【4年生必見】手羽の卒業制作15ヶ条その2

行きたいところがいっぱいあるけど、やらなくちゃいけないこともたくさんある手羽です・・。

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卒展出品経験と教務課時代の卒展担当経験から、教育的効果・美術的評価ではない視点の
「卒展ではこういう部分を気を付けるといいよ」
「卒業制作で陥りやすい点」
を15ヶ条にしてまとめています。
ムサビ生向きな内容になってるけど、他美大の方、またこれから展示を考えてる人にも参考になると思います。


1~5はこちら
手羽の卒業制作15ヶ条その1



6.作者に見えなくても、お客さんに見えるものがある


  • 2014年度ムサビ卒展風景[撮影:手羽イチロウ]*写真はイメージです

美術の世界には「作品以外は評価してはいけない」という心優しい習慣があります。
例えばツッカエ棒が横っちょから見えてても、「ここまでが作品です」「この方向から見てください」と作者から言われたら、その部分しか「見えてない」ことにするし、見てないフリをしてあげるもんなんです。

とはいっても、ツッカエ棒はツッカエ棒だし、ガムテで張ってあるのが丸見えだったり、作品の前に工具や端材が置きっぱなしだったり、延長コードが作品の横にダラーンとぶら下がってたり、作品の前を延長コードがニュルニュルしてたら、気にならない方がおかしい(笑)
電気を使う作品が増えたせいか、延長コードの処理が適当なものが最近目立つかも。
多分作品本体に目がいってて、作者にはあのグルグルのコードが見えてないんじゃないかと。
せめて目立たない養生テープ(ガムテープではなく)でまっつぐピシッと床や壁に固定してくれてたらいいんだけど。

あとは私物かな。
展示場所が教室だから逃げ場がないことはわかってるんだけど、例えば作品の近くに世界堂の袋があると「ああ。世界堂で買ったのね・・・」と急に現実に戻される感じがあったり(笑)
配布物がある場合は、展示台の中に隠せる構造を作っておくといいですよ。

「作品以外は評価するな」かもしれないけど、その前に「作品に対する愛情はないのか」であり。


7.パッチワーク系は要注意


  • 2014年度ムサビ卒展風景[撮影:手羽イチロウ]*写真はイメージです

布に限らず板だったり、いろんな素材や色をくっつけたり貼りあわせる、いわゆる「パッチワーク系」「コラージュ系」があります。 「困った時はコラージュに逃げろ」という諺があって(今作りました)、簡単に手間がかかってるっぽく見え、なおかつにぎやかに見える。

ただ、よほどセンスがよくないと作者がイメージしてる以上に
「ツギハギ?」
「粗大ゴミ置き場から拾ってきただけでしょ?」
「捨てようと思ってた雑誌から切り抜いただけ?」
「やるなら徹底的にやればいいのに、空間スカスカやん」

と思われてしまう傾向にあります。
普段は「色は2色しか使わない」と理性で抑制・コントロールできてても、パッチワーク系ってついその人の本当の色や空間のセンスが丸裸になっちゃうんですよね。
手羽はパッチワーク系・コラージュ系がすごく苦手で・・・はい、全然センスがありません(涙)



8.吊りものも要注意


  • 2014年度ムサビ卒展風景[撮影:手羽イチロウ]*写真はイメージです

上から吊るす作品って多くの人にとって経験が少ない展示方法なので、机上の空論が一番出ちゃうもの。

なぜ吊るのか?
恐らく、「宙に浮いてるように見せたい」「中を歩くと大きな布がフワっとなってきれいだと思うから」てのを見せたいからだと思うんだけど、実際に作ってみたら「吊ってるものはやっぱり吊ってるようにしか見えない」「全然布が動かないor風の影響で布が常に横向きorフワっじゃなくバサバサっとはためく」になった作品をこれまでいくつ見てきたことか。

特に屋外で大きな布やビニールを吊るしてテンションを張る作品は、かなりシミュレーションしないと思った通りにはいきません。「空間のものに上下左右テンションを張る」ことがどんだけ大変なことか・・・。
左右はどこかに紐をくくりつければテンション張れないまでも固定はできる。ま、紐自体伸び縮みしちゃう素材なのであんまり信用しない方がいいんですが。
でも問題は下。
地面部分にアンカーを打てればいいんだけど、だいたいは床穴あけ禁止なので重しを使うことになります。その重しをどう処理するかがポイントになるんです。
恐らく思ってるよりも大きく多くの重しを使うことになるはずで、「フワっ」とした優しい軽い印象の作品を作りたかったのに足元に重しがゴロゴロしてて重たーい印象の作品になったり。
「吊ってテンション張る」作品は上下左右からテンション張れる「フレーム」のようなものを作り、テンション具合を微調整できる構造にしないと、多分作者のイメージ通りにいかないんじゃないかしら。

また「3.この時期の風の強さと寒さはハンパない」「4.大きさ・長さ・広さ・高さの『重さ』がある」とも関係しますが、普段は重さをあまり感じない布やビニールだけど、ある程度の大きさになるとハトメからビローンと延びてビリっといっちゃいます。布やビニールは意外と伸びるし、モロいんですよね。街の広告の大きな垂れ幕をよーく見ると、切れ目や穴が開いてるのに気が付くはず。あれは破れたんじゃなく風を逃がすためにあえて開けてあるんですね。
大量の吊りものだと脚立の上で手をずっと挙げた状態の作業になることも覚悟しときましょ。
 
 
 
9.意外と平面は平面じゃないし、垂直は垂直じゃない


  • 2014年度ムサビ卒展風景[撮影:手羽イチロウ]*写真はイメージです

これには2つ意味があります。

一つ目は、 「床はフラットではないし、微妙に膨らんでたりする」ということ。
屋外や階段は水がたまらないようにわざと微妙に傾斜が入ってたり、中央部分が盛り上がってたりします。
普段は全く気にならないんだけど、ある程度大きな作品を設置してみると、「ん?傾いてない?」「フラットじゃないなあ・・」と気が付くことがよく起きるんです。
なので早めに仮設置して様子をみて修正する時間も計算しといた方がいい。

同じようなことは平面作品でも起きます。
完璧な水平垂直を出して作品を壁に掛けても、壁面の形状・模様・色味・周辺のモノで「・・・画面が傾いて見えるね・・」なんてことはしょっちゅう。建物自体がゆがんでる可能性もないことはない(ムサビの場合は可能性大・・・)
「水平器を使って水平に設置しているんです。傾いて見えるだけです!」と言い張るのは意味が無く、傾いて見えるんだったら、それは間違いなく「傾いてる作品」。最後はなんだかんだ目で確認するしかなく、微調整できる素材や道具、構造も考えて置いた方がいいです。


2つめは、「平面と思ってる素材はそんなに平面じゃない」ってこと。
一番多いのは「スチレンボード」と「ベニヤ板」。
スチレンボードはある程度厚みがないと、すぐにそっちゃう。プレゼンボードを壁に貼り付けたら真ん中が浮いちゃってるケース、よくありますよね。
また、ベニヤ板は安いから芸祭とかで使うこと多いけど、卒展では使用しない方がいいです。ベコンベコンだから、きれいな平面は絶対に出せず、すごくチープな作品になっちゃう。広いしっかりした平面を作りたい場合はコンパネを使うしかないんです。

ビニール素材も同じことがいえます。
8で書いたとおり、テンションを全方向からビシっと出せればいいけど恐らくそれは無理で(強度的にも)、シワシワになっちゃう。広い透明な平面を出したい時、ガラスや透明アクリルの代わりに透明ビニールを使うケースがありますが、透明ビニールはガラスや透明アクリルの代用品には絶対になりません。
加工や扱いが簡単だけど要注意な素材で、使い方を間違えると安っぽく見えるのも布やビニールなのです。



10.ワークショップ系は想像力で広がるし、小さくなる


  • 2014年度ムサビ卒展風景[撮影:手羽イチロウ]*写真はイメージです

「ワークショップのアイデアは想像力が必要!」という意味ではありません。

最近ムサビの卒展では増えてきたワークショップ系作品。
みんなでワイワイ楽しんでるシーンは思い浮かべやすいけど、「それ以外のシーンをどれくらい想像できるか」がかなり鍵になります。多くは経験値によって学ぶものだけど。

例えば、みんなでペンキを使って壁に大きな絵を描くワークショップをやるとしましょう。
必要なものは・・・ペンキと筆。これは当たり前(笑)
ペンキを出しておくパレットも必要ですね。これは紙皿で代用可能。おっと水性ペンキなら水がなくちゃ。そして筆を洗う用の水と筆洗缶も必要。これらはバケツでいきましょ。あとは古新聞紙とか。

・・と、ここまでは誰もが想定できます。
でも「汚れ対策」「水の確保」が意外と抜けてることが多いです。

汚れ対策は「施設」と「人」のふたつがあります。
「壁に絵を描くんだから床は汚れない」と思ってたら大間違い。描いてる時に筆から落ちたり、紙皿パレットからこぼしちゃったり、ペンキをつけちゃいけない壁面にペンキがついちゃったり。そして床に落ちたペンキはふき取っても薄く広がるだけできれいに取れないんですよね(笑)
ただ、「施設」はしっかり養生すればかなりの部分はカバーはできます。
問題は「人についた汚れ」。
それを目的に来てて事前に「汚れてもいい恰好で」と告知されてればまだいいんだけど、だいたいはその場に通りかかった人。どんなに注意してても絶対に手や顔、髪にペンキはついちゃいます。「ペンキが付いたのはあなたの責任」で帰らせるわけにはいかないので、ウェットティッシュ・タオル・ウエス・除光液などなどいろんなものを準備しなくちゃいけない。「んなもん自然と落ちますよ」とは言いにくい。
洋服についたペンキをどうするのか、これも面倒な話。美大生は汚れを気にしないけど、普通の人は気になるんです。エプロンをつけさせるのか、ビニールがっぱを着せるのか。
足元の汚れもそう。「床にペンキは落ちるもの」なので、いつのまにか靴や靴裏にベットリついちゃう。靴裏についたペンキは気が付かないことが多く、養生していない部分にペンキの足跡がついてしまったり・・・。気が利くワークショップだと「靴用ビニールカバー100足入り」を準備してる場合もあるけど、実際にやってみるとわかりますが、これ、すぐに破れちゃうんですよね(笑)「そこまで気を回してますよ」のポーズとしては使えますが。

そして「水をどこで確保し、どこで処理すればいいのか」問題。
会場内に水場があればいいけど、なければ遠くからエッチラホッチラ運ぶことになります。そして水性ペンキで汚れた水をどこに捨てればいいのか。美大内だとあまり気にならない問題ですが、公共施設・商業施設だとこれがかなりやっかいな話で。

「そんなこと考え出したら何もできないやん!」と思っちゃうけど、それらを踏まえてワークショップのコンテンツは考えるものなので、「想像力があればあるほど、いろんな必要品が思いつく一方、幅は小さくなる」と。
ワークショップ系は画材費用もそうですが、それ以外の部分での出費を想定しておきましょう。場合によってはそっちの方ががかかるかもしれません。
 
 

続くっ!!

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。