【一般大学と美大の違い】東工大×ムサビ合同ワークショップで「鏡」をモチーフに考える

2018年8月4日(土)

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東工大との合同ワークショップ「コンセプト・デザイニング2018by楽天ビューティー」のレポートをお送りしています。
これまでの話はこちら。
東工大×ムサビ合同ワークショップ「コンセプト・デザイニング2018by楽天ビューティ」スタート!
【アート的思考】東工大×ムサビ合同ワークショップ2日目!
東工大×ムサビ合同ワークショップ中間プレゼンに行ってきた


4日目はさらに場所を移動して、

石川台地区の6号館共創コモンズで作業を開始。
このままここが最終プレゼン会場になります。

いくつかのチームは材料を買い出しにいってたり、外で撮影してたりするんでこの場にいたのは3チームぐらい。これまで30人が1箇所でごちゃごちゃ動いてたからなんか寂しい(笑)
もう制作に入ってるグループもあれば、意見のすり合わせをまだやってるグループもいました。

最初のオリエンで私から「アウトプットの質・精度は(それほど)求めていません」と説明しています。もちろんアウトプットもいい方がいいんだけど、このワークショップの目的は
・両者の得意とする視点を学び合い、相互の専門性を活かした力の補完を目指す。
・答えのない課題に取り組む面白さを体験する。
・これまでになかった発想の転換・飛躍を体験する。
・「なんか好き」「面白い」の感覚を相手にちゃんと説明し理解させる。
・理工系と美術系の思考は「何が違うのか」「違わないのか」を知る。

なので、適当に話し合って立派なアウトプットを作るよりも、話し合う時間を優先してほしくて。少なくとも「東工大の僕らが頭作って考えるから、美大の君たちはガワ作ってよ」みたいなことは絶対に避けたい。さっきは「まだすり合わせをやってる」と書いたけど、趣旨的にむしろウェルカムな状態だったりするのです。


さて、今年のメインお題は「鏡」ですが、皆さんは「鏡」と聞いて何を連想しますか?

手羽が鏡で真っ先に思いつくのは「仮面ライダー龍騎」とBOØWYの「マリオット」ですね(笑)
ちなみに古堅先生はワークショップ初日の夜、カラオケでマリオネットを歌ったそうです。どうでもいい情報。

でも言葉としては「反対」「反射」かなあ。

今回「ああ。このワークショップ自体がムサビと東工大の違いを表す鏡みたいなものだなあ・・」と感じた出来事があって。「国立と私立」「理工系と美大」「大学院重視と学部重視」「研究重視と教育重視」もそうだし、「男女比が全く逆」が典型例。
やっぱり国立大学はルールが厳しく・・あ、ネガティブな意味ではなく、東工大さんにいるといかにムサビが適当な大学かがわかります。鏡というか、「一般大学と美大の違いが見えてくる」ですね。

今回のワークショップでわかったのが、「そうか。一般大学は美大でいうところの『演習室』がないんだな」ということ。
美大だと講義室とは別に、各学科が管理する「演習室」という部屋が必ず複数あります。
ざっくり説明すれば実技授業のための部屋で、そこでレクチャーもやるし、個人作業もするし、グループディスカッションもやるし、制作もやるし、食事もするし、休憩もする。
ま、「何でも部屋」です(笑)

これは7号館の演習室で、ビザ・ワールドワイド ニューフォームファクターワークショップをやった時の写真。
演習室がデフォルトなので特別な名前はなく、室番で呼んでます。

でも一般大学での「演習室」はゼミ部屋だったり「コンピュータ演習室」の意味が強く、制作しようと思ったら「工房」「工作センター」でやるしかない。もちろん大きなものを制作するには美大も工房になりますが、こういう「多少汚れてもOKの何でも部屋」って意外とないんですよ。


2006年ぐらいから「これから大学で必要なのはアクティブラーニングのためのラーニングコモンズだ!!」と叫ばれるようになりました。もともとラーニングコモンズとは大学図書館の学習支援スペースとして生まれた言葉ですが、今は「仲間との学び合いの場」「それをサポートするバックアップシステム」という意味合いになってます。
で、その時から「ん?それって演習室と何が違うの?」という疑問があったんだけど、美大でいうところの演習室という概念が一般大学にはなかったから、「ラーニングコモンズ」「共創コモンズ」「ワークショップルーム」「デザイン工房」という名前の部屋を新しく作ってるんだな、と。
ああ見えて、美大の演習室は時代の先を行ってる施設ってことがわかった瞬間(笑)

違いといえば、こんな張り紙を東工大で見つけました。

普通は「流しにカップラーメンの残り汁流すな」だし、美大だと「流しに石膏を流すな」と書いてあったりするけど、さすが東工大は「化学物質」なんだな、と。流すもののデフォルトが違う。


また、ムサビ生が「段ボールパネルはどこにありますか?」と東工大・野原先生に質問しててね。「場所教えてくれたら自分で取りに行きます。大丈夫、美大の女は力ありますから」な勢いで。
多分展示パネルを大量に管理してるのは美大だけってことに気が付いてなかったのかも。一般大学は使わないんです。なおかつ段ボールパネルってムサビのオリジナルパネルで他美大さんにもないんです(笑)
ムサビに当然あるものが他大学にもあると思ったら大間違い(もちろんその逆も)


お互いの施設で一緒にワークショップをやることで、自分のいいところ・悪いところ、当然なもの・当然じゃないもの、常識・非常識、ないもの・あるものが見えてくる。
ああ、これって鏡みたいだな、と。


以上、冒頭から頻繁に使ってる「一般大学」も完全な美大用語で、外で使うと恥ずかしいからこれを「反面教師」にしてね、の手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。