【 #美大受験2025 】結局美大受験で一番関係するのはこれかも #美大入試

2025年2月12日(水)

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武蔵野美術大学の2005年度一般選抜も本日が最終日となりました。
なので今年のアドバイスシリーズもこれがラスト。
最終日のムサビ試験は日本画学科、芸術文化学科、クリエイティブイノベーション学科、映像学科、そして彫刻学科。

彫刻学科のデッサン試験はモデルか石膏像が出ます!

え。言っていいのかって?
大丈夫。ちゃんと募集要項に書いてあるんで(笑)

デッサンAはモデル、デッサンBは石膏像とはっきりと。
そのモデルが男性か女性か、石膏像が何かはわかりませんが。
 
成安造形大さんの総合型のように、
2025年度 総合選抜入学試験(4期)特待生<実技方式> 公開モチーフについて | 成安造形大学

公平性を期すために「炭酸飲料(日本コカ・コーラ株式会社 スプライト 1.5ℓ)」等と細かくモチーフを事前に伝えている大学もありますが、ムサビの試験だとモチーフをはっきり書いてるのは彫刻学科だけなんですね。


この流れで、手羽のムサビ彫刻学科受験のエピソードを書きます。
というのも、今でも語り継がれる伝説の年だったんです。
長いので暇な方だけ読んでください。最後にアドバイス書いてるんで、そこまで飛んでもらっても結構です。

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手羽は第1志望がムサビ油絵学科で、第2志望がムサビ彫刻学科。
ムサビしか考えてなくて、一応腕試しとして入試が一番最初に行われる東京造形大彫刻も受験しました。あ、タマビは受けてません(なぜタマビを受けなかったかはリクエストがあれば書きます笑)

だから油絵対策に時間を使い、当時のムサビ彫刻の出題はずっと自画像だったけど、デッサンで自画像は入試までに4枚ぐらいしか描いたことがなかったんです。
夏明けから東京造形大対策用にモデルデッサン(東京造形大彫刻は女性ヌードだった)、12月後半ぐらいから隙間時間にムサビ彫刻対策で自画像をやったくらいで。
 
推薦入試も共通テスト併用もない時代で、一番倍率の低いムサビ彫刻学科でさえ当時は9倍、油絵学科で25倍と、美大現役合格はまだ少しだけ遠い世界。
東京造形彫刻は合格、ムサビ油絵は2次で落ちたから、「ムサビ彫刻も落ちて、自分は一浪して来年東京藝大受けるんだろうなあ・・」とぼんやりと思ってました。
 

そしてムサビ彫刻入試に突入。
試験場は忘れもしない4号館。螺旋階段の上で寒い中、ドアが開くのをずっと待ちました。
 
ようやくドアが開いて、アトリエに入ると・・。

モデル台が目に飛び込んできました。
ムサビ彫刻入試で初めてモデルさんを使った年だったんです。
  
でも、モデルデッサンは東京造形大対策で随分練習してたから、自画像よりは全然得意。
むしろモデル台を見た瞬間にホっとしたくらいです。
ただ、造形大彫刻は木炭デッサンだったから人体デッサンは木炭でしか描いたことがなくて。当時ムサビ彫刻は鉛筆デッサンだったんですよ。
鉛筆デッサンでモデルを描いた最初がムサビ入試本番。もう完全に手探り状態で、鉛筆でどう描き込んでいけばいいのかがわからない。入試中に「あ、こうやるといいんだ」と試しながら描いてました(笑) 
 
鉛筆の描き込みじゃどうあがいても負けなので、とにかく形と運動感を取ることに半日3時間かけました。たまたまイーゼルの場所も最前列右斜め前で運動感を出しやすく、描いてて楽しかったのを今でも覚えてます。


そして事件は午後に発生します。

その日は朝からどんよりとした曇り空。

当時のムサビ入試アトリエ会場は、自然光を使うために室内の照明を消灯した状態でやってたんですが、午後から外がさらに暗くなりはじめ、室内が真っ暗になってしまったのです。
もう笑えるくらいの暗さで。
 
手羽が通ってた画塾は自然光で描かせる画塾だったから、暗くなっていく自然光には全然慣れてたしし、ま、ぶっちゃけ半日観察してれば、残り1時間ぐらいならモチーフ見てなくてもある程度は描けるもんで(ぼそっ)
でも後から聞いた話だと、受験生から「真っ暗で見えないし描けない!」と苦情が大量に出てたそう。
 
モデルさんはずっと座ってる状態ではなく、20分やったら5分休憩、そしてまた20分・・を繰り返す進行で、その20分のターンを「1ポーズ」といいます。
試験監督が慌ただしくなってるのを横目で見てたら、残り3ポーズ目というところで試験監督がこう宣告したのです。

「照明を消した状態は次のポーズで終わります。最後の2ポーズは『紙を変えて』、室内の照明を点灯した状態でもう一度描いてもらいます。採点は2枚を見て決めます。」

えっ。
 
バタバタと新しい紙が配られて、室内の照明がつき、最後の2ポーズがスタート。
「2ポーズしかない」って縛りができて、今思えば自分はこの時、完全にゾーンに入ったんですよね。
消しゴムも使わず形や運動感が一発でバッチリ出たし、鉛筆にも勢いがでて、あの短時間であれ以上うまく描けた経験は他にないです。
 
「すぐに紙を用意できるってことは最初から2枚描かせるつもりだったんじゃないか?」と受験時は疑いましたが、職員になって確認したところ、やはりドタバタの緊急対応で、用紙を急いでかき集めたんですって。
教授も2枚一緒に見ると形を捉える形跡がわかるから採点しててすごく面白かったそうで、翌年の入試ではあえて2枚描かせてました。
 
それ以来ムサビのデッサン試験は「アトリエの照明は全室点灯状態」で行われるようになったとさ(手羽イチロウ著:100周年記念本「ムサビのことはオレに聞け-クネクネ人生それもよし-」より)
 

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というわけで、美大受験生最後のアドバイスは「美大入試はやっぱり最後は運」。
美大受験経験者なら「うんうん。そうよね」とうなづいてくれるんじゃないかしら。
もしモデルデッサンじゃなくて自画像だったら、もし自然光に慣れてなければ、くじ引きの場所が悪ければ、2枚目描くことにならなければ、手羽は確実に現役で受かってなかったと思ってます。
「最後は運」と言ってしまうと「変えられないもの=悲しいもの」と思われそうだけど、突然傾向が変わったり、忘れ物をしたり、試験ではいろいろ起きるだろうけど、それをポジティブに楽しんだ方がいいですよ、という意味です。

あ、モデルさんの場合はモデルさん用にストーブをたくから、いつも以上に部屋が暖かくなります。温度調整がしやすい洋服で受験してね。


さ、ムサビ入試ラスト。
受験生もスタッフも頑張りましょ!!


以上、手羽の想い出シーンで使った画像は全部AIで生成したものです、の手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。