芸術系大学連携による人材育成型アーツプロジェクト検証シンポジウム&閉講式に行ってきた

2017年3月26日(日)

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3月25日(土)、上野へ。

上野公園の桜はまだこんな感じ。お花見をやるにはまだ早い・・けど、すでにブルーシートが敷かれてました。

せっかく上野まで来たんだからと、

上野の森美術館でやってるVOCA2017展へ。
VOCA展とは全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などが40才以下の平面作品系作家を推薦・出品する仕組みで、一度見たかった展覧会。
さすがに時代にあったいい作品が多いですね。
ちなみに今年のVOCA賞はタマビ出身の幸田千依さんです。
30日までなのでお花見がてらどうぞ。


って、本当の目的はお花見でもVOCA展でもなく。

東京藝術大学で行われた

芸術系大学連携による人材育成型アーツプロジェクト検証シンポジウムに参加するためです。

全国芸術系大学コンソーシアムが実施する「文化芸術アソシエイツ育成プログラム」が終了し、その報告・検証とプログラム閉講式ってことですね。
文化芸術アソシエイツ育成プログラムとは、全国各地でアーツプロジェクトを企画立案できる人材育成を目的とした教育プログラムで、そのカリキュラムを全国の芸術系大学で共同開発しようという全く新しい試み。
どんなことをやってきたかは、これまでの手羽記事をご覧ください。
【ハマビさん、いいねっ!】beyond2020プログラムロゴマーク発表会に行ってきた
クマアカの文化芸術アソシエイツ育成プログラム気仙沼視察研修レポート
クマアカの文化芸術アソシエイツ育成プログラム気仙沼視察研修レポート2
【音大生の強みを知る】クマアカの文化芸術アソシエイツ育成プログラム気仙沼実践研修レポート

全国の芸術系大学から選ばれた精鋭16名。私たちは「アソシエイツメンバー」と呼んでました。
かなりの短時間で人選しなくちゃいけなかったんで、恐らくどの大学も「この人なら大丈夫だろう、恥ずかしくないだろう」と思いつく一番最初の人だったはず。



  • 藝大音楽学部の佐野靖教授。地域連携・大学連携担当をされています。


  • 文化庁の方。今回のプログラムには文化庁助成金が入ってます。


挨拶のあと、

熊本・気仙沼・文化庁で行われたプログラムの実施報告。

そして、アソシエイツメンバーによる報告とプレゼン。
皆さんには最終レポートとして「120万円規模で展開できる企画提案」が出されてました。

「2分以内で」ってことだったのにみんな全然2分じゃ終わらない(笑)
でも今回の経験は2分じゃ無理ですよね・・。

熊本で絵手紙を描くワークショップをやったら、「協力」という言葉を描いた子供がいたので理由を聞いたら、「避難所で大人が『みんなで協力しあおう』と言ってたけど、その大人達が喧嘩してた。やっぱりみんなで協力することが大事だと思った」と返ってきたんだとか。
「平成音楽大学の学生さんは被災直後から演奏会をつづけ、みんなから感謝されて自分の精神状態を保てたそうで、被災地のアーティスト支援も必要だと感じた」などなどかやはり現地にいかないとわからないことがたくさんあったようです。


でも実は4時からリンクロウの最終演奏会が中学校であったもんで、3時には藝大を出たかったの・・。
この段階で2時50分。かなり時間が押してる・・予定が変更され、いったん休憩タイム。
その間に、

最後に踊ってもらう小学生の舞のリハーサル。
藝大生の生演奏をバックに踊るわけだから、うらやましいなあ・・。
 
で3時5分に再開し、運営者側からのコメント。


  • 文化庁の方


  • 常葉大の先生だったかな?

手羽もコメントさせてもらいました。

今回感じたことは3点。
一つ目は、とにかく今回は時間がなくて、佐野先生をはじめ藝大の先生や事務局が考えたコンテンツにアソシエイツメンバーが参加する・・という方法をとるしかありませんでした。なので藝大さんにかなり負担をかけてしまってて・・。といって「ムサビさん全部やって」と言われたら・・・えーと・・・ちと無理です・・。
メンバーがその役割を担ってもらうことが本来の目的であり解決方法なんだけど、今の助成金額じゃほぼ無給になってしまう・・・いい状態にもっていくには違うところからもお金を獲得するしかないなあ・・。


2つ目は、「地域と協働して企画・実施できる人材育成」がこのプログラムの目的なんですが、交渉相手となる地域の役所などに「芸術」を理解できる人がほとんどいない現状があります。あ、偉そうに聞こえますが、簡単に書けば「美大?じゃロゴマーク作って。無料で」「音大?じゃ公民館でなんか演奏して。練習がてら」としか頼まれないという話です。
地域からの産官学連携依頼がすごく増えてるんだけど、「ブランディングデザインも美大のテリトリーでして、なぜロゴマークを作るのか?から話し合いたいんですけど」と説明しても「ブランディング?よくわからんからロゴマークだけ作ってくれればいい」な世界。
もっと美術・デザインや音楽の「翻訳者」が市役所だったり文化庁だったりにいないと、いくら美大や音大が頑張って地域に出て行ってもイベントをやって終わってしまうだけ。
「地域と協働して企画・実施できる人材育成」がカリキュラムポリシーであれば、ディプロマポリシーを「劇場や美術館で働く人を輩出するのではなく、文化庁や地域の市役所で働ける芸術家を輩出する」ともう少し具体的に設定してもいいのかも。


3つめは、音大と美大が連携するメリットは「近いようで遠い存在にまず理解してもらう方法を学ぶ」かもしれないな、と。
美大生も音大生も世間からみれば同じ「芸術系」のくくりですが、その考え方は全然違います。似てるようで違う・近いようで遠い、でも近い存在が音大と美大の関係。

美大生同士、美術関係者だけであるテーマを議論して「なんとなくわかる」という結論になりやすいのは「同じ言語で語ってるから」です。でもそれを社会に聞いても全然通じないのは言語が違うから。そこで同じ表現者だけど違う言語を持つ音楽関係者に聞いて、音楽関係者が理解できなければ世間・社会で理解してもらうことは絶対に不可能だし、理解できるようであれば第1ステップはクリアしてるといえる。

「美術館ではなく、公共施設でのヌード作品展示は是か非か」なんかいいテーマになるんじゃないかな。
美術関係者が「ヌードも芸術だ!!」と騒いだり議論したところで、それは美術の世界限定の言葉で語り合ってるだけ。世間には全く通じてないんですよね。「美術館ならともかく、自分の娘が通う小学校とかよく遊ぶスペースに、いくら芸術作品だろうが男性性器が露出してる作品はおいてもらいたくない。芸術の否定とかと違う次元の話」と言われ平行線になるだけ。
そこで美術関係者で話し合うよりも音楽関係者と議論した方が、前向きなものが見えてくる可能性が高いんじゃないかしら。「最初の理解者になりえる」ってことですね。
「美術と音楽の融合」みたいなでかい話ではなく、こういうディスカッション型の合同ワークショップをやってみるのも面白いかもしれません。


おっと、時間は3時10分。
人様のお子さんの踊りよりも自分の子供の演奏会の方が大事なもんで、手羽はコメント終わったらすぐに退席させてもらい、ドピューンと首都高速を飛ばし、

30分遅れで吹奏楽部のラスト演奏会を聴くことができました。
これでリンクロウの中学イベントがすべて終了。いよいよ彼も4月から高校生です。


ここからはムサビ・クマアカさんと藝大・一ノ瀬くんの写真を使わせてもらいます。
手羽が退席した後に、修了証の授与式。

ムサビから参加した2名。
二人ともちゃんとプレゼンできてて、おっちゃんは鼻高々でした。
 

今回は「第0回の試行版」で、どういうことが発生するのかを検証するための回でもあり、皆さんにはいろいろ不便や不満を感じさせてしまったと思います。
でも、プレゼンでは空気を読んでオブラートに包んで発表されていて、「ああ、さすが各大学から選ばれた精鋭16名だけあるなあ」と(笑)
でももしよかったら次回も参加してね。

皆さん本当にお疲れさまでした!!

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。