1月29日(日)午前11時、オサレな町・六本木のミッドタウンへ。
開場直前のスケートリンクはもう行列ができてた。
リンクロウの高校受験も無事に終わったし、ぼちぼち滑りたいなあ。
んで今日ミッドタウンにやってきたのはデザイン・ラウンジの仕事ではなく、こちら。
ミッドタウンホールで開催された21世紀鷹峯フォーラム 円卓会議メインシンポジウム「100年後の工芸のために」へ学長と一緒に出席してきたんです。
えーと、どこから説明したらいいんだろう・・。
まず、「鷹峯」とは何なのか?から。
俵屋宗達、尾形光琳とともに琳派の祖と言われる本阿弥光悦が京都の鷹峯に移り住んだことから、光悦を慕うつくり手や芸術家、町衆、豪商たちが集まり、それまでになかった使い手の視点を直接反映した新しい工芸が生まれるようになりました。鷹峯は日本最初の芸術村でもあるんです。
んで、100年後の工藝のために「つくり手」「つかい手」「つなぎ手」が結集して21世紀版の鷹峯を展開しましょ、と集まったのが鷹峯フォーラム。
2015年に第1回鷹峯フォーラムin京都が開催され、第2回となる2016年は場所を東京に移し「工芸を体感する100日間」をテーマに開催されてました。
オープニングセレモニーの様子はこちらをご覧ください。
■鷹峯フォーラムセレモニーと六本木アートナイトに行ってきた
もうあれから100日たったんだな・・・。
実行委員は女子美術大学美術館を中核として、美術館からは東京国立博物館、東京文化財研究所、東京国立近代美術館、東京都江戸東京博物館、東京都庭園美術館。教育機関は東京藝術大学、多摩美術大学、文化学園大学、武蔵野美術大学とその付属美術館がメンバーに入ってました。
また様々な機関がイベントなどに協力していただいてます。
んで最終日となる100日目の2017年1月29日に、各界リーダーズ&工芸有識者が日本の工芸の未来を考える(円じゃないけど)円卓会議が開催された、と。
工芸版「ダボス会議」がイメージだそう。
最初に宮田文化庁長官からの祝辞。
今週は宮田長官に2回会いました(笑)
第1部はみんなでこれからの工芸を考えるセクション。
ファシリテータは京都大学総合博物館の塩瀬隆之准教授。
塩瀬先生はインクルーシブデザインを研究され、現在は「伝わるとは何か?」というコミュニケーションの本質を探究されてる方。
■【仏像とデザイン】京都国立博物館と京都リサーチパークに行ってきた
去年見学させてもらった京都大学 デザインスクールの教員もされてます。
参加者が多い場ほど、手を挙げてくれなくなり、手を挙げる人は「声が大きく話が長い人」が多い傾向にあり・・。広く意見を聞きたいんだけど進行係からすると手が挙がらないと困るし手が挙がっても困るし、てな問題があるんで、一方的にしゃべるしかなかったりするんですね。
でも、塩瀬先生は完全にアクティブラーニングの手法を取られてて、すんごい勉強になりました。
手羽も授業で「スマホ使って相互コミュニケーション取りながら進行できないかなあ・・」といろいろ研究したんけど、すんごく複雑なシステムになっちゃうんですよ。
でも、塩瀬先生はA4の赤白の紙1枚使って意見を聞いていく。
「意見の見える化」が一目瞭然で、「これだけでこの大人数でもアクティブラーニングできるんだな」と、とっても勉強になりました。
今度真似させてもらいます(笑)
会場から意見をひろいながらどんどん進んでいくわけですが、塩瀬先生の引き出しの多さにもびっくり。
例えば、
科学を広めるための「サイエンスカフェ」があるが、「サイエンス」とついた段階でサイエンスが好きな人しか参加しないから、実は全く広まらない。
なんてのはそのまま美術にも当てはまります。
「美術振興」のために美術館で展覧会やワークショップを開催しても、美術館にはそもそも美術に興味をもってる親子か研究者しか来ないんですよね。全然関係ない場所で、美術を隠しつつ(笑)「美術は難しくないんだよー」「実はこれが美術なんだよー」とやらないと「振興」にはならない。
「工芸を広めるために普及版と完全版のふたつの展開はどうだろう?」という議論では、「安く買いやすい普及版が必要」という意見もあれば「よい工芸を啓蒙することが大事」という意見があります。
ここでも塩瀬先生は、
フレンチは「レシピ」を作ることで世界中に広げることができた。でも「無国籍フランス料理」なんてものも発生した。
サッカー選手のフィーゴはお寿司が大好きで、高級寿司店を経営してたぐらい。でもフィーゴが一番好きなネタはカリフォルニアロール。「それはスシじゃない」と言うかどうか。
なんて話をサラっと出してくるんですよね。
ファシリテータとして話を広げる係に徹してる。これがなかなか難しくすごいなーとそういうところに関心しながら参加してました。
伝統工芸品を使う人が減ってるから伝統工芸品を作る人も減り、その素材を作る人、道具を作る人も減ってる・・という悪い循環に入ってます。そしてその方が亡くなられた時に価値がわからずサクっと廃棄してしまうお孫さんも今は怖い存在。
よくみんなで考える時には「これは良いことかどうか?」と聞くと「良い」と多くの人は答えるけど、「じゃやるかやらないか?」と聞くと「やらない」と答える、いわゆる「総論賛成・各論反対」が起きやすいんですね。それでなかなか前に進まない会議が世の中にはゴマンとあり(笑)
なので、塩瀬先生は「問題点を発見させながら、『やった方がいい』で終わらせないで『じゃいつやればいい?」ぐらいまでどんどん決めていきましょ」というやり方を取られました。
工芸を広げるために「工芸週間」「工芸の日」を作ってはどうか?というのが会場で一番多かった意見(「伝統産業の日」はあって春分の日です)で、「じゃいつがいいのか?」という議論では「正月絡めた1週間」「休日がない6月」「文化の日周辺」などなど。
工芸の日もいいけど、文化の日周辺は美術の日がいいなあ(ぼそっ)
てなところで第1部は終了。
休憩時間はロビーでお茶を飲みながら懇親。
第2部は、「参加団体の成果共有」。
20団体ぐらいが「2分半」で発言していきます。タマビ建畠学長、ムサビ長澤学長の他は、
こちらは文化学園大学 和装文化研究所所長の近藤尚子教授。
毎日着物を召されてるそうです。
いろんな団体・機関から発表がありました。
東京の中核館で頑張っていただいた女子美さんの発表。本当にお疲れ様でした。
女子美術大学 馬場美術館館長が「東京提言」を発表され、
元文化庁長官で国立新美術館初代館長でもあるザ・クリエイション・オブ・ジャパンの林田代表理事の挨拶にて、第2回鷹峯フォーラムin東京は無事に終了。
手羽が最初の立ち上げ検討会に参加したのが2014年なんで、足掛け3年に渡ったプロジェクトもこれで一段落つきました。ほっ。
第1回は寺社仏閣など「つかい手」の多い京都、第2回は芸術系大学など「つなぎ手」の多い東京、そして次回の第3回は「作り手」が多い金沢で今秋開催されることが決定しています。
新幹線開通の話題もそうですが、2020年を目途に国立近代美術館の別棟・工芸館が兼六園そばに移転することが決定してるんで、金沢は今工芸として最もホットな場所。
てなわけで、石川県立美術館の嶋崎館長からご挨拶がありました。
あ、「in金沢」としてたら知事から「『石川』を入れろ」と言われたそうで、第3回は「21世紀鷹峯フォーラムin石川・金沢」が正式名称とのこと。
でもこれって「神奈川・横浜」と書くようなもんですよね。難しいなあ・・。
予定してた怒涛の「行ってきた」シリーズも終わり。
以上、書きたいのがもう二つあるんで、それが終わったらしばらく休みたい手羽がお送りいたしました。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。