【音大生の強みを知る】クマアカの文化芸術アソシエイツ育成プログラム気仙沼実践研修レポート

2017年3月2日(木)

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全国芸術系大学コンソーシアム「文化芸術アソシエイツ育成プログラム」に参加してるクマアカさんから、2月25・26日に実施した気仙沼実践研修レポートが届きました。
視察編はこちら。
クマアカの文化芸術アソシエイツ育成プログラム気仙沼視察研修レポート
クマアカの文化芸術アソシエイツ育成プログラム気仙沼視察研修レポート2


グレー太文字がクマアカさんのレポート、黒文字が手羽補足コメントでお送りいたします。
しばらくはノーコメントで。


クマアカです。
2日間の気仙沼実践研修も無事に終了しました。


  • ホヤぼーや君のかおはめ

前回の視察研修とは違い、今回は実践研修ということで、音楽チーム、美術チームそれぞれ小中学校で児童生徒の皆さんと活動を行ってきました。

美術チームは気仙沼市立鹿折小学校で造形ワークショップ、音楽チームは気仙沼市立新月中学校で演奏指導というスケジュール。音楽チームの様子は見ることができなかったので、美術チームのワークショップを振り返ってみます。


1日目

今回のワークショップは藝大の安藤先生が企画。
鹿折小の児童の皆さん14名(1年生から6年生まで学年は様々)と、保護者の方が何名か参加してくれました。最初に先生からご自身の作品についてのお話があり、さらに色々な実験や宇宙の写真を見せてもらいました。


 
 

お話を聞いてイメージを膨らませたあと、いよいよ実践。
まずは日本画の垂らしこみの技法を使ってそれぞれの宇宙を表現してみました。水をひいた画用紙に絵の具をのせていくことで、思いもよらぬ形になったり、不思議な色ができたり…。
わあっと歓声をあげながら、色々な表現を楽しんでくれました。


 

後半はドリッピングや乾筆(かっぴつ、筆に水分をあまり含ませないでかすれを表現する)なども取り入れながら制作。
「見ていると自分もやりたくなりますね~」と保護者の皆さんや小学校の先生方も急きょ参加することに。

校長先生は絵の具セットを持ってきて参加してくださいました!(笑)



完成した作品はそれぞれ素敵な仕上がりになりました。皆さん色の組み合わせや配置の仕方などこだわりを持ってましたね。

初めは参加者全員で一つの作品を制作する時間をとる計画もあったのですが、今回は各々の制作がとても盛り上がったので、ひとまずこれで終了。2時間と短い時間のワークショップでしたが「家や図工の時間でもやってみる!」「楽しかった~」と笑顔で言ってくれた子もいて、今回の経験が何かに繋がると嬉しいです。
(まだ色々調整中ですが、今回のワークショップの様子は3月から文化庁で行われる展覧会でも紹介される予定です)


その後中学校で演奏指導をしていた音楽チームと合流して、前回と同じお店で夕飯をいただきましたが、相変わらずお酒が進むメンバーで・・。



二日目

気仙沼市立新月中学校が会場。
まず午前中は、昨日と同じく美術チームと音楽チームに分かれてそれぞれ発表の準備をしました。

美術チームはワークショップの報告をするために、発表に向けて段取りを相談したり機材を設置したり。今回美術チームは先生も含めて3名しかおらず…(あとで触れますが音楽チームは今回10名近い人数で…)なので少数精鋭で頑張りましたよ。


美術チームは発表の準備が早めに終わったので、音楽チームの活動を見学。
この日の発表会に向けて、作曲をしているアソシエイツのメンバーが復興のファンファーレを作曲してきたそうで(!)

その曲の練習や、そのほか演奏指導を音楽チームの皆さんが実施していました。


 

新月中学校の生徒さん以外にも、他校の中学校・高校の生徒の皆さんも集まってくれて、楽器ごとに分かれて練習。

この育成プログラムの気仙沼班、音楽チームでアソシエイツとして参加しているメンバーは3名なのですが、演奏指導にもっと人数がいるということで、この2日間は藝大の学生さんや卒業生の方も6名応援に来てくれてました!
見学していると、皆さん指導する時の話し方がすごくお上手で…「こういう風に演奏するといいよ!」というようなイメージを色々に例えながら分かりやすい言葉で伝えられていて、自分も勉強になります。



このあたりからコメントを入れますかね。

藝大生に演奏指導してもらえるなんて、すんごく羨ましいんですけど・・・リンクロウくんはチューバやってるからこの中に混ぜてほしかったなあ・・でもチューバとかを持って長距離移動しなくちゃいけないわけだから、大変だよなあ・・。

東京藝大の音楽学部は、
早期教育プロジェクト
東京藝大ジュニア・アカデミー
など、早期教育に力を入れ始めてます。
音楽の「早期レッスン」にあたる考え方は美術にはなく、せいぜい「楽しく自由に絵を描こう!」な絵画教室的指導ぐらい。「絵は自由に描いていいんだよ」は正しいとは思ってるけど、個人的には「楽しさの次に待ってるもの」「美術もステップを踏んでうまくなるし、ある普遍的な指導方法がある」という考え方が浸透しないと、いつまでも「美術なんていらない」と言われ続けそうな気がしてて。
 

お昼休憩のあと、発表会本番。保護者の方や地域の皆さんにもたくさんお越しいただきました!



美術チームは鹿折小のワークショップの報告は、私ともう一人の美術チームからお話を。ちょっとぐだぐだMCでしたかね…(笑)。
映像も見てもらったので、楽しかった雰囲気が伝わっているといいなあと思います。


 

音楽チームは打楽器と金管五重奏の演奏を披露。
月並みですけどかっこよかったです。パフォーマンスで魅せられるって強いですね…。来場者の方のなかには身体でリズムをとりながら聞いている方もいらして、なんとアンコールも!
本当に想定していなかったみたいで演奏者の皆さんもざわついていました(笑)


演奏してる動画を見せてもらったけど、ほんと、かっちょよかったです。
ここが音楽の強いところで、美術にも短時間で伝わりやすいパフォーマンスが開発されるといいんだけど。ライブペインティングとはちょっと違う気もしてて。

最後は吹奏楽の生徒さんたちと音楽チームで、練習していたファンファーレを披露。
明るく、なんとなく温かみのあるファンファーレだったなーと思います。今後市内の中学校、高校に楽譜を配布するそうで、色々な折に演奏していきたいと教頭先生がお話くださいました。
そんなこんなで拍手で無事に発表会も終了しました。

発表会終了後、新幹線の時間が迫っていたためすぐに中学校を出発…毎回とんぼ帰りなので、ゆっくり人と話したり街を歩いたりできなかったのがちょっと残念で。


 

前回の視察研修と今回の実践研修を通して、この活動が復興支援としてどういう意味があったのか、気仙沼の皆さんにとってはどういう時間だったんだろう…と、まだ色々と消化できていないところも多々あります。
ワークショップや演奏の時間は、それぞれ楽しんではもらえたかな?と思うので、これからまた色々整理していきたいなと思います。

今回のプログラムとしては、今後文化庁で行う展覧会の準備があり、最終レポートの課題も発表されたので(これがなかなか大変そうですが…)、3月まで頑張ります!



クマアカさん、ありがとうございました!最終レポートまでよろしくね!


今回のクマカポートを読んで、発見したことが2つあって。
一つ目は「音楽を学んでる人の強み」

「音大卒」は武器になる
大内 孝夫 (著), 武蔵野音楽大学(協力)
こちらは「音大生の本質的な強み」が書かれた本ですが、「なんだ。ほとんどは美大生にもあてはまる話じゃん」と感じながら読みました。

でも今回のレポートから、音大生は(必須じゃないけど)楽しませるためにトークや見栄えが必要だから、パフォーマンス、つまりプレゼン能力や自己プロデュース能力が美大生より高いことに気が付き。

美術・・特にファインアート系はトークしながら絵を描くことはないんで(笑)、プレゼン能力はそんなに求められません。基本的にファインアート系の人は人前でプレゼン・・好き勝手にしゃべるだけじゃなく「時間通りにしゃべる」「伝えたいことを簡潔にしゃべる」って意味・・が苦手な人が多くて。
 

「これからは作家もプレゼン能力が必要だ!」と鍛えても、それは「美術を学んでる人の本質的な強み」ではなく。ただ同じ表現者なので、なにか「強み」に転換できるうまい方法がありそうな気はしてます。
 

 
二つ目はさっき書いたことと関係するんだけど、「音大生と美大生が一緒に動くことでの発見」
一緒に活動する経験は(芸大生は別にして)意外とないもんね。

世の中的には同じカテゴリーに入れられる「芸術系大学生」。
でも「美大生の本質的な学び」と「音大生の本質的な学び」は微妙に違うので、一緒に動くことでその違いを発見し、よいものを取り入れることができる。音楽的な考え方を美術にいれたり、その逆とか。
なんとなく「文化芸術アソシエイツ育成プログラム」の自分の中のゴールのようなものが見えてきた気がして、「自分(美大生)の強みを生かしたプログラム」ではなく、「お互いの強みや弱みを知って、『美術』『音楽』に縛られない新たなアーツプロジェクトを企画立案できる人材育成プログラム」なのかな、と。

ちなみに美大生には短い時間で人を感動させられる音大生のスキルがとってもうらやましいし、クラッシックを習ってる音大生は美術の「白紙に絵の具を落とす」「立体的にものを作れる」感覚が信じられないらしいです(笑)

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。