【夢考房】金沢工業大学に行ってきた その2

2018年12月3日(月)

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先週の富山大学芸術文化学部、金沢工業大学訪問レポートの続きです。


  • キャンパスの中を道路が通ってて、車のスピードが出ないようにデコボコやクネクネが作られていた


  • 外観は昭和な感じなんだけど、中はリノベーションをかなりされてる


  • 駐輪場。かっこええ

こちらは喫煙所。
都内は大学キャンパスも含め軒下での喫煙が禁止になるんで、こういうオシャレな喫煙所を建てることになるのかな。

こちらは学校法人金沢工業大学が運営する国際高等専門学校、通称国際高専、略称ICTのキャンパス。
「え。金沢の高専っていえば」と思った方正解。金沢工業高等専門学校、通称「金沢高専」が2018年4月から国際高専に名称変更したんです。
1・2年は石川県白山市に新しくできた白山麓キャンパスで全寮制で学んで(しかも英語ベース)、3年は海外留学、4年・5年でこの金沢工業大学キャンパスを使う仕組み。なので厳密に書くと「ICTの4,5年の建物」かな。
学費300万円と聞くとびっくりな金額だけど、1・2年は寮費が含まれており、3年は海外授業料+ホームステイ費入れて300万円なので、そこまで聞くと「なるほど」と感じます。ちなみに4,5年は学費が160万円になります。
形だけではない、徹底したグローバル人材を育てる取り組みはすごいけど、個人的には白山プロジェクトのコンセプト作りにロフトワークさんが関係してるのがうらやましいなあ、と思ったり。


さて、いよいよ「金沢工大さんといえばこれでしょ!」な場所へ。

夢考房です。「工」房ではなく「考」房。

一言で説明するなら、「学生が自主的に『ものづくり』に取り組む場」かな。
基本は課外活動のための仕組みで、学生が自主的にプロジェクトを組み制作するのを支援しています。夢考房の教育システム自体は1993年からあるんですが場所が手狭になってきて、2017年に新たにこの建物が作られました。

ちなみに夢考房の前にはソーラープロジェクト用のトラックがとまってました。
このスポンサーの数もすごいけど、トラック自体寄贈されたものだそうです。(しかもOBとかじゃないらしい)


  • 1階事務所


  • 1階の制作エリア。午前中だったんで全然学生さんがいませんが、夕方になると埋まるそう


  • これまで作られた車たち


  • ソーラーカーも


感動したことがいくつかあるんだけど、まずは

パーツショップですね。


  • 学生さんがプロジェクトで使いそうなあらゆるパーツが置かれてます


  • タミヤのモーターも


  • 鉄板や鋼材もストックされてる

なおかつ料金箱制なんですよ。
すごいなあ。

制作用機材を見ていくと、


  • 旋盤。すごくきれいに手入れされてるのがわかる。


  • 3Dプリンタなどが置かれた部屋


  • これは鉄の3Dプリンタなんですって。どういう仕組みなんだろ?鋳造か、はたまた鉄の塊を削るのか


  • 右が車のバッテリーなどを充電する部屋、左がエンジンのテストルームで防音室になってた


  • 富山大さんにもあった仮置き用紙。期間を1日過ぎてるけど大丈夫かな(ドキドキ)

建物は3階建てで、ある意味一番驚いたのは2,3階にある

試走エリアですね。

ロボコンだったりロボットサッカー大会だったり、決まったフィールド上をバトルする大会があります。あ、手羽は隠れロボコンファンでして(笑)
多くの大学や高専さんは実験・練習する場がポイントになってて、使わなくなった体育館や教室に設営したり、試したらすぐにフィールドを分解したりと苦労なさってるんだけど、試走エリアにずっと設営したままでいられるんです。
そこまで設計された工房は他になく、これは他大学さんがみたら涎モンだろうなあ・・。

なおかつ、上記写真は2階の試走エリアで、3階には


  • 天井が高い試走エリアもあるんです。ここならドローンも飛ばせるし、高さが必要な最近のロボコンも試せる

て、てか、こ、こ、ここにあるは今年の学生ロボコンと高専ロボコンのフィールドじゃないっすか!!手羽大コーフン!!

コホン・・。
理工系は鳥人間やロボコン、ソーラーカーコンテストとか、わかりやすい大学対抗競技会があるから、昔からうらやましくて。美大もコンテストがないことはないけど、理工系競技は優劣が時間や距離など数字としてはっきり出るから映像化もしやすい。美術系だと人が評価するしかないから、昨日のM-1みたいに「和牛だと思ったんだけどなあ」とどうしてもモヤモヤなことが起きちゃう。
その「はっきりできないところ」が美術の良さでもあるんだけど、「良さ・必要性を広める」という意味では、何か数値化できる美大対抗競技みたいなのをやりたいんですよね。
なんだろ。「定規使わずにまっすぐ鉛筆で線を引く大会」とかかな。・・・それ、面白いか?

良さ・必要性を一般の方にも広められれば、こうやって、

スポンサーさんもいっぱいつくわけで。(1画面じゃなく何枚もページがありました)


で、夢考房が紹介される時は「学生の自主性を尊重したプロジェクト」がいつも強調されますが、手羽が最も注目したのは

安全教育に力をいれていらっしゃること。
学生の自主性で勝手にやらせてるわけじゃなく、その前にちゃんと安全教育を実施されてるんです。
ムサビも共用工作センターの機材を使うには安全講習が必須だけど、ここまで徹底はされてなく・・。
上記は「こうやって事故が起きた」「工具が壊れた」てのを知らせるための張り紙。

これは「同じ大きさでも素材によって重さが全然変わる」を体験してもらうもの。
彫刻学科だとこの素材の重さ感を学ぶし、安全靴は必須なんですが、デザイン系の学生さんとか見てるとヒヤヒヤすることが多くて。「え。モノを運ぶのがわかってるのにスカートにサンダルですか?・・落としたらどうすんの?大学のせいにするの?!」と。私たちもつい甘く見ちゃうけど、ほんとはそんな学生さんに作品を作らせちゃいけないんでしょうね・・・。

学生スタッフのスキルが一覧でわかるようになってます。

この作業着がかっこいいかどうかは抜きにして、「安全教育」という意味ではほんとはこういう服装で作業をしなくちゃいけない。当日も作業してる学生さんが何人かいて、女性も含めて下の写真のような恰好をちゃんとされてました。
工業系も美大も工房は工場と同じで、危険な材料や機材を扱ってる意識をうちの学生さんももう少しもってもらえればなあ、と。

一度見たかった金沢工業大学さんと夢考房。
すごく勉強になりました。お忙しい中対応していただいたスタッフの皆さん、ありがとうございました!!



以上、頑張ってる自分へのご褒美に帰りの新幹線は

自腹でグランクラスに乗って、トークセッションに向かった手羽がお送りいたしました。
・・・ってそんなことを自慢しないような男になりたいもんですが。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。