってます。なので学生さんの学内卒展にかける気持ちはハンパないです。
例年ファインアート(五美大展)と視デ・工デ以外は学科ごとの学外卒展はやっていません。


  • 去年の視デ・コンタクト展の様子

一方タマビは1月に講評終わらせてから3月に学内展示なので、学内卒展における学生さんのモチベーションは正直かなり低いけど、2月に行う各学科の学外卒展の気合の入れようはすごいです。
(上野毛キャンパスの統合デザイン学科等はムサビと同じく1月に講評をやりそのまま展示してます)

そう、ムサタマでも「卒展の位置付け」が全然違うんです。
あ、各美大の卒展スケジュールは、1月に書かせてもらいます。


「卒展」と「芸術祭」の大きな違いは、基本的に卒展は1回しか経験しない(できない)こと。
社会人や短大編入組、大学院以外は誰も参加経験値がないんです。みんな卒展初心者。
なおかつ芸術祭のような引継ぎが全然無く、前例が蓄積されないので、自主的に展示をやってきた人・いろんな展示を見てきた人とそうじゃない人の差が激しく出ちゃうんです。

かくいう手羽もグループ展を一度やったくらいで、ちゃんとした展示は卒展がほぼ初めてでした。
現在開催中の
小平アートサイト よりみち芸術 2019
の前身である「小平野外彫刻展」のリーダーを学生時代にやったことがあって、それが最初で最後の学外展示。

こういう企画に参加すると「搬入出にはどういう道具が必要か」「現場ではどんなことに注意しないといけないか」「DMの作り方」等を知ることができるので、「学校が用意した展示」ではなく「学外での有志展」は一度はやっておいて損はないっす。

まあ、そんなレベルだったもんで卒展での「事前にそれを教えてくれてたら回避できたのに・・・」「なんで気が付かなかったんだろ」といういくつもの失敗を今でもなんかの瞬間に思い出すことがあるんです・・ほんと悔しくて・・。


前置きが長くなりました。

というわけで、現在卒業制作を作ってる人のために、
「こういう部分を気を付けるといいよ」
「卒業制作で陥りやすい点」

をまとめました。

教育研究効果・美術的評価は先生にまかせるとして、教務課時代に卒展担当を5年やり、毎年ムサビ含め他大学の卒展を見て回ってる手羽が、精神論じゃないテクニカルな部分を書いていきます。
教員は基本的に自学科の卒展しか見れないんで、他大学含めジャンル関係なく(ここ大事)、自腹(趣味)で卒展を見たボリュームだと手羽は日本で五本の指に入るはず。
このシリーズで使ってる写真はほぼ全部手羽が去年の卒展で撮影したもので、TOP画像は去年の情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了研究発表会の様子。

あ、ムサビ生向き(学内展示)な内容になってるけど、他美大の方、また卒展に関係なくこれから展示を考えてる人にも参考になると思います。手羽ブログを昔から読んでる人は「またこの話かよ」と思うかもしれませんが、毎年バージョンを上げてますんで(笑)
それでもやはり毎年ムサビの卒展を見ながら「今年もこの失敗をしてる学生さんがいるなあ・・手羽美★を読んでくれてたらなあ・・」と思うことがしばしば・・4年生に拡散してあげてください。


まずは準備編をお届け。
最初はこれ・・というか、いきなりこのシリーズで一番伝えたい結論でもあるんですが。

1.卒業制作展は卒業記念制作展ではない

ムサビの卒制展サイトや卒制DMには毎年こう書いてあります。
「制作研究の集大成ともいえる卒業制作・修了制作を・・・」
ムサビは昔からこのフレーズを使っていて、いろんな美大さんでも今は使われています。で、ここに最大のヒントが隠れているの、気がついてました?


「卒業制作」は「4年間、あなたは何をやってきましたか?その集大成を表現しなさい」という最後の授業なんです。 「基礎造形1」「絵画III」とか普段の授業と同じレベルに考えてちゃダメで、それに気がついてない人が意外と多いかもしれません。

また、卒業制作は「卒業記念制作ではありません」
小学校卒業の時にみんなでワイワイ作ったトーテムポールや中学校卒業の時に造った巨大タイル壁画じゃないんです。 「みんなとの思い出作りに、記念になんか作りなよ」ではなく、「これまでの自分の集大成」を作るのが卒業制作なんですね。
「卒業制作だから大きなものを初めて作ってみた」ではなく「4年間学んだことを進化(深化)させ、形的にも大きくさせる」が必要になってくる。
あ、「卒業制作で初めての素材やテーマに取り組む。大きなものを作る」なチャレンジ精神を否定してるわけでなく、それだったら試作やモックアップを何度も作って、研究をたんまりやったものを発表しようね、ってことです。

そして極端な話、「あなたは22年間、何を感じ、考え、何に取り組みましたか?」と問われてるのが卒業制作でもあります。
「あなたの4年間は1日で考えて3日ぐらいで●●と●●を組み合わせただけのように見える作品と等価だったんですか? 」
「あなたの22年間は、試作品を作ってれば回避できたであろう、重さでその自然とピローンと折れ曲がってしまった作品と同じなんですか?」
ということ。
この意識の違いは、作者に直接言わないだけで見てる側からするとはっきりわかります。


続く

こんな話を35個気が向いたら書いていきます(笑)
次は来週木曜日の予定。



以上、昨日「小平市は23区より確実に2,3度寒い」とバカにしたら、小平住民スタッフから「23区は二酸化炭素で暖かいだけじゃないですか?」とまさかの小平中心的な考えで反論された手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。