【観光ついでに日本最北端の美大卒展へ!】秋田公立美術大学の初めての卒展に行ってきた!!! !

2017年2月23日(木)

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これまでの秋田シリーズはこちら。
【うどんの自販機で有名な】秋田市に行ってきた!
【あなたの凡人度は?】秋田公立美術大学に行ってきた!!
【Re MAP 地図にない道を行く】秋田公立美術大学の初めての卒展に行ってきた!!!


PARTNERの記事で、
観光ついでに日本最南端の卒展へ!沖縄県立芸術大学卒展開催中!
がUPされましたね。
秋田から沖縄までの卒展レポートを網羅してるのはこのPARTNERだけっ!

何度か書いてる話ですが、美術大学・美術学部は日本にいっぱいあるけど、「●●美術大学」という名称の大学は「今のところ」秋田公立美術大学、多摩美術大学、女子美術大学、横浜美術大学、そして武蔵野美術大学の5校しかありません。(来年度「嵯峨美術大学」が増えます) 
沖縄芸大さんが日本最南端の芸術大学なら、「美術大学」「単科芸術系大学」で一番最北端にあるのは秋田公立美術大学、略してアキビさんなのです!
・・・てか、今のところ最南端の「美術大学」はタマビになっちゃうけども。
 

・・えー、では本題に。


2月19日(日)、朝1で

民俗芸能伝承館、愛称「ねぶり流し館」でかんとうを見て、
 

赤れんが郷土館へ。
旧秋田銀行本店本館で国の重要文化財になってます。
 

銀行時代に営業室として使用された場所は、トラス工法によって広大な吹き抜け空間になってます。


赤れんが郷土館には新館が併設されていて、そこでは様々な企画展をやってる。
ちょうどこのタイミングでやってたのが、

秋田公立美術大学退任記念展「椅子と記憶と感動事典」
●会期:2017年1月21日(土)~4月16日(日)
●時間:9:30~16:30
●会場:秋田市立赤れんが郷土館 企画展示室


今年退任される五十嵐潤先生、松本研一先生、渡邉有一先生の記念展でした。

五十嵐先生は藝大大学院卒、松本先生はタマビ卒、そして渡邉先生がムサビの基礎デ卒。基礎デ・宮島先生の一期上ぐらいかな?渡邉先生は秋田美短前は東北芸工の教授もされてます。
 
東京から秋田の地に移り住み、秋田美短時代から4年制化に尽力された先生方と先輩だと思うと、なんか胸が熱くなりました。最近涙腺が弱いんです。


んで、テクテク歩いて、
 

昨日に引き続き秋田県立美術館へ。
 
午前中に

大谷有花先生によるギャラリーツアーがあるっていうんで、こちらに参加。

大谷先生はタマビ大学院油画を卒業されてて、アキビさん的には

この校章をデザインされた方です。
 

学生さん二人が進行役、大谷先生がフォローという形で進みます。


  • たまたまそこにいた作家本人に突然聞いてみたり。


  • たまたまそこにいた作家本人に突然聞いてみたり。

この銀色の巨大物体はとても不思議で、ひもがついてるわけじゃないのに作品の周りをずーーとフワフワとグルグル回ってるんです。レールがあるわけじゃないから作品から離れることもあるけどちゃんと戻るし、誰かが触ると逃げたりするし、必ずしも同じことをやってるわけじゃない。空体力学的な計算と様々なセンサーを連動させた高度なメディアアート・・・に見える。
ま、仕組み的には銀魂のエリザベスが近い。


午後1時からは、今回の手羽の中でのメインイベントと考えてた、

我らが中島信也さんと教員・学生によるクロストーク「社会の窓から『喜んでもらイズム』
京都に行くか秋田に行くか迷って、最終的に中島信也さんのトークがあるんでこっちを選んだと。
今回アキビ卒展では6つの企画があったけど、その3つに参加しました(笑)


信也さんとアキビのつながりは二つあって、ひとつめは東北新社の創業者・植村伴次郎さんが秋田県由利郡出身ということ。なので東京でスタートした会社だけど「東北新社(最初は東北社)」と名前がついたと。サンリオの社長が山梨県出身だから「山梨の王になる→山梨王→サンリオウ」と名付けたのと似てる(似てない)

二つ目は、最初見た時から手羽もずっと気になってた、

大学のプロフィール写真が「な、何者?!なぜ肩にインコ?!」感が強い水田圭先生と昔から知り合いで、水田先生からトーク出演の依頼があったそう。

「僕たちはクライアントや役者さん、そして消費者に喜んでもらうために頑張ってる」という話でした。
前日のトークで尾登先生がおっしゃってた「デザインは愛だから」、小牟禮先生が語っていた「僕たちは幸せを与えないといけない」という言葉ともつながるし、この気持ち、ほんと大事。
 
会場で「地方に美大は必要か?」という質問がでました。
前日も同じような話題になり、「地方でマイナーなものをひろい、対応・生産する必要性がある」「東京は常に変化しているが、変わり過ぎている。変わらない文化の良さを特別な目でくみ取る役割」「美大という異物を混入させて見えるものがある」などの意見が出てました。手羽はこれだけ1時間くらい聞いてたかった(笑)
 

でトークが終わったのが2時半で、急いで秋田駅へ行き、3時16分発の新幹線で東京へ。
これが今回の旅の一部始終です。


秋田駅といえば、秋田駅前の


秋田杉をふんだんに使ったバスロータリーは2014年にグッドデザイン金賞を受賞しています。
・・と知ってる風に書いてるけど、全然忘れてて帰りがけに「あれ。なんかこの景色以前見たことあるぞ・・なんだっけ・・」と思いながら新幹線に乗っちゃったので写真を取り損ねて・・。・


また、秋田駅の改修工事仮囲いに

景観デザイン専攻が作品を設置してたり、特に何も説明書きがなかったけど、

このベンチも、なんとなく「美大生が考えそうなデザイン」だから、たぶんアキビさんによるものと思われ。(プロがデザインしてたらすいません・・・)
やはり地域に根差した大学ですね。


まとめに入ります。

まず、正直に書くと。
手羽は福岡の田舎が嫌で嫌で上京した人間なもんで、東京への憧れが強いです。(福岡人はそれが強いから芸能人が多いと言われてる)
そんな東京かぶれ人間の発言として話半分で聞いてもらっていいんですが、「彫刻とか工芸を作るには向いてると思うけど、この何もない秋田でデザインを勉強したくないな・・」とは感じました。
タクシーの運ちゃんや地元の方との会話からアキビに対する愛情をヒシヒシと感じ、すごく羨ましい気持ちになったけど、公立大学だと地域に貢献しなくちゃいけないから、いい意味でも悪い意味でも「秋田縛り」がついてきちゃう。「秋田杉を使って」「牡鹿半島」とかね。もし「京都を活性化する」なんてテーマで活動したら「お前ら、うちらの税金で何やってんだっぺ?京都なんていいんだっぺ」と言われそう。昔なら「研究」であればそんなこと言われなかったはずだけど、今は「対価」を求められますからね。

一方、「地方の公立美大」の対義語である「東京の私立美大」は、悪く言えば地元の帰属意識が薄い、よく言えば地域縛りがないから、地元はもとより日本また世界の中から興味をもった地域を研究テーマにできるし、それを地元だけに還元する必要もない。日本・世界に還元できればいい。
なので「課題解決」のバリエーションや広さ、発展性を学びたいなら東京だし、深さを学びたいなら地方なのかな、と。

具体例を出すと。
厚生労働省が2016年12月5日に発表した「2015年人口動態統計」で、秋田県は出生率・自殺率・婚姻率・死亡率など7項目で全国ワーストになっています。しかも出生率は21年連続、婚姻率は16年連続の最下位。
自殺率、出生率…秋田県7項目で全国ワースト | 河北新報オンラインニュース
「犯罪率が高い」とかであればいろいろ理由も考えられますが、「自殺率・死亡率が高い」「出生率・婚姻率が低い」って、これは東京に住んでる人間にはわからない、何か根深い問題があるんだろうなあ・・と想像できます。
これをデザイン的思考で課題解決しようとしたら、東京の美大(や企業)では2週間ぐらいの現地調査ぐらいで「他人事」として考えるしかなく、やはり秋田の美大(や企業)で考えた方がより深いところへたどり着けるはず。

一方で、手羽が秋田と東京の違いとして気が付いたのが「秋田では2月に道路工事をやってない」です。昔問題になったはずなのに、東京ではいまだに2月になるとあちこちで道路工事が始まり、今手羽の通勤路では5か所で工事やってるのよ。信じられます?景気のためにはある程度仕方ないけど、そこまで集中しなくても、てかその場所、最近工事やってなかった?、と(笑)
でも秋田ではたまたまかもしれませんが、タクシー・バス・徒歩で通った道で工事がひとつもなかったの。東京では「予算消化のための2月道路工事」なのに、たぶん雪の関係で秋田では2月にそんなことはやらないんじゃないかしら。多分。「無駄な道路工事をやる予算がないから」「代わりに夏にいっぱいやってる」も可能性としてあるけど、東北の実態を調査すれば、東京や日本全国の「予算消化の2月道路工事の解決策」が見えるんじゃないか、と思ったり。

そうそう。
気が付いたといえば、お店の前で靴についた雪を皆さんマットで落としてから入店するんだけど、たぶん秋田とか雪文化の人にはそれぞれ固有の「決まった雪落としリズム」があるんじゃないでしょうか。多分。
前にいたおじさんが「トントっトトン」と「なんでそんなリズムで雪落とす必要ある?『トっト』のシンコペーションはいらなくね?」と思ったの。福岡出身の手羽には「靴の雪を習慣的に落とす文化」がないので、あまり考えたことがなかった。雪文化の人は自分のジンクスだったり親の姿を真似して、人それぞれに決まった「雪落としリズム」を持ってるんじゃないか。これも1000人サンプリング調査やったらなんか面白いものがみえそうだな、と。

脱線しちゃった。


学生さんにアドバイスするなら、卒展ではもう少し学生さん主体のトークを聞きたかったです。
「モデレータを先生にして、学生に聞く」という形が2回ぐらいあってもよかったのでは。今回は最初の卒展ってこともあって先生主体にしたのかな?
それと、3年生はぜひムサビやタマビの卒展を見に来てほしい。招待しますよ(交通費は出してね)
東京駅から2時間ぐらいかかる東京といいつつ田舎にある大学だけども絶対に参考になるはず。
その時間がなければ、今日から六本木で始まる五美大展視覚伝達デザイン学科のコンタクト展でもいいんだけど、今後アキビさんを展開させていくには「こういう規模でやってる大学もある」ってことを知った方がいいんじゃないかと思った次第です。

アキビさんのイベントは卒展で終わりでなく、まだまだ続きます。詳しくは大学のWEBサイトをご覧くださいませ。


以上、

毎日やってるなまはげショーを見たかった手羽がお送りいたしました。
それにしても、「なまはげ」ってブタゴリラに匹敵するすごいネーミング。
「なまはげ」って・・・「なま」の「はげ」って・・。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。