【4年生必見】手羽の卒業制作15ヶ条その3

デザイン・ラウンジで秋田の中学2年生に授業をした手羽です。修学旅行ならぬ研修旅行で自分たちが研究してることを企業などに直接アポをとって訪問し調べる、という形らしく、今どきの中2は大変だなああ、と。

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卒展出品経験と教務課時代の卒展担当経験から、教育的効果・美術的評価ではない視点の
「卒展ではこういう部分を気を付けるといいよ」
「卒業制作で陥りやすい点」
を15ヶ条にしてまとめています。
ムサビ生向きな内容になってるけど、他美大の方、またこれから展示を考えてる人にも参考になると思います。


1~10まではこちら
手羽の卒業制作15ヶ条その1
手羽の卒業制作15ヶ条その2


11.質より量作品は想定の2倍作れ
数や大きさなどボリュームで見せる作品があって、手羽は「ボリュームもの」と呼んでます。
「よく、この量を作ったなあ・・」と手羽は結構好きなんだけど、今までの経験からして、初めてボリュームモノを作る人は「想定してる数・大きさの最低2倍は作らないとダメ」を心がけた方がいいです。
50分の1の模型空間で「ま、これくらいあればいいっしょ」と思ったものを実空間に持ってくると、「ま、いいっしょ」の塊が50倍になるわけで、密度がスッカスカなことが多いです。
ボリュームモノで「でも、この倍は数が欲しかったね・・」「コンセプト的に10倍は必要だったんじゃないの?」と言われたらおしまいなんですよね。
ボリュームモノは時間をうまく使うことが大事。計画的にやりましょ。

 

12.お客さんは大事。でも・・

これは去年のムサビ卒展で某学科の受付に置かれてた伝言メモです。

よく、「タマビの卒展では受付や監視やってる学生さんに挨拶されるけど、ムサビの卒展では挨拶されない」と言われます。
そう言われてみればそうかな、と。
手羽はムサビ卒展に慣れちゃってるからか、「念のために学生さんがスタンバッテいる」ぐらいの認識なので別に挨拶されなくても全然平気だけど、でも普通に考えれば教室入って「こんにちは」の一言ぐらいは言った方がいいかもね。そこにいることが「受付・監視」のためであれば、お客さんに声をかけるべきだし、ずっとノートPCやスマホをさわってる行為はありえないわけで。

 
ただ。
これは意見が分かれるところだと思いますが、「作品を説明させてもらっていいですか?」とお客さんにポートフォリオをもって近寄るのは手羽は苦手だったりします。

理由は二つあって、一つ目は「自分のペースで展覧会を見たい」。
自分なりの「作品を見るピッチ」ってありますよね。手羽はトントコ進んでいく派です。でも「説明させてもらっていいですか?」と来られちゃうと「いえ、結構です(びしっ)」と言えるわけがなく、「あ、はい・・」と聞くしかない。
それで「そんなコンセプトがこの中にあったのか!!すごいじゃん!!」と知らされることもあるんだけど、「よく考えてはりますね。ありがとうございました」と終わらせたいケースもチラホラ。興味をもったらこっちから聞くし、なければ素通りするし、それでよくね?と。

二つ目は「作品で勝負しろよ」と。
「研究」だと確かに見た目はわかりづらいし、「自分の作品をたくさんの人に理解してもらいたい」というその姿勢も否定しないんだけど、なに、あなたはずっと作品の前にいて説明するんですか?あなたも作品の一部なんですか?その説明パネルはなんなの?口頭で説明が必要な作品って作品としても説明パネルとしても失敗してるってことじゃないんですか?とどうしても思っちゃうんですよね。
ファイン系は同じように考えてる人が多いかも。キャプションに「無題」と書いたら怒る人がいるけど、「余計な情報を与えたくない」という気持ちもわかってほしいのですが。

最初に書いたように、これは人それぞれ。「普通の展覧会じゃなく卒業研究・制作展なんだから、自分の研究内容を説明して何が悪い」というのももっともで、なので「やらない方がいい」ではなく「手羽は苦手です」という表現にしてます。




13.先生や友達、後輩も大事。でも・・・。


  • 2013年度多摩美術大学卒業制作展より【撮影:手羽イチロウ】

彫刻学科の場合は自分一人で動かせる作品がほとんどないので、制作や搬入出では「ギブアンドテイク」が発生します。 「君のも手伝うから、僕のも手伝ってね」という暗黙の。これは卒展だけでなく、普段からこういう関係で制作してるので当然な世界なんです。 (工デのクラフト系も同じような感じかな?)
彫刻学科の学生が意外と時間に厳しいのは相手のため、というよりも自分のためでもあるんですね。

でも普段からそういう関係ができてないデザイン系の学生さんが卒制で大きな作品を作りたい場合はどうしたらいいか。 同級生はみんな同じようにせっぱつまってるので、「準備・撤収も含め人の確保をどうするか」という問題は早めにクリアにしておきましょう。 サークルの後輩とかね。そして「手伝いますよ」と言ってるムサビ生は多分時間通りには誰も来ないので、そのことも計算に入れときましょう(笑)

でもこれより手羽が伝えたいのは、「卒制中、特に締切直前は頭の中が混乱してて、平常時とは違う精神状態になるはず」ということ。
シリーズその1で「卒制で失敗した」と書きましたが、手羽の失敗は「友達や先生の意見を無視した」ことです。卒展直前にマジックで作品に文字をいっぱい書いちゃったんですよ。なんでか聞かれても困るんだけど(笑)
みんなから「それはやめたほうがいい」と言われたけど「何言ってるんだ、こいつら。オレのセンスがわからないのか」ぐらいにその時は思ったんですよね。でも卒制終わってあらためて作品を見つめ直すと、「あああ。言う通りにすればよかった(涙)」と気が付きました。普段だと絶対にやらないのに、あの時の自分はその判断ができなかった。
卒展直前は「通常の精神状態ではない」ことを理解しておきましょ。自分よりも客観的にみてる友達や先生の意見に耳を傾けましょう。恐らくその意見は正しいはずです。

ただ、人によって意見が違う時があります。耳を傾け過ぎるのも問題で、それでパニックった学生さんを何人か見てきました。やっぱり最後は自分で決断するしかなく、ここでいいたいことは「通常の精神状態じゃないことを知っておくこと」かな。



14.お金もやっぱり大事


  • 2013年度東京芸術大学卒業制作展より【撮影:手羽イチロウ】

いやらしい話ですが、最後はこれになっちゃうんですよね・・・。
その2で書いた「ベニヤ板」「透明ビニール」は安価だからであって、お金があれば迷わずコンパネやアクリルを誰もが使うわけで。
ちなみに手羽は小学校の頃から溜めてた「お年玉貯金」を卒制の材料費で全部使い切って(40万ぐらいだったかな?)、更に親に借金しました(卒業してすべて返済しましたよw)
同級生は鉄加工を外注したから150万円かかってたっけ。それなりの大きさの彫刻というか立体はね・・・お金かかるんです・・・。

また、全展示者分のプロジェクターや大画面モニタが学内にはないので、基本的に映像機器類は自分で用意する覚悟をしといた方がいいです。これは「あなたの作品はUSBメモリやDVDメディアですか?」で、人が見れる状態を作るまでが作者の役目、という考え方によります。彫刻学科や油絵学科の学生さんが「イメージは頭の中にあります」と言わないように。でも映像機器って1週間とかリースすると結構するんですよ・・。
ちなみに卒展でそこまでやる人はあんまりいないと思うけど、電子機器ってトラブルがつきものなので代替機はあった方がいいです。

それなりの製本・印刷をしようと思うと、やはりそれなりの金額がします。
学生さんが卒展で製本した作品をさりげなく置いてますが、みんなお金かけてやってるんです。やっぱりカラーコピーで出力したものと印刷したもの、クリアブックにとじたものと製本したものでは作品の見栄えが違うわけで・・・。


お金に関しては、こういう考え方もあります。

突然舞い込んだ展覧会とは違って、卒業制作は入学した時、つまり4年前に必ず通る道だとわかってること。
ひと月1万ずつ卒展貯金をしてれば30万ぐらいは確保できるはずだし、それが厳しいのであれば夏休み、春休み2回がっつり長期バイトをすればそれなりの金額をためることができるはず。
4年生を対象とした校友会の「校友会奨学生」、いわゆる卒展援助制度ってものもある。
ちなみに卒展援助受けた人は結果的に優秀賞を取ってることが多いです。 「10月にプレゼンできる状態にある」「お金を獲得してでも作りたい強い意志を持ってる」「アンテナを張り自分で情報を調べる」人は、そういう人だってことかもしれません。

卒展資金確保のためにコンペに応募するって手段だってある。
渡米資金のために欽ちゃんの仮装大賞に応募して、見事グランプリ100万円をゲットしたムサビ油絵OB・上杉裕世さんの例もありますしね。
鷹ノ台からハリウッドへ

つまり早めに「卒業制作」への意識が生まれてれば、せめて「こんな感じのもの作りたいなー。それっていくらするんだろ」とわかってれば、お金に関しては対策が取れなくはないってこと。逆に4年になって「卒業制作どうしよう」と考え出しても、取れる手段はかなり限られてきます。通常課題と違って卒業制作ですからね。あまり妥協はしたくないもの。

現在卒制真っ最中の学生さんにこれを言っても「おせーよ!」と言われそう・・。3年生以下の方へのメッセージってことで。
ムサビ生の春休みは長いです。長期間実家に帰って田舎の友達と遊びまわるのもいいけど、卒制でベニヤ板じゃなくコンパネを使いたくないですか?


15.どんな形であれ完成させる
これ大事。とっても大事。
卒展2日目でも作業してる人がチラホラいるのがムサビの卒展で・・・。
「間に合わなかった」のは問題外として、「悪い部分に気が付けば展覧会中だろうが関係なく追究するのが本当のアーティストだろうが!!妥協はしたくない!恥ずかしいものは見せたくない!」という考えはうっすらわからなくはないんだけど、今できる限りの完成形態を「期日」に見せるのが大事なわけで。納得してなくてもそれを発表しなくちゃいけないのが「今の自分の実力」であり、「自分の作品に対する責任」であり。
また、個展であれば知ったこっちゃないけど、合同展覧会の場合は「展示場で作業してる風景」ってのは周りに与える影響も大きい。少なくとも修正作業するのは会期時間外とか人のいない時にやってほしいなあ、と・・・。

よく「卒展講評まで残り何日!」と張り紙に書いて自分にはっぱかける人がいるけど、美大生は1日ぐらい計算間違っちゃうケースがよくあります。最後の1日が当日なのか前日なのか間違えたり、11月が31日まであると思ったりね。「・・・あれ。残り3日って書いてるけど2日じゃね?・・・(汗)」とか。手羽もよくやるんですよ・・・基本的に美大生は計算が苦手・・・。



 

・・・・・あれ、おかしいな・・・計算間違った。。。もう1ヶ条あるんだけど・・・すんごく大事なやつが・・。



しれっとまさかのありえない続くっ!!

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。