大学職員・美大職員についてシリーズで書いています。
これまでの話はこちら↓
■【実は隠れた人気業種】君も大学職員になろう1
■【美大卒美大職員は意外と少ない】君も大学職員になろう2
■【美大職員に美術の知識は必要?】大学職員になろう3
■【美大の事務組織編】大学職員になろう4
■【ムサビ職員になろう】大学職員になろう5
今日も「美大職員」について書きます。
アレがアレなので、ここからはさらに「あくまでも個人の見解です」ということを強調・・。
学校法人武蔵野美術大学が専任職員(新卒・中途)を募集中です。
■専任職員募集(新卒採用)|マイナビ2023
■専任職員募集(中途採用)|マイナビ転職
新卒の募集は実に10数年ぶり(第2新卒は採用してきたけど)。
中途採用のマイナビエントリー締切が明日5月26日(木)、新卒採用エントリー〆切が6月3日(金)17:00とかなり迫ってきました。急げ!!
今日は、マイナビエントリーページの先輩職員コメントを引用しながら、補足していきます。
まずは新卒採用ページの先輩紹介を見ていきましょう。
こちらは学生支援グループ教務チームの荻原くんが登場しています。
しかし、なんだ、この爽やかな笑顔は。
手羽に突っ込んでくれといわんばかり。こういうの見ると、若い芽を摘みたくなるのよね。
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「学生・教員・職員など、立場の異なるさまざまな人とのコミュニケーションが必要な仕事です。大変な面もありますが、それも面白さの一つです」
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これはほんとそうで、大学と会社の違いは「法人と教学の2つが同じ組織・敷地に存在する」です。
難しい言い方しましたが、簡単に言えば、学校法人の経営トップには理事長がおり、大学のトップは学長がいるので、2方面の承認・了解をもらわないといけません。「法人運営」と「大学運営」では、優先すべきことがちょっと違うんですね。
また、規則上は「大学職員」「組織」として同じ立場なんだけど「教員」「研究室」という事務職員とは違った存在があり、そして敷地内には常に顧客の学生さんがいる。
それらとうまく調整してやっていくのが大学事務職員のメインの仕事であり、、面白くもあり難しいところだったりします。
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私が所属しているのは、授業運営を担う学生支援グループ教務チームです。ここは学生との接点が一番多いセクションであり、私は主に実技授業の支援を担当しています。
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これまで「美大といっても美大独自の仕事は美術館ぐらいでほとんど同じ」と書いてきたけど、「教務の実技授業支援」というのは完全に美大特有の仕事ですね。
何を隠そう、手羽が入職して一番最初にやった仕事がこの「教務課の実技授業支援」、いわゆる教室整備でした。
普段はアトリエや演習室、工房、共有スペースの管理などがメイン業務で、卒業・修了制作展や入試の会場整備なども行います。
この仕事を5年やったおかげで、鷹の台キャンパスの全ての建物の室番とドアとトイレの位置、広さ、どういう備品が入ってるかが頭に入ってます。今でも地味にいろんなシーンで役立つ能力(笑)
ちなみに「ムサビ出身だからもともと知ってたんでしょ?」と言われるけど、ファインアート系の学生はデザイン系、デザイン系の学生はファインアートの敷地にほとんど入らないんです(学生時代に10号館や8号館に入ったことはほとんどなかった)。
なので建物や備品名を覚えたのは9割方職員になってからですね。
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半年かけて準備を進め、毎年1万3000人も来場する1月の卒業制作展を無事に迎えたときにはホッとしますね。達成感は後からじわじわ湧いてきます。
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この文章読んでふと気が付いたけど、「多くの部署でイベントを抱えてる」のも大学(美大)の特徴かもしれません。
美術館の展覧会や入試広報系のオープンキャンパスはもとより、教務チームの卒業・修了制作展、学生生活チームの芸術祭(学園祭)や五美大展、あとは入学式・卒業式など。「繁忙期をずらしてる」という考え方もできるけど。
続いて、中途採用ページの先輩職員コメントを紹介しましょう。
こちらは入試チームの塩山さん。
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Q ずばり職場の魅力は?
少数精鋭の組織なので入職すぐから責任ある仕事を任せてもらえ、中心メンバーとして活躍できる点です。
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これって「全然人手が足りてねーんだよ!」と言ってるような・・。
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Q 何故この仕事を選んだのですか?
前職で法人顧客の課題解決に取り組んだ経験から、課題探求力やデザイン志向を持った人材育成の重要性に気付き(中略)
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すごいなー。
さっきの荻原くんも、
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美術・デザインは、社会のいろいろな課題の解決にもっと寄与できると感じています。
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と言ってるし、入職して3,4年でこんなコメントができるなんてみんな優秀な人材ですよね。
ちなみに先週末、若手職員をメインとした募集広報プロジェクトの研修を行い、そこで対話型鑑賞を試しにやったんです。(日本画卒のドルさんに協力してもらいました)
すると、みんなが受け身じゃなく、自由に活発に作品の感想を言い合ってて、ちょっと手羽は感動しちゃったんですよ。多分普通に大人が集まるとこうはならないわけで、優秀な人がそろってるんだなあ、と。もちろん手羽のファシリテートが素晴らしかったからなんだけど(誰も褒めてくれないので自分で言ってみた)
個人的には、これからの美大のためにも、もっと美大卒業生が美大職員になってほしいと思ってはいます。
ただ、美大出身者は「美大があまりにも身近すぎる」「バックオフィスの存在をイメージしにくい」のもあって、どうしても一般大学卒でいろいろ美大の活動を調べたり、ジェネラリスト的な発想を持ってる人と比較すると発言が弱く見え、なかなか最終面接まで上がってこれない傾向にあります。
美大生に甘い手羽でさえ、それをよく感じます。
美大卒の人が「高校生に美術の面白さを伝えたいんです!」「ワークショップと産学経験あります!」「絵を描くのが好きです!」「美術を頑張ってる後輩を応援したいんです!」「学生や受験生に接したい!」と熱く語ってくれるのは嬉しいのだけど、あまり強く言い過ぎてしまうと「そういう仕事しかないと思ってるのかな?」「美大のスペックってそんなもん?」と面接官が感じ、逆効果になる可能性もあるんです。
「美大の本質的な学びがなんなのか?」「美術やデザインの必要性は何か?」、つまり今どきの言葉を使うなら「パーパス(存在意義)」を自分の言葉でどれくらい語れるかがポイントで、これが美大生または美大OBなのにちゃんとできないとむしろマイナス評価になると。
てなことを書くと「じゃ、全然美大卒の面接メリットがないじゃん・・」と思うはず。
そこはやっぱり、自分の体験談を具体例として深く語れる強みじゃないかしら。
山口周さんや末永幸歩さんの本を読んで、知識として学ぶのには限界があるわけで、今注目されてるこの分野をリアルに経験し、自分事として理解できてるのは美大出身者しかいないわけで。
「美大のこと、美大の危機的な将来を自分事で考えられる」「美大での本質的な学びやその必要を意識し体感してる」美大OBOGが美大職員に増えれば、もっと美術・デザイン業界や美大業界、そして社会が良くなるはずだと信じてます。
ちなみに発売されたばかりのブルーピリオド12巻は「美大で美術を学ぶ意味はあるのか?」がテーマになってます。次の展開が気になる。。
あ、気をつけて欲しいのは「アート思考の重要性を語れば高ポイントになります」という暗記型のつまらない話ではなく、「自分の経験と分析を、自分の言葉で語れる人にみんな興味を持ちますよ」ということです。
「流行りのアート思考やデザイン思考をいろいろ調べてみたけど、私の経験から、そんなものより美大は絵を描ける人をちゃんと育てるべきだと思います!」と面接で語りだしたら、手羽は「おっ!!」となるかも。
続くっ!
次がラストかな。
以上、ムサビ新卒採用は10数年ぶりと書いたけど、美大卒の新卒採用は実は手羽が最後なんです、の手羽がお送りいたしました。
「ムサビがずっと美大新卒を採用しなかったのは、手羽を採用して失敗したからじゃねーの?」というツッコミは無しの方向でお願いいたします。
ようやく昨日、31日講演会用のスライドを事前提出できたけど、今週金曜に高校1年+保護者向けの説明会があるからスライド1時間分をこれから作らないといけない・・パワポ地獄はまだまだ続く。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。