学校法人武蔵野美術大学が専任職員(新卒・中途)の募集をスタートしました。
■専任職員募集(新卒採用・中途採用)のお知らせ
というわけで、大学職員・美大職員についてシリーズで書いています。
これまでの話はこちら↓
■【実は隠れた人気業種】君も大学職員になろう1
■【美大卒美大職員は意外と少ない】君も大学職員になろう2
■【美大職員に美術の知識は必要?】大学職員になろう3
今日も「美大職員」について書きます。
突然ですが、大学にはどんな組織があると思いますか?
多くの人が真っ先に思いつくのは教務課と就職課でしょう。
学生サービスの中枢だし、学生さんと一番接触が多いからなじみもあるはず。「学務担当」とか「キャリアセンター」とか名前は違っても大学設立時から存在するのがこの2つの組織なはずです。
先輩職員からすると「大学職員である以上、一度は教務課や就職課を経験させたい」と思ってます。
また、絶対に存在する大学部署は総務課と経理課です。人・お金を管理する部署で無くちゃ困る組織。
でも、美大ならではの組織とは何があるんだろう?通常の大学と違ったりするのか?
てなわけで、今日はいくつかの美大の事務組織を見ていくことにします。
ただ教育組織構成図はどこも出してるんだけど、事務組織図って別になくてもいいものなので公開してないところも多いんです。WEBの「問い合わせ先」は学生・受験生向けに作られてるので、総務課や人事課が入ってなかったりね。
なので、大学の事務組織図をまとめた記事はあまりないはず(笑)
まずは多摩美術大学から。
法人本部は上野毛キャンパスにあります。かなりオーソドックスな大学組織構成と言えるんじゃないでしょうか。
去年まで総合企画部の中に「企画課」と「広報課」がありましたが組織改編し、広報部の中に「広報課」と「社会連携課」ができました。TUBなど業務の広がりに対応するための改編と思われます。一見「広報」と「社会連携」って関係なさそうな気もしますが、実はすごいつながりがあり、これも一つの考え方ですね。
次は東京工芸大学。
東京工芸さんは厚木キャンパスが工学部、中野キャンパスが芸術学部で、それぞれに庶務や教務、入試課等を配置してます。
次に東京藝術大学。
有名な話で「東京藝大には入試課と就職課がない」があります。
それは無くても困らないから・・というのは伝説で、今は入試全般は学生課の入学試験係、就職はキャリア支援担当がやってます。
続いては、成安造形大学。
「学校法人京都成安学園」が開設する大学であり、保育園もあります。
それほど大きくない組織のはずですが、「外部資金室」「危機管理室」があったり、今どきな印象を受けます。
今どきってことだとわかりやすいのが、長岡造形大学。
組織図がなかったので窓口マップから。
シンプルな組織構成ではあるけど教務課、学生支援課の他に「修学特別支援室」「地域協創課」があるのが今どきな感じがします。20年前だと考えられなかった部署ですね。
続いて東京造形大学。
こちらも組織図が見つからなかったので一覧で。
「進路支援課」と「就職課」の違いがわからず、問い合わせ先を見て、進路支援課は入学試験やオープンキャンパスなど高校生のための進路支援であり、就職課は学生の進路、就職関係の部署だと判明。
最初はわかりにくいなあと思ったけど、「入試」という言葉が「選抜」という表現に置き換わってきてるので、「入試課」の方がむしろおかしく、よくよく考えると「進路支援」という表現はうまいなあ、と気が付きました。勉強になります。
また、東京造形大事務局の特色は「学術交流課」で、こうやって組織一覧で見ると1部署に過ぎないけど、社会連携、図書館、美術館、国際交流、教員の研究活動など、かなり幅広いテリトリの部署だったりします。
課長さんは大変だろうなあ・・。
神戸芸術工科大学はこうなってます。
■事務局 | 神戸芸術工科大学
教務課、学科事務室、学生生活・国際交流課、広報入試課、事業推進課、キャリアセンター室、情報図書館事務室という構成で、内容見ると事業推進課は庶務課みたいなものかな。
これだけ見ると「あれ?総務課がないぞ?」と思うけど、神戸芸術工科大学は学校法人 谷岡学園が運営する大学なので、法人本部に総務課、人事課、財務課があります。
つづいて京都芸術大学。
「組織図」となるとこちらになるんですが、教育研究組織メインな図。
しかし、幅広くやってるなあ・・。
事務局のみだと問い合わせ先を見るしかなく、
「社会連携課」ではなく「社会実装支援課」なのがさすがだなと思いますが、手羽が感心したのは「キャリアデザインセンター」。
就職課だと「就職だけじゃない!」「カタカタの方がかっこいい」ということでこの10年ぐらいで「キャリアセンター」に名称を変えた大学が多いんですが、手羽は前から言葉足らずだと思っていて。「キャリアデザインセンター」の方がやってること、大学が目指すことを表してる気がしてます。
大きな組織なのは文化学園大学もそうです。
組織構成 | 学校法人 文化学園
学校法人文化学園は文化服装学院は有名ですが、大学院大学も運営しています。
特徴的なのは、収益事業組織が法人内に位置づけられてるところですね。今まで紹介した中では一つもありませんでした。(だいたいは別会社)
文化出版局は、もちろん装苑を作っている部署です。
そして武蔵野美術大学。
ムサビは数年前から「グループ・チーム制」を使っていて、かなりはしょって説明するとグループが「部」で、チームが「課」です。うーん、ちゃんと説明するとチームは「プロジェクト」ぐらいな位置づけですが・・長くなりそうなので、細かくは後日説明します。
同じグループ・チーム制を2017年度からやっているのが京都精華大学。
意外と大学関係者以外は知らないことですが、京都国際マンガミュージアムは京都精華さんが運営されてるんです(厳密には京都市との共同運営)。なので学校法人京都精華大学に就職すると着任先によってはマンガミュージアムで働くこともあります。
こうやって見てみると、美大の事務組織の特色は「美術館がある」ぐらいで、他はあまり総合大学と変わらないのがわかると思います。
しかし、事務組織の考え方がその大学の文化によっていろいろあるって面白くないですか?え?手羽だけ?
事務組織を紹介してきたのは2つ理由があるんです。
1つ目は「『美大職員』といってもいろんな仕事(部署)がある」のを知ってもらいたかったから。
どうしても学生さんが知ってる教務課や就職課など学生窓口に目がいきがちで、皆さんのイメージも「カウンターに機嫌悪そうな職員が立ってる」かもしれませんが、「学校法人」を動かすためには企画、経営戦略、施設管理、総務、人事、経理、IR、情報システム、監査など学生との交流がほとんどない『バックオフィス部署』がちゃんと機能してなくてはいけません。
つまり、専門職採用じゃない限り、いつかジョブローテーションされるはずだから、面接で「クリエイティブな活動を頑張ってる学生を支援したいんです!」とあまり強く言い過ぎちゃうと、「学生に接する仕事だけじゃないんだけど」「この人は大学のバックオフィスの存在知らないんだな・・」と思われる可能性がある、と。情熱は大事だけど、バランスも大事ってことですね。
言いたかった二つ目は。
教務・就職・総務・経理は昔からほとんど名称もポジションも変わらないけど、「広報」「企画●●」「社会連携」「国際」などの概念は比較的新しい業務で、どんどん広がりをみせてます。
「社会連携」なんて20年前ぐらいは「赤字の公開講座をやってる日陰の部署」なイメージしかなかった(笑)、今は大学の大事なポジションになってる。
「入試」「広報」部署は、「入試広報課」という名称で一緒の大学もあれば、入試は教学系部署、広報は法人系部署に設置されてるところもあり、と思えば1年後どこかの部の下に入ったり、ひとつの部屋になったり分かれたりを多くの大学で繰り返しています。「入試も教育・学生サービスと捉えるか」「大学広報と入試広報を分けるかどうか」等かなり悩ましい問題がそこにあって。
どの大学も答えをずっと探してるので、組織改編で一番変更があるのがこれらの部署です。
ただ、社会連携や企画広報は「答えがよくわからないから、いろいろできる部署」でもあり、教務と違うのは「そこにいる人によって何をやるか、価値が大きく変わる部署」でもある、と。
これも面白くないですか?え?手羽だけ?
続く。
以上、どの大学職員に聞いても「理念高い立派な組織をいくら作っても、結局はそこにいる人次第」と、それを言っちゃおしまいな答えが返ってきてしまう手羽がお送りいたしました。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。